私たちの研究室では、動物の行動が起こる仕組みを、分子(遺伝子)・細胞(脳)・個体のレ ベルで解明していくことを目指しています。
野生のキイロショウジョウバエの多くは、人家の中で暮らしているペットのような存在である。“野生”なのに。ぬくぬくと暖かい人家の中にいる彼らは、寒い季節もへっちゃら。でも、戸外に暮らす昆虫たちは、多くが冬季には休眠に入り、厳しい環境の中を生き抜いている。キイロショウジョウバエだって、その昔にはきっと休眠していたはずだ。事実、カナダの研究グループは寒い彼の地の野外集団から、休眠性のキイロショウジョウバエを見つけ出した46)。Windsorというこの系統は、温度や日長条件を感知して休眠する。ただし、“寝たきり”になるのではなく、雌の卵巣の発育が停止する卵巣休眠である。はたして生殖幹細胞とニッチは、外界の変化を鋭く感知して適応的にその挙動を切り替えるのであろうか。生物と環境との相互作用、その理解に向けて我々はこの卵巣休眠の機構解明にも取り組んでいる。
ということで、山元研は性行動を中心に据えつつも、全方位的かつ全階層的生物研究に明け暮れている47)。一見まるで違った方向を向いているようで、実は全てが生物の本質へと向かう研究である(と本人は自負している)。マクロだけでもなく、ミクロだけでもない、マクロでミクロのヤマモト系研究は、果てなく続く。
Natural
variation in Drosophila melanogaster
diapause due to the insulin-regulated PI3-kinase.
Proc. Natl. Acad.
Sci. U.S.A. 103, 15991-15995.
遺伝子と性行動.性差の生物学.
裳華房:東京,202pp.
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