ICTはコミュニケーションを実現させるために、あくまでも補助的な役割を担うことが望ましいと。
内田:そう思います。先ほどの事例のように、「絵を描くのが嫌だった」という子どもがICT端末を使ったことで、「これならなんとか自分の思うように描くことができた」と感じて、これまで難しかった絵を描く、その先の部分、たとえば4コマ漫画のストーリー展開を考えるといったことが可能になりました。描くことが苦手なままだったら、漫画のストーリーを考えるところまで辿り着けません。
もちろん4コマ漫画を見て、受け身で楽しむのもいいと思います。しかし、自分でも表現できるようになると、作品を人に見てもらったり、作品について話しかけてもらったりする機会が生まれます。つまり、いろいろなものを創作することは、コミュニケーションの幅を広げることにもつながります。ただ、肢体不自由の子どもはコミュニケーションの範囲が狭いことも課題として挙げられます。個性を伸ばすとか、表現力が豊かになるという意味において、道具として使いやすいICT端末は彼らの可能性を広げる後押しになると思います。
生徒たちがiPadのアプリで描いた4コマまんがを展示
今後、授業に取り入れていきたいテクノロジーはありますか?
内田:最近参加したADEの研修会でAR(拡張現実)を学んだので、取り入れていけたらと思っています。ARの技術は建物のシミュレーション等に用いられることが多いようですが、美術にも応用できます。ただ、現状は技術自体が発展途上のため、動画が滑らかに動かなかったり、思い描いていた通りのものが再現できなかったりと改善の余地があります。もし、もっと想いが形にしやすいARアプリを美術の授業に組み込むことができたら、これまで子どもたちが意識していなかった空間に意識を向ける学習にもつながるのではないかと思います。それにより、物の見方や考え方を広げることになるはずです。