当シンポジウムは終了しました。たくさんのご参加ありがとうございました。
フロンティアサイエンスシンポジウム2021
―ICT社会の未来を拓くサイエンス&テクノロジー最前線―
研究所長 和田 尚也
ごあいさつ
平素より弊機構につきましては、格別のご高配を賜り誠にありがとうございます。
さて、2021年4月より弊機構では第5期中長期計画をスタート致しました。このスタートにあたりフロンティアサイエンス分野を担務する未来ICT研究所が、今後5年間の研究開発期間を通じて、どのような研究開発に取り組み、どのような成果を生み出していくのか、そしてその成果をもとにどのような未来を切り拓いていくのかについてシンポジウムを開催致します。
本シンポジウムでは、今後実施する研究開発テーマ内容の紹介に併せて、関連技術に造詣が深く、その研究開発の最前線でご活躍されている外部識者をお招きし、未来のICT社会のあるべき姿について議論を深めたいと考えております。
イベント概要
開催日時 | 2021年5月28日(金)9:20-17:10 |
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会場 | WebEXでのリモート参加(事前登録制、400名) |
対象 | どなたでも参加していただけます(事前登録が必要です) |
申し込み方法 | 下記の申し込み先へ必要事項を明記の上、お申し込みください。 必要事項:氏名(必須)、メールアドレス(必須)、組織名・学校名(必須)、所属部署・学部等、役職・学年、その他お問合せなど 開催3日前までに「アクセスコード」をご案内します。 ※返信メールが受け取れるメールアドレスをご記入ください。 ※開催3日前までにアクセスコードが届かない場合は未来ICT研究所総合企画室へお問い合わせください。 ※個人情報につきましては、個人情報保護法等に基づき管理し、本イベントへの回答以外の目的には使用いたしません。 ※シンポジウムの状況は録画させていただき、後ほど弊機構の広報資料として活用します。ご了承の上、お申込みください。 |
申し込み締切 | 2021年5月26日(水)17:00 ※定員になり次第終了します |
参加費用 | 無料 |
申し込み・お問い合わせ | NICT未来ICT研究所 総合企画室 シンポジウム事務局 |
主催者 | 国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT) 未来ICT研究所 |
PROGRAMプログラム
プログラム詳細
9:20 開演
9:30-9:35 挨拶
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徳田 英幸
国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT) 理事長
慶應義塾大学名誉教授慶應義塾大学工学部を卒業後、工学研究科修士課程修了。カナダウォータールー大学計算機科学科にて博士取得。その後、カーネギーメロン大学計算機科学科准教授を経て、慶應義塾大学環境情報学部教授。慶應義塾大学常任理事、環境情報学部長、大学院政策・メディア研究科委員長等を歴任。2017年より現職。 現在、B5G推進コンソーシアム副会長、スマートIoT推進フォーラム会長、重要生活機器連携セキュリティ協議会(CCDS)会長、IEEE東京支部理事等を務める。日本学術会議連携会員、情報処理学会フェロー、日本ソフトウェア科学会フェロー。 研究教育業績に関して、Motorola Foundation Award、IBM Faculty Award、経済産業大臣賞、総務大臣賞、慶應義塾 義塾賞、情報処理学会功績賞、情報セキュリティ文化賞、慶應義塾 福澤賞、文部科学大臣表彰科学技術賞などを受賞。
9:35-9:40 オープニング
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矢野 博之
NICT 理事
1992年 郵政省通信総合研究所(現NICT)入所。関西支所(現未来ICT研究所)でヒューマンコミュニケーションに関する研究に従事。けいはんな情報通信融合研究センター(現ユニバーサルコミュニケーション研究所)、内閣府出向、ワイヤレスネットワーク研究所長、経営企画部長、執行役を経て、2020年より現職。博士(工学)。
9:40-9:50 導入講演
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和田 尚也
NICT 未来ICT研究所 研究所長
1998年、郵政省通信総合研空所(現NICT)入所。フォトニックネットワークシステム研究室長、ネットワークシステム研究所長を経て、2020年より未来ICT研究所長。博士(工学)。
9:50-10:55 第一部【Beyond5G、最先端技術のさらに先を目指して】(65分)
司会進行 笠松 章史(NICT 未来ICT研究所 小金井フロンティア研究センター 研究センター長)
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渡邊 一世
NICT 未来ICT研究所 小金井フロンティア研究センター 超高周波ICT研究室 室長
Beyond 5Gに向けたテラヘルツ波デバイス研究開発について
我々の研究プロジェクトでは未利用周波数帯であるミリ波・テラヘルツ波帯(30 GHz~3 THz)の開拓や無線通信利用のため、GaN-HEMTやSi-CMOSなどの電子デバイスやSiN微小共振器をもつ光周波数コム光源などの光デバイスの研究開発を進めてきました。2021年4月からスタートした第5期中長期計画におけるBeyond 5Gに向けたテラヘルツ波デバイスやデバイス開発を支える計測技術の研究開発について講演いたします。
プロフィール
大学院博士後期課程在籍時の2001年9月よりCRL(現NICT)の研修員、2004年4月よりNICT専攻研究員を経て2009年4月よりNICTパーマネント研究員として、ミリ波・テラヘルツ波帯などの未利用周波数帯の開拓に向け、InP、GaN、In(Ga)Sb系化合物半導体トランジスタの高速・高周波化に関する研究開発、および高周波計測評価技術に関する研究開発に従事。2021年4月より超高周波ICT研究室 室長。博士(工学、大阪大学)を2005年取得。
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大友 明
NICT 未来ICT研究所 神戸フロンティア研究センター ナノ機能集積研究室 室長
有機/無機ハイブリッドによる超高速フォトニクスデバイスの研究開発
Beyond 5Gにおける無線通信や光通信では、5Gの10倍以上の超高速・大容量通信が必要とされます。そのためには、無線通信におけるテラヘルツ波や光波の利用や100Gbaud超級の高速光送受信技術の開発が不可欠です。本講演では、これらの高速通信の実現に向けて当研究室が取り組んでいる、有機EO材料とSiなどの無機材料とのハイブリッドによる超高速フォトニクスデバイスの研究開発について紹介します。
プロフィール
企業研究所、米国留学を経て1996年、郵政省通信総合研究所(現NICT)に入所。有機分子フォトニクスやナノフォトニクスを光制御技術に応用する研究などに従事。Ph.D. (UCF 1995年)
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永妻 忠夫
大阪大学大学院 基礎工学研究科 教授
6G and beyond:テラヘルツ波のたゆまぬ挑戦
マイクロ波と光波の境界に位置する電磁波領域であるテラヘルツ波は、今世紀に残された最後の電磁波帯として、活発な研究開発が進められている。これまでそれぞれ2つの領域において開発されてきた、高周波マイクロ波技術と光技術とがさらに融合進化し、通信やセンシングシステムにおいて新たなプラットフォームとサービスを提供することが期待される。本講演では、ビッグバン以来宇宙で生成された最大のエネルギーでありながら地球上ではほとんど使うことができなかったテラヘルツ波を、特に通信応用という観点からどのように利用していくか、またそのための研究開発の方向性について述べる。
プロフィール
学歴
1981年 九州大学工学部卒
1896年 九州大学大学院工学研究科博士課程修了(工学博士)
職歴
1986年~2007年 日本電信電話株式会社 NTT研究所
2007年~現在 大阪大学 教授
10:55-12:05 第二部【量子情報通信技術で実現するセキュアなICT社会】(65分)
司会進行 笠松 章史(NICT 未来ICT研究所 小金井フロンティア研究センター 研究センター長)
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藤原 幹生
NICT 未来ICT研究所 小金井フロンティア研究センター 量子ICT研究室 室長
量子暗号・量子セキュアネットワークが目指す「セキュアなICT社会」
本中長期計画での量子ICT研究室での研究内容をご紹介します。特に量子力学の原理を利用したICT技術を、超長期に安全にデータを伝送・保存・二次利用を可能とする「量子セキュアクラウド」をご紹介し、社会実装に向けた活動もご紹介します。基本となる技術は量子暗号とそのネットワークであり、NICTでは2010年から運用しているTokyo QKD Networkは世界でもっとも実績のある量子暗号ネットワークです。我が国の量子暗号技術の現状をご報告します。
プロフィール
1990年 名古屋大学工学部卒
2002年 名古屋大学理学部 博士号取得(理学)
職歴
1992年~2001年 郵政省通信総合研究所 技官・研究官・主任研究官
2001年~2012年 情報通信研究機構 主任研究員、2016~ 同研究マネージャー
2021年~ 量子ICT研究室 室長
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寺井 弘高
NICT 未来ICT研究所 神戸フロンティア研究センター 超伝導ICT研究室 室長
超伝導が拓く量子情報通信技術
超伝導ICT研究室では、窒化物超伝導薄膜・デバイスをコア技術として、超伝導ナノストリップ単一光子検出器、テラヘルツ検出器、超伝導ディジタル論理回路、超伝導量子ビット等の研究開発を行っています。本講演では、これらの研究開発の現状と課題を整理し、超伝導ICT研究室の第5期中長期計画における研究開発を紹介します。
プロフィール
1991年名古屋大学工学部電気・電子工学科卒.1996年同大学院博士課程修了.1996年日本電気(株)基礎研究所研究員.1997年国立研究開発法人情報通信研究機構研究員、2016年より同上席研究員、2021年より超伝導ICT研究室 室長.専門は超伝導エレクトロニクス.
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萬 伸一
国立研究開発法人理化学研究所 量子コンピュータ研究センター 副センター長
ICTイノベーションを加速する量子情報技術
世界各国で量子情報技術への戦略的な投資がなされ、量子情報技術に対する期待が高まりつつある。日本では量子技術イノベーション戦略が発表され、社会実装を目指した技術と連携のコアとなる量子技術イノベーション拠点が設置された。本講演では、量子技術の情勢や理研における量子コンピュータ技術、イノベーション創出に向けた今後を展望する。
プロフィール
1993年 東京大学大学院工学系研究科博士課程修了
1993年 日本電気株式会社入社 基礎研究所
2015年 スマートエネルギー研究所・所長代理
2018年 システムプラットフォーム研究所・主席技術主幹
2019年 国立研究開発法人理化学研究所入所 創発物性科学研究センター・コーディネーター
2021年 量子コンピュータ研究センター・副センター長、現在に至る。
12:05-13:00 休憩(昼食)
13:00-14:05 第三部【新材料、新機能によるICT革新】(65分)
司会進行 久保田 徹(NICT 未来ICT研究所 神戸フロンティア研究センター 研究センター長)
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東脇 正高
NICT 未来ICT研究所 小金井フロンティア研究センター グリーンICTデバイス研究室 室長
酸化ガリウムデバイス開発-半導体ルネサンスを目指して-
酸化ガリウムは、その優れた物性から、次世代パワーデバイス、極限環境通信デバイス用途の新半導体材料として期待されています。また、原理的に大口径かつ高品質な単結晶基板を、融液成長法により安価かつ簡便に作製することができるという、産業上の大きな魅力も合わせ持つ。本講演では、グリーンICTデバイス研究室における酸化ガリウムデバイス(トランジスタ、ダイオード)研究開発の現状、今後の展望などについて解説します。
プロフィール
学歴
1994年 大阪大学基礎工学部 卒業
1998年 大阪大学大学院基礎工学研究科博士後期課程 修了: 博士(工学)
職歴
1998年~2000年 日本学術振興会 博士特別研究員
2000年~2004年 通信総合研究所 研究員 (2004年 情報通信研究機構に改組)
2004年~2007年 同 主任研究員
2007年~2010年 米国カリフォルニア大学サンタバーバラ プロジェクト研究員 (転籍出向)
2010年~2012年 情報通信研究機構 未来ICT研究所 主任研究員 (出向復帰)
2012年~2013年 同 総括主任研究員
2013年~2021年 同 グリーンICTデバイス先端開発センター センター長
2021年~現在 同 グリーンICTデバイス研究室 室長
2010年より、酸化ガリウム材料・デバイス研究開発に従事
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井上 振一郎
NICT 未来ICT研究所 神戸フロンティア研究センター 深紫外光ICT研究室 室長
高強度深紫外LEDの研究開発と深紫外光が切り拓く未来
波長が280nmよりも短いUV-C光を発する深紫外半導体発光ダイオード(DUV-LED)は、ウィルス殺菌から医療、光加工、ICT応用に至るまで、幅広い分野においてその重要性が増しており、青色LEDに続く研究フロンティアとして、世界中の多くの機関において開発が活発化しています。本講演では、単チップにおいて光出力500 mWを超える世界最高出力の265nm帯深紫外LEDを実証したNICTの取組みや、深紫外光デバイス研究開発の今後の課題や展望などについて紹介します。
プロフィール
2004年東京工業大学大学院博士課程修了.博士(工学).同年理化学研究所基礎科学特別研究員、2007年九州大学先導物質化学研究所助教、2010年情報通信研究機構主任研究員を経て、2014年より同深紫外光ICTデバイス先端開発センター センター長、2021年より現職.神戸大学大学院工学研究科連携講座教授兼務.専門はナノ光エレクトロニクス.
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藤田 静雄
京都大学 名誉教授
新材料、新機能デバイス探索の道
新しいデバイスのベースは新しい材料の発見と具現化であり、「何を、どのようにして創ろうか」という問いから始まります。講演者は、電子デバイス応用として酸化ガリウム(Ga2O3)、深紫外光デバイス応用として酸化マグネシウム亜鉛(MgZnO)という新しい酸化物半導体に着目して研究を行ってきましたので、その着想や探索の経緯について講演をさせていただきます。
プロフィール
1955年大阪市生まれ、1974年大阪教育大学教育学部附属高等学校天王寺校舎卒業。1980年京都大学大学院工学研究科修士課程修了後、京都大学助手に着任。シリコン化合物薄膜の研究で1990年に工学博士の学位を取得。同年京都大学助教授に昇任し、II-VI族半導体の結晶成長と光物性の研究に従事。1994年-1995年米国ノースカロライナ州立大学客員研究員として窒化物、酸化物半導体の研究に従事。その後酸化物半導体のデバイス応用に着目した研究を行う。2001年京都大学教授に昇任し、新しい酸化物半導体の探索、成長技術の開発、機能創成とデバイス応用の研究に従事。2021年京都大学を定年退職し、その後京都大学産官学連携本部において産官学連携研究プロジェクトの推進にかかる用務に従事。
14:05-15:10 第四部【バイオ応用による未来型コミュニケーション】(65分)
司会進行 久保田 徹(NICT 未来ICT研究所 神戸フロンティア研究センター 研究センター長)
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小嶋 寛明
NICT 未来ICT研究所 小金井フロンティア研究センター バイオICT研究室 室長
バイオで拓く新たな情報通信技術
バイオICT研究室では、生物が得意とする分子を介したコミュニケーションの利活用を通じ、これまで困難であったICTの課題を解決することを将来目標に据えて、今中長期計画において、生物材料ならではの性質や特長を活かした新奇情報識別技術や情報素子構築技術の研究開発に取り組みます。本講演では、バイオ素材や生物機能を活用することにより、新たなICT領域の開拓を目指す我々の研究活動について紹介いたします。
プロフィール
1993年 大阪大学大学院博士前期課程了.同年 ERATO柳田生体運動子プロジェクト研究員. 1997年~ 通信総合研究所(現情報通信研究機構). 現在 未来ICT研究所 神戸フロンティアセンター バイオICT研究室 室長.生体分子顕微計測技術の研究開発に従事.博士(工学). 令和2年度 文科大臣表彰 科学技術賞受賞.日本生物物理学会,米国生物物理学会会員.
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山元 大輔
NICT 未来ICT研究所 神戸フロンティア研究センター 神経網ICT研究室 室長
単一ニューロンから行動へ~昆虫の神経系に倣った新規ICTの分野開拓に向けて~
神経網ICT研究室では、ヒトとは異なる進化を遂げた昆虫の脳の優れた特質に学び、新たな情報通信技術のシーズを見出すための研究を行います。特に、行動神経生物学プロジェクトでは、素早く正確な追跡行動を実現させている昆虫神経網の作動原理を解明し、また記憶神経生物学プロジェクトでは記憶の形成過程を明らかにして、それに倣ったICT技術の基盤創出を目指します。本講演では、こうしたアプローチの一端を紹介します。
プロフィール
1976年 東京農工大学農学部卒
1978年 東京農工大学大学院農学系研究科修士課程修了(1981年 理学博士 北海道大学)
職歴
1980年~1999年 (株)三菱化学生命科学研究所 研究員(退職時:室長)
1981年~1983年 Northwestern University Medical School, Postdoctoral fellow(兼)
1999年~2005年 早稲田大学 教授(人間科学部、理工学部)
2005年~2018年 東北大学大学院生命科学研究科 教授
2018年~現在 現職
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伊藤 健
関西大学システム理工学部 教授
微生物とナノ材料の相互作用 ~昆虫の翅を模倣した新たな抗菌材の開発~
ウイルスや細菌による感染症のほとんどは水平感染で広がるため、身の回りの物に抗菌・抗ウイルス性を持たせることが望まれている。一方、昆虫の翅には目には見えないレベルの突起が存在し、その突起物が抗菌・殺菌性を示すことが明らかになった。私達は、この現象に着目し、突起物を模倣することで新しい抗菌材の開発を試みており、同時にメカニズムの解明も目指している。本講演では、これまでに得られた成果の一部を紹介する。
プロフィール
1995年大阪大学理学部卒
1997年東京大学大学院理学系研究科修了
工学博士(2007年慶應義塾大学)
職歴
1997年~2014年 神奈川県産業技術センター
2015年~2017年 関西大学システム理工学部准教授 2018年~同教授
趣味
サイクリング、ハイキング、庭仕事
15:10-15:25 休憩(15分)
15:25-17:00 第五部【全脳のモデル化:ICTとデータ駆動で明らかにするヒトの脳機能】(95分)
司会進行 田口 隆久(NICT 未来ICT研究所 脳情報通信融合研究センター 副研究センター長)
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柳田 敏雄
NICT 未来ICT研究所 脳情報通信融合研究センター(CiNet) 研究センター長 /大阪大学大学院生命機能研究科/情報科学研究科特任教授
脳情報通信融合研究が目指す次の10年
設立10周年を迎える脳情報通信融合研究センターCiNetは、ヒトの脳機能計測のための大型計測装置、大規模データ処理システムを駆使した研究によって、ヒト脳活動計測と解析において世界的にもトップクラスの拠点になりました。CiNetの中心課題は、ヒトの活動にかかわる様々な脳活動を測定して、情報が脳活動としていかに表現されるかをモデル化することにあります。そして、脳活動から脳情報を読み解いています。最終的には全脳モデル、CiNetBrainを目指しています。CiNetは“人間とは何か?”という問いを掲げ、認知や知覚の定量評価、人間のパフォーマンス向上への応用、そして次世代AI技術開発への基盤技術提供を通して、おもろく、楽しい社会づくりに貢献します。
プロフィール
大阪大学基礎工学部教授、医学部第一生理学教授、生命機能研究科研究科長、通総研(関西支所)柳田結集型プロジェクト総括責任者(併任)、理化学研究所生命システム研究センター長(併任)を経て現職。専門分野は生物物理学。主な研究テーマはゆらぎと生命機能。 恩賜賞日本学士院賞、朝日賞、The US Genomic Award 等受賞。日本生物物理学会、物理学会名誉会員、米国生物物理学会Fellow、大阪大学栄誉教授、文化功労者、学士院会員。
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内藤 栄一
NICT 未来ICT研究所 CiNet 脳情報通信研究室 室長
人間パフォーマンス向上プロジェクト:全脳でみられる抑制機構の包括的理解の促進とこれを応用した認知・運動機能向上への挑戦
脳情報通信融合研究室の人間パフォーマンス向上プロジェクトでは、子供から高齢者、さらにはスポーツのエキスパートに至るまで、人間が様々な感覚・認知・運動課題を実行している際の脳の機能画像の大規模データを取得しています。本講演では、脳が効率的に情報を処理するために必須の脳大規模ネットワークで起こる抑制機構の重要性を解説し、トレーニングによって高齢者で劣化した抑制機構を改善し、運動機能を向上させることができることを紹介します。
プロフィール
1996年京都大学大学院人間・環境学研究科博士課程修了(博士人間・環境学)。のち、カロリンスカ研究所客員研究員、京都大学大学院人間・環境学研究科助手、国際電気通信基礎技術研究所主任研究員などを経て、2013年より、情報通信研究機構 脳情報通信融合研究センター研究マネージャー、2021年より、情報通信研究機構未来ICT研究所 脳情報通信融合研究センター脳情報通信融合研究室室長。子供から高齢者、エキスパートに至るまでの感覚・認知・運動機能の特徴をMRIを用いて可視化し、人間の認知・運動機能を向上させることのできる技術の開発に挑戦している。
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春野 雅彦
NICT 未来ICT研究所 CiNet 脳情報工学研究室 室長
社会脳プロジェクト:社会条件下での情動・意思決定機構の数理的同定とその応用
ヒトは物理空間、サイバー空間の両面に構築した巨大な社会をその特徴とします。したがって、社会行動の神経基盤を知ることがヒトを知ることに直結し、社会格差や攻撃行動など問題の解決、心に響くコミュニケーション手段の開発などに繋がることが期待されます。本講演では、私達の研究グループで進める報酬や罰を動機に社会行動を選択する社会的意思決定の研究での、数理モデル、実験検証、応用例などをご紹介します。
プロフィール
大学院終了後、NTT研究所、国際電気通信基礎技術研究所、ケンブリッジ大学、玉川大学などで勤務のあと、2011年NICT入所。特に社会的状況におけるヒトの行動選択や情動の脳内メカニズムに関する研究を進める。現在、脳情報工学研究室室長。
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成瀬 康
NICT 未来ICT研究所 CiNet 脳機能解析研究室 室長
実生活下での脳波及び行動データによる高付加価値情報を提供するモデル構築に向けて
我々はこれまで、どこでも脳波計測を可能とするウェアラブル脳波計の開発を行ってきた。これにより、実生活に近い状態での脳活動の計測が可能となってきました。本講演では、このウェアラブル脳波計を利用することでどのような応用につなげることが出来る可能性があるかについて紹介した後に、実生活に近い状態で の脳波計測について紹介します。
プロフィール
大学院博士課程修了後、2007年にNICTに入所。以来、日常での脳波計測を可能とするためのウェアラブル脳波計の開発やウェアラブル脳波計を利用したアプリケーションの研究開発に従事。博士(科学)
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北澤 茂
大阪大学大学院 生命機能研究科 脳神経工学講座 ダイナミックブレインネットワーク研究室 教授
脳の目的 ―情報から脳に迫ろう―
脳の目的とはなんだろうか。「環境から読み出せる情報量を最大化すること」と定義するのはどうか。最近Caronらが提案した「ラベル無し自己蒸留」法はまさに「情報量の最大化」を目的とする学習則である。この学習則で育った人工神経回路は、写真のobjectにとても自然な注意を向ける。面白いことには、私が興味を持っている「背景座標系」も獲得しているようなのだ。「情報最大化」をキーワードにすることで、脳の発達と自己組織化、意識や言語の発生まで、統一的にアプローチすることが可能になるだろう。
プロフィール
1987年東京大学医学部医学科卒
1991年東京大学大学院医学系研究科修了(医学博士)
東大医学部助手、電子技術総合研究所主任研究員、産業技術総合研究所主任研究員、順天堂大学医学部教授を経て、2011年より大阪大学大学院生命機能研究科・教授。
2013-18年 新学術領域「こころの時間学」領域代表
2018年- 新学術領域「時間生成学」領域代表
1998年 塚原仲晃記念賞, 2018年 中山賞大賞
17:00-17:10 クロージング
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大岩 和弘
NICT 未来ICT研究所 主管研究員
大学院博士課程修了後、帝京大学医学部講師を経て1993年通信総合研究所(現NICT)に入所。以来タンパク質モーターの単一分子計測と分子通信研究に従事。未来ICT研究所所長を経て2013年にNICTフェロー、同年、主管研究員となり現在に至る。兵庫県立大学連携大学院教授。博士(理学)。第23回大阪科学賞。平成21年科学研究費補助金優秀審査員表彰。令和2年度 文部科学大臣表彰 科学技術賞(研究部門) 受賞。