ADEは、どういう経緯で認定されたのでしょうか?
内田:ADEを知ったのは、他県の先進的な教育の取り組みを視察したときのことです。学校見学に伺った際に案内してくれた先生がADEの認定を受けており、「挑戦してみない?」と声を掛けてもらいました。ADEはAppleのサイトから応募できるので、これまでiPadを使った授業の動画やICTの普及に関するアイデアをまとめて応募しました。それからしばらくしてADEに選ばれたという通知をいただきました。ADEに選ばれるとAppleが主催する研修会に参加することができます。私が最初に参加したのは、シンガポールでの研修会でした。4〜5日間に掛けて開催されるのですが、朝から夕方まで学校種や国などを超えて世界中の様々な教育関係者とともに学ぶプログラムが準備されていて、同時通訳のヘッドセットをして参加しました。
ADEに参加するようになって、意識が変わった点はありますか?
内田:Appleの開発者や各国の研究者と直接会って意見交換できるため視野が広がりました。たとえば、Swift(スウィフト)というプログラミング言語があるのですが、私がベルリンの研修会で子どもたちがスイッチを使って操作している事例を発表したことを受けて、Swiftの開発者が「アプリにスイッチコントロールを付けてみた」と声を掛けてくれました。そのスピード感にも驚きましたが、自分が発表したことにも影響力があるということを実感できて嬉しかったです。
また、私自身が以前から取り組んでいた障害の重たい子どもの、見た目には分かりにくい反応を、心拍変動からも見ようという取り組みがありました。その取り組みに活用できるアプリの開発をアメリカのADEで、心臓の動きをAR(拡張現実)で可視化する研究をしていた大学教授が、その学生らとともに開発してくれました。どういったアプリかというと、本人の様子を含む授業中の様子を心拍変動とともにiPadで録画できるものです。これにより教員のチームで後から振り返って、この関わりには子どもにいい反応があったとか、評価したり授業改善したりすることができます。私はさっそく授業でそのアプリを活用してみました。子どもたち成長発達を促すためには働きかけなども含む環境の調整が重要です。教員たちは心拍数の変化を見ながら、声を掛けるタイミングを工夫するようになりました。
たとえば、余計な刺激を与えないように、必ず予告してから関わったり、手を握りながら話したりします。このように、心拍数という客観的なデータに基づいて働きかけたことで、それまで無反応だった表情に変化が生じ、笑顔が見られるようになった子どももいます。このように、ADEに参加しなければ得られなかった気づきを教育現場に反映できたことは、自分自身にとって、大きな意識変化につながったと思います。