田代さんは長年、様々な支援ツールの開発に携わってきたと思いますが、デジタルの進化によって今後社会はどのように変化していくと感じていますか?
田代:今、世の中にはスマートデバイスがすごい勢いで広がっていて、あれもこれも便利と言われているのですが、結局スマートフォンを上手く使えないと便利になりません。そのスマートフォンを誰でも使えるようにする事が大切なのですが、実はその解決の方法は既にいくつもあるのです。
アイフォンやアンドロイド・スマホの中にアクセシビリティ機能がすごくたくさん入っているのですが、あまり知られていません。スマホを頭の動きだけで使えること、そして声だけでも使えることなど、これらを知ることで助かる人は、世の中にたくさんいます。既にスマホのアクセシビリティ機能はとても充実しているのです。
また、今ではゲームにもアクセシビリティが求められるようになり、全国的にもeスポーツなどがどんどん普及しています。我々が企画しているイベントでも、障害のある人にeスポーツを体験してもらおうと思っています。ゲームは、「できた!」、「面白い!」というポジティブな気持ちを引き出しやすいです。
例えば、スマートフォンでマイナンバーカードを登録する操作方法を単に説明されてもワクワクしませんよね。でも、ゲームの操作方法は面白いから人が集まります。どちらも、アクセシビリティ機能にアプローチする方法としては同じです。「視覚や聴覚にどんな困りごとがあるか」、それを理解した上で「どうやって操作すればいいか」、それを知る事が重要です。何かを入力する、操作するという方法を考える上で、ゲームにはとても可能性があります。
そして、今後も徐々に障害の捉え方が変わっていくと感じています。加齢や病気で誰もがどこか不自由になります。重要なのは「何に困っているか」という視点で考えることであり、障害のある人も高齢の方もアプローチの仕方は同じだと思うのです。 困りごとに焦点を当てた捉え方をすると、どういう支援が必要なのか導き出しやすいと思います。「障害者」、「高齢者」という区分けではなく、何に困っているのか、それをどうやって解決・軽減していくのかが重要です。ICTアクセシビリティアドバイザーを通して知識や理解を地域全体に広げ、誰もがもっと生きやすい社会にしていきたいと考えています。