GOSAT-GW: Global Observing SATellite for Greenhouse gases and Water cycle GOSAT-GW: Global Observing SATellite for Greenhouse gases and Water cycle

GOSAT-GWは、温室効果ガスを観測する一連の衛星であるGOSATシリーズの3番目の衛星であり、2024年度に打ち上げ予定です。GOSAT-GWでは、二酸化炭素(CO2)やメタンなどの温室効果ガスと大気汚染物質である二酸化窒素(NO2)の同時観測に新たに挑戦しています。
我々は、情報通信研究機構では、このNO2濃度を高精度かつ高速に導出するためのアルゴリズム開発を行っています。

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GOSAT-GWミッション

温室効果ガス・水循環観測技術衛星(Global Observing SATellite for Greenhouse gases and Water cycle, GOSAT-GW)は、温室効果ガス観測技術衛星ミッションと水循環変動観測ミッションを担う地球観測衛星です。各ミッションを遂行するため、温室効果ガス観測センサ3型(TANSO-3)と高性能マイクロ波放射計(AMSR3)の2つのセンサを搭載しています。

温室効果ガス観測技術衛星ミッションは、宇宙基本計画に則り、環境省と国立環境研究所(NIES)、宇宙航空研究開発機構(JAXA)が共同で実施しています。NICTは、NIESと海洋研究開発機構(JAMSTEC)と3者間で共同研究契約を締結し、TANSO-3によるNO2観測研究を実施しています。

なぜNO2を測る?

大気中に放出されたCO2は、地球の気温を上げる効果があります。CO2は、発電所や工場など、人間の経済活動を支える場所から多く排出されます。気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の第6次評価報告書では、人間活動の影響が大気、海洋及び陸域を温暖化させてきたことは疑う余地がない、と報告されています。地球環境を守りながら経済活動を維持していくためには、まずはどこからどれだけのCO2を含む温室効果ガスが排出されているのかを把握しなければいけません。

ここで問題となるのが、CO2の大気中の寿命(どれだけの時間消えずに大気中に存在するか)です。CO2の寿命は数年から数十年以上と非常に長いため、一度放出されたCO2は気流に乗って移動します。したがって、大気中のCO2濃度を測定しても、どこからどれだけCO2が排出されたのかを特定することが難しいという課題があります。

そこで注目された物質がNO2です。NO2は、発電所や工場などからCO2と同時に排出され、その大気中の寿命は数時間から数日と短いです。このため、CO2排出源付近の大気中のNO2濃度を測定することで、その場所のCO2排出量を精度良く推定することが可能となります。このNO2の観測は、GOSATシリーズの中ではTANSO-3が初めて挑戦します。

点ではなく面で測る

NO2の観測と合わせ、GOSATシリーズの中で、GOSAT-GWの初めての挑戦が、回折格子型分光器の採用です。

GOSATシリーズでは、2009年にGOSAT衛星、2018年にGOSAT-2衛星の打上げに成功してきましたが、これらに搭載されたセンサにはフーリエ変換型分光器が採用されていました。この分光器は、波長分解能が高いという利点があるものの、図1のように、一つひとつの観測点は隣り合わず、スポット(点)として観測します。一方、回折格子型分光器を採用したGOSAT-GWでは、図2のように面として観測します。これにより、例えば工場の煙突から排出されるNO2のプルーム(煙の流れ)の大きさや形状を捉えることができます。これは排出量推定を行う上で大きなアドバンテージとなります。

図1 : GOSAT、GOSAT-2の「点」的観測
図1 : GOSAT、GOSAT-2の「点」的観測
図2:GOSAT-GWの「面」的観測
図2:GOSAT-GWの「面」的観測

正確に、そして速く

面で観測するということは、観測点数が従来方式に比べて増えることになります。GOSAT-GWの場合は、実に100倍以上も観測点数が増えると見込まれており、データ処理には、正確さはもちろんのこと、速さも求められます。

TANSO-3センサが取得するスペクトルからNO2の鉛直カラム濃度を導出する上で、最大の誤差要因の一つがエアマス因子(Air Mass Factor, AMF)です。AMFは、大気上端から地表面に垂直に光が到達する時の光路長を1として、観測光の光路長を規格化した時の値です。このAMFは、大気中を伝搬する放射の散乱や吸収等の物理過程を定式化した放射伝達モデルによって計算することができます。

しかし、一般に放射伝達モデルは計算コストが高く、GOSAT-GWが観測する全ての観測データに対して放射伝達モデルを走らせることは非現実的であり、放射伝達モデルによるAMFの計算を、精度を確保したまま計算スピードを向上させる必要があります。

我々、情報通信研究機構では、このAMFの計算に対して、機械学習を取り入れた独自のアルゴリズムを開発し、計算精度と速度の両立を実現しました。その結果、機械学習を用いない従来手法と比較して、計算精度を約12倍向上、速度を約2倍向上させることに成功しました。

大学や企業、行政の方へ

我々の研究に関心をもっていただきありがとうございます。

我々は、国内外の企業、公的研究機関や大学等と連携し、共同研究や、技術やデータの提供、講演等のアウトリーチ活動を積極的に行っています。

皆様方の協力を頂ける場合、共同研究契約書や受託研究契約書を締結いたします。その前の段階の相談においての秘密保持契約書等、具体的な連携に必要な文面はこちらでご用意いたします。

我々は、これまで多くの失敗を繰り返し、失敗を次の過程へと確実に繋げてきました。これは、応援して下さった方々のお陰で成し遂げてきたことです。改めて深く感謝いたします。
そして、これまでの感謝を込めて、私たちが得た「手法」や「結果」を、皆様にも利用いただければと思います。少しでも興味をお持ちの方は、ぜひお気軽にお声掛けください。

 

連絡先:
NICT テラヘルツ研究センターテラヘルツ連携研究室 佐藤 知紘
Email: tosato@nict.go.jp / Phone: 042-327-7033

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