「階段あります。白杖貸出中」という案内が置かれている
そういえば、ここには病院や公共施設にあるような点字ブロックが無いですね。
三宅:点字ブロックや手すりがあると、どうしても「視覚障害者のための場所」と思われ、晴眼者に関心を持ってもらえないおそれがありますが、それでは「誰でも気軽に訪れ、思い思いの過ごし方をできる空間」というコンセプトが実現できない。そこで、ブロックや手すりは設置せず、反対に階段やスロープを作り、あえて“非バリアフリー“な空間としました。
もちろん設計に当たっては、視覚障害当事者と相談し、階段やスロープの安全な高さや数、角度を何度も検証しました。オープン以来、つまづきや軽度な転倒はあっても利用者、スタッフが共に段差やバリアについて考えを深めていくように意識が変わりつつあります。
たしかに先ほどから見ていても、つまづいたりする人はいませんね!
三宅:階段やスロープには白杖を試してもらう狙いもあります。目が見えにくい、見えない人でも白杖を使わずに暮らす人は少なくない。視覚障害の象徴のように、ネガティブに捉えられているからです。ビジョンパークが杖を試すきっかけになったらいいと考えています。
「視覚障害者と晴眼者の区別なく読みたくなる」本を
ブックディレクターが選び、各エリアに置いている
視覚障害に関係のある人のほかには、どんな人が訪れますか?
別府:ウィークデイの昼間には近所で働く人が来ますし、週末や長期休暇の期間にはたくさんの子どもたちが遊びに来て、本を読んだりクライミングに挑戦しています。クライミングに挑戦している人がいると、子どもたちはインストラクターの真似をして「次は最初のホールドと同じ形を掴むんだよ!」なんて、楽しそうに言っています(笑)。ここは、視覚障害のある人との接し方を自然に学べる場所なんです。
三宅:見えにくい人、見えない人、そして見える人。ビジョンパークでは誰にも成長や気付きがあります。「明るく自然体に振る舞う視覚障害の当事者に会って元気をもらった」と言ってくださる人も多い。
視覚に障害があると、どうしても外出に対して消極的になってしまいます。無理のないことですが、そんな人にこそ、ぜひビジョンパークに来ていただきたいですね。スタッフ一同、お待ちしています!