「魔法のプロジェクト」は、2009年にスタートしました。なぜ、このようなプロジェクトを立ち上げたのでしょうか。
佐藤:正確には、2009年に「魔法のプロジェクト」の前身となる「あきちゃんの魔法のポケットプロジェクト」がスタートしました。当時、デジカメや録音機などの機器を駆使して、学習における困りごとを自分なりに工夫しながら解決していた「あきちゃん」というお子さんがいました。
あきちゃんは、いつもポケットにたくさんの機器を詰め込んでいたのですが、ガラケーと呼ばれていた携帯電話がデジカメや録音機などの機能を代替できるのではないか、ということで、当時のソフトバンクモバイル株式会社(現:ソフトバンク株式会社)が、東京大学先端科学技術研究センターシニアリサーチフェローの中邑賢龍先生の研究グループと共同でプロジェクトを立ち上げました。
その後、2010年に日本で当時のソフトバンクモバイル株式会社(現:ソフトバンク株式会社)がiPadの独占販売を始めました。新しいデバイスを世に出すということで、SNSなどでiPadの情報を積極的に発信していました。すると、一般の方々から「障害のある方に役立つのではないか」という意見が寄せられるようになったのです。
そのような意見を受け、「あきちゃんの魔法のポケットプロジェクト」を「魔法のプロジェクト」として再スタート、CSR部門が担当することになりました。
2011年頃の学校におけるICTの活用状況は、年に数回、PCに慣れたり操作を学んだりする授業を実施する程度で、iPadを特別支援学校にて使っていただくには費用面のハードルがありました。われわれとしてはハンデをお持ちのお子さんを支援するために、まずはiPadの提供からはじめました。
魔法のプロジェクトの創生期から現在までを知る佐藤さん