スタートは昭和59年に導入した視覚障がい者のための誘導システムです。これは白杖に電子部品を入れ込むという、目の代わりの杖そのものに細工したものでした。その後、様々な検討を重ねて、小型送受信機を使った視覚障がい者の誘導システムの開発に至るのですが、その間も色々なことがありました。
10〜20年前までは、あまり一般に相手にされない事業で、自治体の福祉課でさえ提案をしても「予算がない」の一言で終わってしまうことも多かったです。「目の見えない人は来ないんだよね」「介護の人が付き添ってくるし」と、その必要性を役所ですら理解してもらえませんでした。しかし、それも何度も足を運び、少しずつ認知されるうちに、お互いの信頼関係が生まれることで今に至っています。それは技術力だけでない、製品への信頼や私たちの思いが伝わった結果であると思います。
昨今注目を少しずつ浴びるようになり、新規参入する会社も増えてはきましたが、システム導入というのは3年掛かりの事業です。設計から始まって、建物が建って、導入するまでに大体3年掛かります。しかも、それが途中で取りやめになることもあります。そのため、即効性のある利益を追求する多くの企業が早々に見切りをつけて辞めていく中で、私たちは、福祉事業というものを長い目でみて、地道な努力を重ねてきました。だからこそ、30年経った今も事業として続いているのだと自負しています。