当初ある程度のニーズを想定していた介護事業者への導入はあまり進んでいません。事業性があるかないかが導入の判断ポイントになるのですが、お金を払ってまで導入するべきかといえば、行方不明が懸念される認知症患者は施設単位で数えると、そこまで多くはありません。コストをかけるべき課題は他にもある中で、優先順位がやや下がってしまうようです。また、現場で働く職員の業務フローにも関わってくるので、やはり誰がどう責任をもって運用するのかクリアにならないと導入には至らないのかもしれません。一方で、個人で利用される方は、少しずつ増えてきています。
また、自治体やインフラ企業は積極的に導入を検討されています。自治体は、特に地方都市や中山間地域は高齢化率が高いこともあって、危機感が高い。人的リソースに限界があるため、ICTを活用して集落を存続させたいという共通意識があるようです。また、電力会社やガス会社は、電力ガス自由化の流れの中で差別化の付加サービスの一環で、加入時に提供するサービスとしてご検討いただいています。
あまたある医療介護の課題の中で、認知症患者の徘徊とそれにともなう見守りサービスは小さな課題かもしれません。ただ、見守りサービス以外にも、ICTを活用して解決できることはたくさんあると思っています。私たちはベンチャーですが、社員は介護事業者出身の者がほとんどです。介護にまつわる知見は豊富なので、課題解決にICTをどう活かせば高齢者の負を解消できるのか、両者を結びつけながらこれからもスピード感をもって開発に取り組んでいきたいと思います。