地球温暖化は、「危険な暑さ」という言葉が夏の天気予報では当たり前になるほど、私たちの生活に直接影響する問題です。
二酸化炭素(CO2)の排出量を排出源ごとに特定することで、より具体的なCO2削減対策が可能となります。我々の研究室では、その鍵となる炭素同位体比に注目し、衛星リモートセンシングによるCO2炭素同位体比観測に挑戦しています。
地球温暖化は、「危険な暑さ」という言葉が夏の天気予報では当たり前になるほど、私たちの生活に直接影響する問題です。
二酸化炭素(CO2)の排出量を排出源ごとに特定することで、より具体的なCO2削減対策が可能となります。我々の研究室では、その鍵となる炭素同位体比に注目し、衛星リモートセンシングによるCO2炭素同位体比観測に挑戦しています。
近年、地球規模で温暖化が進行しています。2019年の日本のSDGs達成評価では、目標13「気候変動に具体的な対策を」は最大の課題と位置付けられています。日本として、この問題に真剣に取り組まなければなりません。
温暖化対策を打ち出すには、人間活動によってどこからどれだけの二酸化炭素 (CO2)を排出しているのかを正確に把握しなければなりません。大気中のCO2濃度は、陸域や海洋、人間活動等の様々な排出源と吸収源による収支バランスで決定されます。CO2の大気中の寿命は長いため、複数の排出源から排出されたCO2は 大気中で混ざり合います。効果的なCO2削減策のためには、その起源を特定する必要があります。
私たちは、CO2の炭素同位体比(δ13Cco2)に注目しています。δ13Cco2は、排出源や吸収源によるCO2の収支を定量化できる強力な指標です。δ13Cco2は次の式で定義され、基準値にはベレムナイト炭素安定同位体比(0.0112)が一般に用いられます。
現在の大気中のδ13Cco2の代表値は約-8‰ (パーミル*)とされています。これは 陸域生物圏からの排出(-25.7‰)と吸収(-26.0‰)、海洋からの排出(-9.5‰)と吸収(-10.0‰)、化石燃料燃焼による排出(-28.0‰)等のバランスで決定されます。[Shoemaker et al., 2010]
δ13Cco2の議論には、少なくとも1‰オーダーの精度が要求されます。これまでは 質量分析計による地上観測や航空機観測が主流でした。しかし、観測エリアや観測頻度が制限されること、測器間のバイアスの影響が無視できないことから、十分な精度があるとは言えませんでした。
そこで私たちは、環境省温室効果ガス観測技術衛星GOSATシリーズのデータに注目しています。初号機GOSAT-1は、高度約666kmの地球周回軌道から、1日に約 16,000地点で12CO2と13CO2の両方を観測しています。この豊富な観測点を活かし、δ13Cco2のグローバルな振る舞いを明らかにしていきたいと考えています。
※パーミル(千分率)1‰ = 0.1%
「いぶき」(GOSAT : ゴーサット、Greenhouse gases Observing SATellite) は、環境省、国立環境研究所(NIES)、宇宙航空研究開発機構(JAXA)が共同開発した、温室効果ガス観測技術衛星です。
地球温暖化をもたらす二酸化炭素CO2やメタンガスCH4などの温室効果ガスの濃度分布を宇宙から観測するもので、2009年1月23日、種子島宇宙センターからH-IIAロケット15号機で打ち上げられました。
「いぶき」にはセンサーが2つありますが、どちらも温室効果ガスの測定のため だけに設けられたもので、その意味では完全に単一の目的のために打ち上げられた衛星です。温室効果ガスの濃度は地上でも観測されていますが、観測地点の数はわずか348箇所(2013年1月現在)でした。
「いぶき」は地球表面のほぼ全域にわたって、等間隔で温室効果ガスの濃度分布 を3日に1回測定することができます。それによって観測地点は飛躍的に増加し、地球温暖化を議論する基礎となるデータの質が向上しました。
データは各国の政府機関や科学者のみならず、登録すれば誰でも利用することが 可能です。
※JAXAサイトから一部引用 https://www.jaxa.jp/projects/sat/gosat/
「いぶき」の観測が高い成果をあげたことから、後継機が計画され、「いぶき2」(GOSAT-2)が2018年10月29日に無事に打ち上げられました。いっぽう「いぶき」は当初計画された5年間の定常観測期間を過ぎた現在も、冷凍機の故障などのトラブルを乗り越え、順調に観測を行っています。従来の人工衛星は故障が起きないようにする設計であったのに対し、「いぶき」は重要部品を二重化するなど「故障しても平気な」設計になっているのです。
「いぶき」からは現在も、主要な温室効果ガスである二酸化炭素(CO2)やメタン(CH4)のカラム平均濃度*の全球の晴天域における観測データが日々送信され、蓄積されています。私たち情報通信研究機構テラヘルツ研究室では、この「いぶき」から届くデータの解析を行っています。
※国立環境研究所(NIES)のGOSATリーフレット (2019年6月)より一部引用
※カラム平均濃度:地表面から大気上端までの鉛直の柱(カラム)の中にある
乾燥空気全量に対する対象気体量の比率を示す平均濃度のこと