「自立支援介護プラットフォーム」の事業化に向けて実証を重ねる中で、どのような課題を解決につなげられましたか?
山岡:ポラリスには、高齢者の介護プログラムの事例が膨大に蓄積されています。体力測定の結果を受けて、どのようなトレーニングをして、その結果として身体機能がどのように改善されたのかをデータにしています。そのデータをもとに、アセスメントを入力するだけで、運動プランの提案ができるようにしています。ちなみに、「自立支援介護プラットフォーム」の目指す姿は、普通に生活しているだけで、3カ月後に歩行できるためのトレーニングプランが自動で作成され、IoTで実施ができているかどうかモニタリングするというものです。
もしすべて自動化されるとしたら、介護における人間の介在価値はどこに見出せばいいでしょうか?
佐伯氏:自立支援介護では、ご本人のモチベーションが結果を大きく左右します。最初は半信半疑で弊社のプログラムを試していたところが、みるみる元気になっていくことで、自信もモチベーションも上がって、プログラム開始前はやりたいと思わなかったことを「やりたい!」と挑戦してみたくなって、更にお元気になる方が多くいらっしゃいます。ここが非常に重要なポイントです。プログラム・マシンさえあれば良いわけではないのです。刻々と変わり得るご本人やご家族のご生活の状況や思いを、リアルタイムに深く理解・洞察して、その方々にとって適切なタイミング・表現で、適切なコーチングを身近な介護の専門家が行えるかどうかは、改善結果に大きな影響を及ぼすのです。きめ細やかな共感能力、コミュニケーション能力が最も必要な領域です。この部分は、介護の専門家の介在価値を最も発揮できる領域、発揮すべき領域だと私は考えています。
テクノロジーで自動化できるところは速やかに移行して、その分創出された介護スタッフの余力は、本来、人がやった方が良いこと、人でしかできないことにフォーカスさせたい。そうすることで、自立支援プログラムは、今の何倍も、ご本人・ご家族にご満足いただけるもの、スタッフが誇りに思えるものになると確信しています。
東大学生時代から医療機関内で医療職・教授・院生で構成する研究チームを発足、組織横断的な質改善を牽引し論文投稿。
博士号取得後も、医療・介護現場の実践・研究開発に従事する佐伯みか氏