まずは、「GoodBrain シニア」の概要から教えていただけますか?
藤井直敬氏(以下、藤井):「GoodBrain シニア」はVRゴーグルと360度映像を使い、VR旅行をテーマに体験者がまるで現地を旅行しているかのような体感を得ることができるVRレクリエーションです。旅の記憶の想起や会話のきっかけづくり、運動を促進することを目的とするサービスになります。
VR旅行によって、高齢者にどのような好影響があるのでしょうか。
藤井:旅の記憶の想起に関して言えば、普段思い出すことのない記憶が蘇ることで脳が活性化することが考えられます。たとえば、こんなエピソードがあります。イタリアにある世界遺産「ピサの斜塔」のVRを高齢女性に見せたところ、かつて現地を訪れたことがあるという話をはじめたそうです。その内容がピサの斜塔についてではなく、「近くにショッピングモールがあって、そこで夫と雨宿りしたのよ」という思い出を話しながら涙を流したとのこと。
それは、VRならではの没入感があってのことでしょうか。
藤井:そう思います。VR映像を鑑賞するという体験を通して記憶を辿ることで、エモーショナルな刺激につながることが分かります。思い出がなければただの風景ですが、そこに思い出が介在することで、普段思い起こすことがなかった記憶が蘇るのだろうと思います。
実写映像や写真と、VRとの違いはどのような点にあるのでしょうか。
藤井:VRは映像と身体運動がセットになっていることで、主体的に映像を見ることができる点が、それらとの違いだと思います。たとえば、通常のビデオスクリーンで町並みの実写映像を見たとしても、自分は身体を動かさないので、脳内に地図が描けないんです。かたやVRは自分の動きと連動するかたちで映像を見るため、脳内に地図を描くことができます。そうすると見たものが記憶として蓄積しやすくなります。そこが、通常の映像や写真と違うところですね。
VR旅行を体験している高齢者の様子