「emou」は学校での利用が多いのでしょうか。また、どのようなコンテンツのニーズが多いですか。
青木:発達障害に関わる放課後等デイサービスや、働くための訓練をする就労支援施設などで導入が進んでいます。これらの施設は法人が運営しているので、サービスの提供先は企業となります。もちろん学校や医療機関にも導入されています。
コンテンツのニーズについては、本当にさまざまなので、現場の方にヒアリングしながら制作しています。声として多いのは、学校であればSNSでのコミュニケーションが上手くいかない問題や、危険に遭わないための対応方法について、VRでリアルな場面を学べないかというものです。また、就労支援施設であれば、職業体験についてのニーズが多いです。職場の様子をロールプレイングで再現するのは難しいのですが、これから就職をする人にとって非常にニーズがあるので、順次開発しています。
言語化の難しいソーシャルスキルをシーンごとに体験できる
VRだからこその臨場感が、リアルな世界での危険回避や、円滑に仕事をすることに役立つのでしょうか。
青木:そうですね。たとえば、警察官が体育館に来て、変質者に遭ったときにどう対処したらいいかロールプレイングで指導することがあります。しかし、発達障害の子は、ロールプレイングの内容は理解できたとしても、自分だったらどうするかを考えるのが難しいわけです。そのため、想像するよりもリアルに体感できるVRで訓練することが大切だと考えています。
ロールプレイングも動画も「視聴」であって「体験」ではありません。視聴の先には、想像して自分のことに置き換えるフローが必要ですが、VRだと体験になるので想像を補い、自分のこととして理解しやすいと言えます。また、面接など緊張する場面も画面だけだと、あまり緊張感を持てませんが、VR空間の中に人がいて、実際に話しかけられ、自分も答えるパートがあることで、緊張感を持った中で練習ができます。