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誰も取り残さない社会の実現に不可欠な「ウェブアクセシビリティ」の基本を解説

1 世界の基準に合わせて改定されていくJIS規格

まずは「JIS X 8341-3」の概要について教えていただけますか。

太田良典さん(以下、太田):日本の産業製品に関する規格や測定法などが定められているJIS規格の中に、ウェブアクセシビリティについて制定された「JIS X 8341-3」という規格があります。この規格には、障害者や高齢者を含む全ての人が、端末やウェブブラウザ、支援技術に関係なくウェブコンテンツを利用できるように、ウェブコンテンツが確保すべきアクセシビリティの基準が規定されています。

「JIS X 8341」はJISの規格番号で、「高齢者・障害者等配慮設計指針―情報通信における機器,ソフトウェア及びサービス」について規定されたものです。その中でも「第3部:ウェブコンテンツ」が「JIS X 8341-3」と呼ばれており、ウェブアクセシビリティの品質を確保するためのガイドラインになっています。

「JIS X 8341」は、どのような経緯で作られてきたのでしょうか。

太田:Web関連の規格を作っているW3Cという団体が、1999年にウェブアクセシビリティのガイドライン「WCAG 1.0」の勧告を公開しました。このWCAG 1.0をベースに、2004年に日本で独自の内容をいくつか追加して規格を作りました。それがウェブアクセシビリティのJIS規格「JIS X 8341-3」です。たとえば、漢字の単語の文字間隔を広げるためにスペースを入れることを避ける、日本ならではの内容が追加されています。

WCAG 1.0は主に欧米の言語を想定したものでしたが、2008年に出たWCAG 2.0には国際協調という概念があり、日本の言語の事情も考慮したガイドラインに拡張されていました。そこで、そのWCAG 2.0を踏まえた形で、日本のJIS規格も2010年に1回目の改訂をしています。その後、2012年にWCAG 2.0は国際標準化機構(ISO)が認める国際規格になりました。国際規格に合わせていかないと、日本独自の規格はガラパゴス化してしまいます。そのためISO規格に合わせましょうということで、2回目の改定を行って作られたものが、現在公示されている2016年版のJIS規格「JIS X 8341-3:2016」です。

ウェブサイトやコンテンツが日々増えていく中で、2016年のJIS規格が現状と合っているのか気になるのですが、その点についてはどのようにお考えでしょうか?

太田:まさに今、そうした議論をしているところですね。2018年にWCAG 2.1が出て、 スマートフォンなどモバイルデバイスといったものに関する達成基準がいくつか追加されています。今はWCAG 2.2というバージョンが議論されているところで、これが今後の国際標準になると思われますし、日本にもその基準が取り入れられていくだろうと言われています。WCAG 2.2の内容がISO規格になれば、日本としてもJIS規格を揃えていくことになるでしょう。

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