三宅さんは、iPadが発売されて間もない2011年頃から、眼科での診療に際して、患者にiPadの使い方を説明するなど、ICT端末の普及に取り組まれていたとのこと。iPadの可能性に気づいたきっかけは何だったのでしょうか?
三宅:iPadを自分で操作したときに、これは一般に広く浸透するICT端末だと感じたことがきっかけでした。たとえば、パソコンで絵を描こうと思うと、専用のソフトが必要だったり、操作の知識がある程度なければいけなかったりと、一般の人でもハードルがありますよね。でも、iPadで絵を描くとしたら、指またはタッチペンだけで可能になりますし、無料で使えるアプリも充実しています。それまで、アプリやソフトウェアは専門職の人が使うものという認識でしたが、iPadの登場でその概念が大きく変わり、テクノロジーが一般の人に、ぐんと近づいたと思いました。
実際に患者の方々の反応はいかがでしたか?
三宅:たとえば、拡大鏡のアプリを使ってもらったところ、すごくよく見えると評判でした。視覚障害者向けの拡大鏡は高額ですが、iPadのアプリなら無料もしくは安価で手に入ります。また、iPadは多くのアクセシビリティ機能(※)が備えられており、視覚だけではなく、聴覚や身体機能をサポートできるよう、操作方法などをカスタマイズできます。こうした機能にも大きな可能性を感じました。
(※)IT分野での「アクセシビリティ」とは、機器やソフトウェア、システム、情報などが身体の状態や能力の違いによらず、同じように利用できる状態。
その可能性を信じて、iPadを広める活動をはじめられたと。
三宅:そうですね。iPadを使うことで、さまざまな困難が解消されるという情報を多くの人に伝えたいと思いましたし、それによって助かる人はかなりの数いるだろうと確信しました。iOS端末のアクセシビリティについても、発売当時はあまり注目されていなかったので、自分が第一人者として広めることは意義があると思い、スタジオギフトハンズを立ち上げることにしました。
拡大鏡アプリは文字が読みにくい困難を抱える人に好評とのこと