「emou」を活用してから、こんな変化があったというような効果や反響はありますか。
青木:効果については、まだ定性的なデータしかありません。というのも、ソーシャルスキルの向上を定量的にデータ化することは難しいからです。そのため、体験したことが、他者から見て、実際の場面でも出来ているかどうかが評価方法にはなります。現状は、親御さんや身近な支援者などから評価をもらっているかたちではありますが、「出来なかったことが出来るようになった」という声は多く寄せられています。
「emou」の普及で、発達障害の方々の生活をどのように変えたいとお考えでしょうか。
青木:障害を考えるうえで大事なのは、当人が困っているか、生活に支障があるかという視点です。たとえば、目が悪くてもコンタクトレンズを装着して視力が上がれば、視覚障害にはならないわけですよね。では、発達障害当事者の困りごとは何かというと、多くの場合が周囲と軋轢が生まれやすいということです。そのため、そうした困りごとを減らすために、「emou」のソーシャルトレーニングを活用してもらいたいと思っています。
いま、発達障害の方を支援し、トレーニングする施設は増えてきていますが、地域格差もあります。最適な支援を実現できている施設もあれば、預かるだけの施設もあります。「emou」によって、このような格差を失くして行きたいなと思っています。リモート機能を充実させることができれば、近くに施設がなくても、自宅にいながらVRで良質なソーシャルスキルトレーニングが受けられると思います。まだまだVRと聞くと、やはりゲームのイメージが強い方も多いですが、VRを使ったソーシャルスキルトレーニングのかたちを認知・普及していきたいです。