世間には、私みたいなろう者がいて、聴こえる人もいます。数としてはろう者よりも聴こえる人のほうが多く、それが社会の中心になっています。でも、私としてはそれが当たり前になっているので、みんな同じ人間だと思っています。
バリアフリーについて質問されることがありますが、私は今まで「バリアフリー」という言葉を使ったことがありません。それは、私から見て壁があるとは思っていないからです。ろう者からバリアをつくったのではないと思います。ろう者と接したことがない方たちが私たちと接するときに、心に壁をつくってしまうのかもしれないですね。それは、コミュニケーション手段をどうしたらいいかわからないのではないかなと思います。私がみなさんとちがうことをあえて言えば、聴こえないことと、手話や筆談でコミュニケーションすることです。だからバリアフリーという考え方をしたことはなかったのです。バリアフリーとは、「壁をなくそう」ということなので、今まで壁をつくっていたの？ とこちらが思ってしまいます。
私たちの生活にとてもやさしくわかりやすい情報伝達手段をつくること、そしてそれを知ることはとても大切だと思います。今後は、周りの人、同じ日本にいる人たちと、情報を共存できるようになればいいなと願っています。
そのためには、これからどういうふうに工夫していけばいいのか、人にやさしい情報づくりについて私自身も考えていきたいですね。
1970年6月10日、北海道生まれ。1999年映画『アイ・ラヴ・ユー』で映画女優デビュー。日本アカデミー賞協会特別賞、第16回山路ふみ子福祉賞、第54回毎日映画コンクール「スポニチグランプリ新人賞」受賞、1999年度「全国映連賞」女優賞受賞。そのほか主演作品に『アイ・ラヴ・フレンズ』（2001）『アイ・ラヴ・ピース』（2002）などがある。主な著書に、『私が私らしくあるために』（大和出版）『愛、聞こえますか』（光文社）
※忍足さんのデビュー作の『アイ・ラヴ・ユー』（DVD発売中）
発売：こぶしプロダクション
販売：新日本映画社販売
http://www.espace-sarou.co.jp/
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原本作成日: 2008年1月10日; 更新日: 2019年8月19日;