タンパク質モータと微小管に学ぶ自然知からの応用
はじめにわたしたちは、タンパク質モータの機能を、物理学的視点から、最少要素を用いて試験管内で再構築、その解析を行う「in vitro 再構成実験系」と、一つのタンパク質モータ分子を捕捉して、その力学・酵素特性を計測する「単一分子計測手法」の発展に大きく寄与し、これらに構造解析手法を組み合わせることで、構造から機能まで幅広く解析を進めることに成功して、Nature誌をはじめとした国際一流誌に多数の成果を発表しています。また、これらの成果の重要性が認められ、2005年には第23回大阪科学賞を受賞しました。 さらに、タンパク質モータを機能素材として捉えて、センサーや超小型駆動装置などへの工学的応用を意識した領域融合的研究を進め、タンパク質モータ研究分野の新しい展開を試みており、分子通信という情報通信の新概念を提唱することで、世界的な新しい潮流を生み出すに至っています。 |
大岩 和弘(おおいわ かずひろ)
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生き物の動きの本体はタンパク質モータである。
タンパク質モータは基本として3種類あり、筋収縮の原動力であるミオシン、細胞内の物質輸送にかかわるキネシン、
そして鞭毛・繊毛の運動をつくり出すダイニンである。
わたしたちは30年以上にわたり鞭毛・繊毛の動きに着目し、そのメカニズムと機能解析に取り組み続けている。
研究は鞭毛の力学特性を直に計測する技術開発にはじまり、タンパク質自体を用いて物理学的に測定する実験システムを開発するに至った。
現在、自発的に様々な秩序構造をつくり出すタンパク質の集団行動原理を追究し、人工的に鞭毛をつくり出すことを目指している。
鞭毛で動く |
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◆タンパク質モータは優れた分子マシンであり熱揺動の中を高い効率で一方向に運動可能 |
ダイニンは医学的にも重要なタンパク質である。しかし巨大で脆弱な為、機能解明は停滞している◆ダイニンの機能不全は様々な疾病を引き起こす原発性線毛機能不全(Primary ciliary dyskinesia, PCD)繊毛病は1000人に1人が罹患する高頻度 ◆ダイニンの機能の理解は医学的に重要な課題鞭毛・繊毛に関する論文は2001年から約3倍に増加 | ||
タンパク質モータの動作原理の解明は分子マシン構築の新たな指針となる |
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2018.10.05 専用サイトをUPしました |