/ 研究成果-報道発表 Press Release
報道発表 Press Release
未来ICT研究所発の顕著な研究成果を機構からの研究成果として発信しています。
2024年8月2日
微小管の引張が促進するダイニン物質輸送
新たな細胞制御メカニズムの解明
京都大学大学院理学研究科の日本学術振興会特別研究員であるナスリン サエダ・ルバイヤ博士、同大学院理学研究科の角五彰教授らの研究グループは、星薬科大学薬学部、東京大学先端科学技術研究センターの山下雄史准教授、横浜市立大学大学院生命医科学研究科の池口満徳教授、国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)の鳥澤嵩征研究員(現 国立遺伝学研究所)と大岩和弘主管研究員と共同で、微小管に引張応力を与えた際のモータータンパク質による物質輸送速度の変化について研究を行いました。本研究は、独自開発した伸展機構を介し、微小管に定量的な引張応力を加え、ダイニンモーターによる物質輸送を観察しました。高度な蛍光顕微鏡イメージング技術と定量的に引張応力を与える技術を使用し、シリコーンゴム基板上で引張応力を微小管に加えました。一定以下の引張応力下ではダイニンの物質輸送速度の向上を示しますが、一定以上の引張応力では輸送速度が減少することが示されました。このことは微小管の変形やダイニンと微小管の相互作用の変化が輸送速度の変化を引き起こすことを示唆しています。これらの発見は、細胞内の力と分子モーターの相互作用に関する新たな知見をもたらし、細胞内物質輸送を維持する上での微小管の力学特性の重要性を浮き彫りにしています。本研究の成果は、2024年6月25日よりアメリカ化学会ACS Publicationsが発行する国際学術誌「Nano Letters」のウェブサイトにオンラインで公開されました。
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2024年7月22日
バイオナノマシンの運動性の基本原理を実証
--定説の運動機構を覆しうる発見--
東京大学大学院総合文化研究科広域科学専攻の住吉里英子大学院生、山岸雅彦助教、矢島潤一郎教授、学習院大学の西坂崇之教授、国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)未来ICT研究所の古田茜研究員、古田健也研究マネージャーらは、バイオナノマシンの一種、キネシンのモータードメインを構成するループ領域に微小なDNAオリゴマーを結合させ、自在に運動支点をデザインする方法を開発し、どのような運動支点であってもキネシンは、細胞骨格・微小管に作用して一方向に力を発生できることを明らかにしました。従来は、モータードメインとテイルドメインを繋ぐリンカードメインの構造変化が力発生の起源と考えられていましたが、本研究により従来モデルを大きく修正する必要が生じました(図1)。バイオナノマシンは、人間が作るマシンとどことなく似ているように捉えることもできますが、運動する仕組みは似て非なるものです。本研究成果は、生体高分子から構成されるミクロなバイオナノロボットを設計するための指針を与えるものとして期待できます。
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2024年6月13日
迷うことにも意味がある
~決断の迷いも含めて脳は運動を学習することを発見~
国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT、理事長: 徳田 英幸)未来ICT研究所 脳情報通信融合研究センター(CiNet)の羽倉信宏主任研究員、小笠希将研究員(当時)らと株式会社本田技術研究所のグループは、運動の学習には、その運動の実行に至るまでの決断の迷いが反映されていることを明らかにしました。
これまでの意思決定や運動制御の理論では、一度意思決定がなされてしまえば、その決定に対する確信度合には依存せずに同じ運動が実行されると考えられていました。しかし、研究グループは、これまでの考え方を覆し、脳は決断を迷った末の運動と、迷わずに行う運動を区別し、異なる運動として実行していることを明らかにしました。
この結果は、様々な意思決定の状況に応じて運動学習をさせるなど、新たなスポーツやリハビリの指導方法の開発につながります。本成果は、英国科学誌「Nature Human Behaviour」オンライン版に2024年6月11日(火)に掲載されました。
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2024年5月9日
量子コンピュータのコンパイラ高速化技術を開発
-確率的手法により最適なゲートシーケンス探索時間を桁違いに短縮-
国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT、理事長: 徳田 英幸)は、国立研究開発法人理化学研究所(理事長: 五神 真)、東京理科大学(学長: 石川 正俊)、東京大学(総長: 藤井 輝夫)と共同で、量子コンピュータに最適な量子ゲートシーケンスを確率的探索手法を用いて迅速に探索する技術の開発に初めて成功しました。
量子コンピュータにタスクを実行させるには、コンパイラを使い、プログラミング言語で書かれた命令を量子ビットへのゲート操作で構成されるシーケンスに変換する必要があります。私たちは、最適制御理論(GRAPEアルゴリズム)を網羅的探索に応用して、理論的に最適なものを特定する手法を開発しましたが、量子ビット数が増えるに従い、可能な組合せの数が爆発的に増えるため、網羅的探索が不可能となります。例えば、6量子ビットで構成される任意の量子状態を生成するタスクに対して、もし、網羅的な探索を行って最適なゲートシーケンスを見つけようとすると、現在最速の古典コンピュータを使っても、宇宙の年齢よりも長い時間がかかります。
そこで、今回私たちは、確率的アプローチによる最適な量子ゲートシーケンスを探索する手法の開発を試み、成功しました。新しい確率的探索手法を使用すると、上記の問題に対する最適な量子ゲートシーケンスの探索が数時間ででき、桁違いに簡単になることが、スーパーコンピュータ「富岳」を使い、確認・実証されました。
この新しい手法は、量子コンピュータのコンパイラを高速化し、実用的な量子コンピュータの有用なツールとなることや量子コンピューティングデバイスの性能向上につながることが期待されます。また、量子中継のノードにおける量子情報処理の最適化にも応用できるため、量子インターネットの実現や環境負荷の低減に貢献することが期待されます。なお、本成果は、2024年5月6日(月)に、米国の科学雑誌「Physical Review A」に掲載されました。
2024年4月26日
言葉がヒトの匂いの脳内情報処理に与える影響
--何の匂いと思って嗅ぐかによって一次嗅覚野の脳活動が変化する--
東京大学大学院農学生命科学研究科の岡本雅子准教授、東原和成教授、大阪大学大学院生命機能研究科の西本伸志教授、情報通信研究機構(NICT)未来ICT研究所脳情報通信融合研究センターの黄田育宏副室長らの研究グループは、超高磁場のfMRIを用いた検証を行い、同じ匂いを嗅いでも、異なる言葉ラベルを与えられると、匂いの感じ方、および一次嗅覚野の脳活動が変化することを明らかにしました。
匂いの感じ方は、鼻腔に取り込まれた匂い物質の種類だけで決まるわけではなく、言葉ラベルなどにより、その匂いを何の匂いと思って嗅ぐかが変わると、変わることが知られています。一方で、言葉ラベルが脳内での匂いの情報処理にどのような影響を与えるのかについては十分に解明されていませんでした。
匂いの脳内情報伝達経路の中でも上流に位置する一次嗅覚野に言葉ラベルの影響があったことは、ヒトにおける匂いの脳内情報処理機構を包括的に理解するための足がかりとなることが期待されます。また、産業応用の面においては、今回用いられた脳活動から匂いの微細な違いを読み出す技術が、香料のもたらす印象を予測する技術へとつながることが期待されます。
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2024年4月23日
世界初のミックスドシグナルベースバンド復調回路による20Gb/s QPSK無線伝送技術を開発
ザインエレクトロニクス、NICT、広島大学は共同で、総務省研究開発プロジェクトの一環で、世界初のミックスドシグナル広帯域ベースバンド回路による毎秒20ギガビットの超高速情報伝送を実現しました。ザインエレクトロニクスは設計・測定全般を、広島大学大学院先進理工系科学研究科の藤島実教授らは設計・測定についての議論を、NICTは測定についての議論や測定補助をそれぞれ担当しました。
この半導体回路は、キャリア周波数をシンボル・キャリア周波数の整数倍にすることで回路を簡素化することができます。キャリア、タイミングとデータ復元機能を統合する独自の回路構成 (ミックスドシグナルコスタス・ループ)を用いることで超高速情報伝送を実現しました。高速・低解像度ADCは8相タイムインターリーブ(回路全体で出力を8倍速化)毎秒40ギガサンプルの3bit ADCを実装し、これにFPGAを用いてデータを復元することで実現しました。
本研究成果は、2024 IEEE Custom Integrated Circuits Conference(CICC、2024年4月21日~4月24日、米国コロラド州デンバー)で発表を行いました。
2024年4月18日
国際宇宙ステーションと地上間での秘密鍵共有と高秘匿通信に成功
~衛星量子暗号通信の実用化に期待~
国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT、理事長: 徳田 英幸)、国立大学法人東京大学大学院工学系研究科(研究科長: 加藤 泰浩)、株式会社ソニーコンピュータサイエンス研究所(代表取締役社長: 北野 宏明)、次世代宇宙システム技術研究組合(理事長: 山口 耕司)及びスカパーJSAT株式会社(代表取締役 執行役員社長: 米倉 英一)は、低軌道上の国際宇宙ステーション(ISS)から地上の可搬型光地上局への光通信により、1回の上空通過で100万ビット以上の秘密鍵を共有し、ISSと地上局とでの情報理論的に安全な通信の実証に成功しました。
本通信実証の成功により、低軌道衛星からの光通信による高速かつ高い安全性を持つ暗号鍵を任意の地上局と共有する技術的な見通しが立ちました。
本技術が実用化されれば、原理的に地球上のどこでも安全な暗号鍵の共有ができ、通信で漏えいを防ぐことができるため、国家安全保障や外交の分野において不可欠な重要情報の高秘匿通信が可能になります。今後、本技術の開発を更に進め、機密情報を扱うユーザ向けの衛星量子暗号システムの社会実装を目指します。
2024年1月19日
伝搬する光の論理量子ビットの生成
――大規模誤り耐性型量子計算への第一歩――
国立大学法人東京大学大学院工学系研究科の紺野峻矢大学院生(研究当時)及びアサバナント ワリット助教、古澤 明教授らの研究チーム、国立研究開発法人情報通信研究機構(以下NICT)、国立研究開発法人理化学研究所、チェコ共和国のPalacky UniversityのPetr Marek准教授及びRadim Filip教授、ドイツ連邦共和国のUniversity of MainzのPeter van Loock教授は、伝搬する光の論理量子ビットであるGottesman-Kitaev-Preskill量子ビット(以下GKP量子ビット)を世界で初めて生成しました。
誤り耐性型量子コンピュータを実現するため、通常は非常に多数の量子ビットを用いて、それらを1つの論理量子ビットとして構成します(以降、区別のため、通常の量子ビットを物理量子ビットと呼びます)。この方法では用いる物理量子ビットの数が膨大であることが、実用的な量子コンピュータへの最大の障壁となっています。一方、GKP量子ビットは、1つの光パルスの中で1つの物理量子ビットを用い1つの論理量子ビットの生成を実現できます。これまでGKP量子ビットは有力視されてきましたが、光では実現に至っていませんでした。
2023年11月30日
心に描いた風景を脳信号から復元
~生成系AIと数理的手法を用いた新たな技術を開発~
量子科学技術研究開発機構(以下「QST」) 量子生命・医学部門 量子生命科学研究所 量子生命情報科学研究チームの間島 慶 研究員、情報通信研究機構(NICT) 未来ICT研究所の小出(間島) 真子 研究員、大阪大学 大学院生命機能研究科の西本 伸志 教授は、人が心の中で思い描いた任意の風景・物体などの「メンタルイメージ」を脳信号から読み出し、復元することに成功しました。画像を実際に目で見ている人の脳の活動を機能的磁気共鳴画像法(fMRI)で計測し、その脳信号から見ている画像を復元できることは先行研究で示されています。しかし、メンタルイメージの復元は従来の方法では難しく、例えばアルファベットの文字や単純な幾何学図形など、限られた種類の画像でしか成功していませんでした。
これに対して研究チームは、目で見ている画像の復元に成功した既存の手法をベースにしながら、近年発展の目覚ましい生成系AIとベイズ推定、ランジュバン動力学法を組み合わせた新手法を開発しました。この手法を用いて、画像の種類を限定することなく、人が心の中に思い描いたイメージを復元することに世界で初めて成功しました。本成果は、他者の心の中にある認知や意識を客観的・定量的に捉える手段を提供するものであり、将来的には「心とは何か」の理解への道を開くものと考えられます。また、メンタルイメージを用いた新たなコミュニケーションツール開発への応用や、本手法を利用したブレイン・マシン・インターフェース技術の開発と医療機器への展開が期待されます。
本研究は、2023年11月27日に神経科学・深層学習に関する論文が数多く発表されている国際誌「Neural Networkss」にオンライン掲載されました。
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2023年11月1日
世界初、光の配光角を制御できる深紫外LEDの開発に成功
~ナノ光構造技術により、光学レンズを用いることなく、“高指向性”深紫外LEDを実現~
量子科学技術研究開発機構(以下「QST」) 量子生命・医学部門 量子生命科学研究所 量子生命情報科学研究チームの間島 慶 研究員、情報通信研究機構(NICT) 未来ICT研究所の小出(間島) 真子 研究員、大阪大学 大学院生命機能研究科の西本 伸志 教授は、人が心の中で思い描いた任意の風景・物体などの「メンタルイメージ」を脳信号から読み出し、復元することに成功しました。画像を実際に目で見ている人の脳の活動を機能的磁気共鳴画像法(fMRI)で計測し、その脳信号から見ている画像を復元できることは先行研究で示されています。しかし、メンタルイメージの復元は従来の方法では難しく、例えばアルファベットの文字や単純な幾何学図形など、限られた種類の画像でしか成功していませんでした。 これに対して研究チームは、目で見ている画像の復元に成功した既存の手法をベースにしながら、近年発展の目覚ましい生成系AIとベイズ推定、ランジュバン動力学法を組み合わせた新手法を開発しました。この手法を用いて、画像の種類を限定することなく、人が心の中に思い描いたイメージを復元することに世界で初めて成功しました。本成果は、他者の心の中にある認知や意識を客観的・定量的に捉える手段を提供するものであり、将来的には「心とは何か」の理解への道を開くものと考えられます。また、メンタルイメージを用いた新たなコミュニケーションツール開発への応用や、本手法を利用したブレイン・マシン・インターフェース技術の開発と医療機器への展開が期待されます。 本研究は、2023年11月27日に神経科学・深層学習に関する論文が数多く発表されている国際誌「Neural Networks」にオンライン掲載されました。
2023年10月30日
世界初、“超伝導ワイドストリップ光子検出器”の開発に成功
~従来のナノストリップ型の200倍以上のストリップ幅で、高性能を実現~
国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT、理事長: 徳田 英幸)は、超伝導ストリップ光子検出器において、ストリップ幅を広くしても高効率に光子検出が可能となる新奇構造を創案し、ナノストリップ型に比べて200倍以上ストリップ幅が広い“超伝導ワイドストリップ光子検出器”の開発に世界で初めて成功しました。本技術によって、これまでナノストリップ型において問題となっていた生産性の低さや偏光依存性といった問題を解決することが可能となり、量子情報通信技術や量子コンピュータを始めとする広範囲な先端技術分野へ適用され、そうした技術の社会実装の早期化が期待されます。 なお、本成果は、2023年10月26日(木)に、米国科学雑誌「Optica Quantum」に掲載されました。
2023年10月10日
高周波電波の究極的低損失伝送回路を実現
~超伝導体でBeyond 5G/6G通信システム実現に寄与~
国立大学法人東海国立大学機構 名古屋大学宇宙地球環境研究所の中島 拓 助教、鈴木 和司 技術補佐員(研究支援推進員)、自然科学研究機構国立天文台、株式会社川島製作所、及び国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)は、共同で、超伝導金属であるニオブを材料に用いたミリ波電波用の導波管を開発し、超伝導状態にある導波管の伝送損失が他の一般的な金属材料の導波管に比べて、桁違いに小さいことを発見しました。 超伝導体を材料とする電波の伝送路は、同軸ケーブルや平面ストリップ線路などでは実用化されていますが、これらは比較的周波数の低い電波の伝送に限られています。次世代の通信規格であるBeyond 5G/6Gで利用が見込まれる100 GHzを超えるようなミリ波・サブミリ波・テラヘルツ波帯では、導波管と呼ばれる金属管による立体伝送路が使われますが、「超伝導導波管」の研究はこれまでほとんど行われていませんでした。理論的な先行研究では、超伝導による効果が逆に伝送損失を大きくしてしまい、実用的なものにはならないという予想もありましたが、本研究において実際に超伝導導波管を製作して伝送損失を測定した結果は、その予想を大きく覆すものでした。 本研究の成果を応用すると、既に導波管回路が利用されている宇宙観測用の電波望遠鏡や地球大気の環境計測装置などで、これまでにない超高感度な受信システムが実現できます。さらに、100 GHzを超える周波数帯を用いるBeyond 5G/6G通信システムでも導波管が使用される可能性が高く、高効率な高周波情報通信の実現が期待されます。 本研究成果は、2023年8月8日付Journal of Physics誌「Conference Series Volume 2545」に掲載されました。
2023年9月19日
ナノギャップ電極を基盤とした電気化学発光セルの開発に成功
~分子スケール電流励起発光源の実現に向けた大きな一歩~
電気化学発光セル(LEC)は、発光分子と電解質によって構成される発光層を有する有機発光デバイスです。可動イオンによって引き起こされる電気化学ドーピングにより、両極電荷注入・再結合発光が容易となり、低電圧で高効率な電界発光が得られます。本研究では、金ナノギャップ電極上に成膜した発光分子F8BTとイオン液体P66614-TFSAから成るナノスケールのLEC(nano-LEC)の作製に成功しました。作製したデバイスはF8BTの発光ピーク波長である540 nm付近で強い発光が室温下で得られ、発光閾値電圧は2 V程度でした。また、デバイスの電流および発光強度の過渡特性、温度依存性から、作製したデバイスがLECとして機能していることを確認しました。nano-LECは、分子スケールの電流励起発光源の実現に大きく貢献することが期待されます。本研究成果は、2023年8月23日に科学雑誌Nano Lettersに掲載されました。 本研究では、素子作製、特性評価・解析を、明治大学の米本 了(博士後期課程3年)と野口 裕教授が、電極基板のデザインと作製をNICTの上田 里永子研究技術員(研究実施当時)と大友 明室長が担当しました。本研究で用いたF8BTは住友化学株式会社より提供いただきました。また本研究の一部は、JSPS科研費(15K13293)および明治大学科学技術研究所重点研究の助成を受けて実施されました。
2023年7月7日
シリコン光集積回路を用いたユニバーサルな量子分類器の原理検証実験に成功
-シリコンフォトニクスによる量子機械学習の実現に向けた第一歩-
香川大学(小野貴史助教、創造工学部材料物質科学コース)、慶應義塾大学(ヴォイチェフ・ロガ特任講師、武岡正裕教授)、および国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT、藤原幹生研究センター長、三木茂人室長、寺井弘高上席研究員、和久井健太郎主任研究員)の共同研究グループは、シリコン光集積回路を用いた、ユニバーサルな量子分類器の原理検証実験に成功しました。本研究成果は、2023年7月6日(米国東部時間)に米国物理学会の有力雑誌Physical Review Lettersに掲載されました。
2023年7月3日
世界最小のコイル状バネを設計し、細胞への“微小な力”の計測に成功
~生物の力学情報処理メカニズムの解明に期待~
国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT、理事長: 徳田 英幸)の岩城光宏主任研究員らの研究グループは、国立研究開発法人理化学研究所(理研、理事長: 五神 真)と共同で、DNAを材料に世界最小のコイル状バネを設計し、細胞への“微小な力”の超高感度計測に成功しました。
まだ詳細が分かっていない「脳や細胞における超省エネの機械的な力の情報処理メカニズム」を解明することができれば、全く新しい原理によるコンピュータの開発等につながることが期待されています。
今回開発したのは、細胞へのノイズレベルの“微小な力”の大きさと向きを、サブピコニュートン精度で検出する“世界初”の計測技術です。この計測技術によって生物の力学情報処理メカニズムを解明するための研究が大きく前進し、今後、超省エネで電力消費の少ない全く新しい原理の情報処理システムを実現する新たな指針を得ることが期待されます。
なお、本成果は、2023年7月3日(月)10:00(日本時間)に、米国科学雑誌「ACS Nano」に掲載されました。
2023年6月1日
深紫外LEDを活用した日中・屋外かつ“見通し外”環境下での光無線通信実証に成功
~ビルなどの障害物や太陽光背景ノイズに邪魔をされない革新的な光ワイヤレス通信を実現~
国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT、理事長: 徳田 英幸)未来ICT研究所の井上 振一郎室長らの研究グループは、深紫外LED(発光ダイオード)を活用し、太陽光による背景ノイズの多い日中・屋外で、かつ送信機と受信機の間にビルなどの障害物がある“見通し外(NLOS: Non-Line-Of-Sight)”環境下において、光無線通信伝送を実証しました。
発光波長265 nm帯、光出力500 mW超の高強度シングルチップ深紫外LEDを搭載した送信機と、太陽光背景ノイズを高効率に除去可能な深紫外光受信機を開発することで、日中・屋外かつ“見通し外”環境下において、最大80 mの距離で1 Mbps以上の光無線通信伝送に世界で初めて成功しました。
本成果は、ビルが高密度に建ち並ぶ都市部や樹木が生い茂る森林地帯など、光を遮る障害物が多く存在する厳しい“見通し外”環境下においても、高強度深紫外LEDを用いることで高速光無線通信が実現可能であることを示したものです。将来的には、ビルや樹木等で見通せない状態のドローンや無人ロボットとの通信、見通しの悪い交差点等での車車間通信(V2V)や路車間通信(V2I)、電波の届きにくい山岳地域における無線通信など、幅広い分野の産業、生活・社会インフラにおいて、光無線通信の利用シーンを飛躍的に広げる新しい技術として期待されます。
なお、本成果は、IEEE(米国電気電子工学会)発行の学術論文誌IEEE Photonics Journal(電子版: 米国東部時間2023年5月31日(水) 最終版)に掲載されました。
2023年3月16日
スカイツリー-地上可搬局での盗聴解読の脅威のない暗号鍵共有に向けた光伝送実証に成功
-衛星と地上間での量子暗号を見据えた原理実証実験-
次世代宇宙システム技術研究組合(NeSTRA、所在地: 神奈川県横浜市、代表理事: 山口 耕司)、国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT、本部: 東京都小金井市、理事長: 徳田 英幸)、株式会社ソニーコンピュータサイエンス研究所(ソニーCSL、本社: 東京都品川区、代表取締役社長: 北野 宏明)、国立大学法人東京大学大学院工学系研究科(所在地: 東京都文京区、研究科長: 染谷 隆夫)及びスカパーJSAT株式会社(本社: 東京都港区、代表取締役 執行役員社長: 米倉 英一)は、受託中の総務省研究開発案件「衛星通信における量子暗号技術※1の研究開発」※2において、2018年度より実施中である、超小型衛星に搭載可能な量子暗号通信技術の研究開発を進めており、盗聴不可能な暗号鍵を共有するサービスの可用性を高めるために開発された地上試験モデル(可搬型光地上局)を用いて、2022年12月9日に東京スカイツリー-上野恩賜公園第一駐車場間の約3kmにわたり、情報理論的安全性を持つ鍵の共有のための地上間光伝送模擬実証を実施いたしました。その結果、低軌道衛星(ISSなど)と地上局で想定される伝送条件よりも厳しい伝送損失において10Gクロックの微弱光信号パケットの受信が確認でき、低軌道衛星‐地上可搬局とでの光通信技術を応用した安全な暗号鍵共有技術(物理レイヤ暗号による盗聴解読の脅威のない暗号鍵共有)の実現に向けた技術検証に成功しました。
本研究開発案件では、今後も研究開発成果について実証を重ね、将来超小型低軌道衛星-地上間での量子暗号・物理レイヤ暗号通信を実現し、通信の高秘匿化を実現することを目指しております。この目標に向けて、今後はより長距離での実証として国際宇宙ステーション(ISS)-地上間において最終実証を実施予定であり、今回の地上間模擬実証の成果はそのための大きな足掛かりとなります。
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2023年3月14日
凸版印刷とNICT、耐量子計算機暗号に対応したプライベート認証局を構築
保健医療用の長期セキュアデータ保管・交換システムで有効性を確認
インターネットのセキュリティを担保し、安全・安心な社会インフラ実現を目指す
凸版印刷株式会社(本社: 東京都文京区、代表取締役社長: 麿 秀晴、以下 凸版印刷)と国立研究開発法人情報通信研究機構(理事長: 徳田 英幸、以下 NICT)は、量子コンピュータでも解読が困難とされる耐量子計算機暗号(Post-Quantum Cryptography 以下PQC)に関し、連携して研究を進めています。
このたび、凸版印刷とNICTは、NICTが運用するテストベッド「保健医療用の長期セキュアデータ保管・交換システムH-LINCOS(Healthcare Long-Term Integrity and Confidentiality Protection System)」において、PQC対応のプライベート認証局を構築し、電子署名・電子証明書発行機能の追加と凸版印刷とNICTが開発した「PQC CARDR」との連携を通した改ざん検知機能を実装し、その有効性の検証に成功しました。
凸版印刷とNICTは、今後この技術を活用し、高秘匿情報を将来にわたって安全に流通、保管、利活用できる量子セキュアクラウド技術の社会実装を推進していきます。また、量子コンピューティング時代において、インターネット上で日常的に行われる電子メールやSNS、オンラインショッピング、IoT関連システム、コネクテッドカーなどのサイバーセキュリティを担保する基盤技術を構築し、安全・安心な社会インフラの実現を目指します。
なお、本研究の一部は、内閣府SIPプログラム「光・量子を活用したSociety 5.0実現化技術」(研究推進法人: 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構)によって実施されました。
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2022年12月21日
統合失調症の脳における「意味関係の乱れ」を発見
~AI技術の応用により脳活動から思考障害のメカニズムに迫る~
東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科精神行動医科学分野の髙橋英彦教授、松本有紀子助教、国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)の西田知史主任研究員、国立研究開発法人 産業技術総合研究所の林隆介主任研究員、大阪大学大学院生命機能研究科の西本伸志教授、京都大学大学院医学研究科脳病態生理学講座(精神医学)の村井俊哉教授の研究グループは、機能的磁気共鳴画像(fMRI)とAI技術を使って、さまざまなものの意味を表す脳活動パターンを解析し、統合失調症患者の脳内において、意味関係の乱れが生じていることを発見しました。本研究の成果は、患者の発話によらない客観的な診断・治療法の開発につながることが期待されます。本研究は、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)・戦略的国際脳科学研究推進プログラム「脳科学とAI技術に基づく精神神経疾患の診断と治療技術開発とその応用」(JP21dm0307008)ならびに独立行政法人科学技術振興機構・戦略的創造研究推進事業(JPMJCR18A5, JPMJPR20C6)、Moonshot型研究開発事業(JPMJMS2012, JPMJMS2295-11)、日本学術振興会科学研究費助成事業(20K21567)、上原記念生命科学財団の支援のもとで行われたもので、その研究成果は、国際科学誌Schizophrenia Bulletinに、2022年12月21日午前1時1分(グリニッジ標準時)にオンライン版で発表されます。
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2022年12月8日
量子セキュリティ技術と個人認証を連携させ、セキュアな個別化ヘルスケアユースケースの実証に成功
~多数の個人のゲノムデータを情報理論的に安全に保管・伝送し、個人の許諾に応じて活用できるシステムを構築~
株式会社東芝(以下、東芝)、東北大学東北メディカル・メガバンク機構(以下、ToMMo)、東北大学病院、国立研究開発法人情報通信研究機構(以下、NICT)は、量子暗号通信技術および秘密分散技術を活用した量子セキュリティ技術と個人認証技術を連携させて、多数の個人のゲノムデータを複数拠点に分散保管し、医療や健康管理に活用する個別化ヘルスケア(*1)システムを世界で初めて構築・実証しました(*2)。本技術により、情報理論的に安全で将来にわたり盗聴の脅威のない形でゲノムデータの漏洩・改ざん・喪失を防ぐことに加え、いつでも個人認証と連携して復号・復元(*3)して活用することが可能となり、個別化ヘルスケアの実現や普及への貢献が期待できます。
本研究の一部は、内閣府総合科学技術・イノベーション会議の戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)「光・量子を活用した Society 5.0 実現化技術」(管理法人:量子科学技術研究開発機構)により実施されました。
2022年11月17日
量子セキュアクラウドによる高速安全なゲノム解析システムの開発に成功
~従来不可能だった情報理論的安全で高速な処理を実現~
国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT、理事長: 徳田 英幸)、国立大学法人京都大学(総長: 湊 長博)、株式会社東芝(代表執行役社長 CEO: 島田 太郎)、株式会社ZenmuTech(代表取締役社長CEO: 田口 善一)は、量子セキュアクラウド(量子暗号ネットワーク上に秘密分散を組み合わせた分散ストレージシステム)にゲノム解析専用装置を装備し、全ゲノムデータの安全な伝送・保管・解析をリアルタイムで実施できるシステムの開発に成功しました。
安全なデータの解析手法として開発されている準同型暗号を用いたものやマルチパーティ計算では扱うことがほぼ不可能であった全ゲノムデータに対し、情報理論的安全な暗号化処理を施すことにより、ゲノム解析専用装置の処理速度を損なうことなく、情報理論的安全なデータ解析を実現しました。また、解析や治療に不必要な個人情報に対し、フィルタリング機能を実装しており、個人情報を保護しつつゲノム解析を実施できるシステムが完成しました。
今後、本技術は、超長期に保管が必要な患者のMRI画像データなどの安全な利活用を可能とするデータプラットフォームとして活用されることが期待されています。
なお、本成果は、2022年11月2日(水)に、英国科学雑誌「Scientific Reports」に掲載されました。
2022年10月29日
量子光のパルス波形を自在に制御する手法を開発
~光量子コンピュータの基幹となる「究極の量子光源」実現へ~
レーザーの発明が科学技術の発展に大きく貢献したように、優れた光源の開発は知的フロンティアを開拓する原動力になります。レーザー光を任意の パルス波形で出力する「任意波形発生器(AWG: Arbitrary Waveform Generator)」は現時点で最も汎用性の高い光源の一つですが、古典光であるレーザー光のみを扱うという性質上、 量子技術への応用には限界があります。量子技術の開発という現代科学の重要な課題に挑むには、 量子光を自在に出力する新しい光源が必要となるでしょう。
今回、国立大学法人東京大学(以下、東京大学)の高瀬寛助教と古澤明教授らは、日本電信電話株式会社(以下、NTT(エヌティーティー))、国立研究開発法人情報通信研究機構(以下、NICT(エヌアイシーティー))、国立研究開発法人理化学研究所の研究チームと共に、あらゆる量子光を所望のパルス波形で出力する光源である「量子任意波形発生器(Q-AWG: Quantum Arbitrary Waveform Generator)」を提唱し、その核心となる技術である量子光のパルス波形を自在に制御する手法を実現しました。
これにより、現在開発が進んでいる大規模光 量子コンピュータの作動に必要な、特殊なパルス波形を持つ量子光の生成に初めて成功しました。今回実現したシステムの拡張により量子任意波形発生器を開発すれば、光量子コンピュータをはじめとするさまざまな量子技術の実現に貢献する「究極の量子光源」になると期待されます。
本研究成果は、2022年10月28日(米国東部夏時間)に米国科学誌「Science Advances」のオンライン版に掲載されます。
掲載誌:「Science Advances」(オンライン版: 10月28日)
掲載論文名:Quantum arbitrary waveform generator
著者:Kan Takase*, Akito Kawasaki, Byung Kyu Jeong, Takahiro Kashiwazaki, Takushi Kazama, Koji Enbutsu, Kei Watanabe, Takeshi Umeki, Shigehito Miki, Hirotaka Terai, Masahiro Yabuno, Fumihiro China, Warit Asavanant, Mamoru Endo, Jun-ichi Yoshikawa, Akira Furusawa*
2022年10月27日
世界初、ワット級高出力動作の深紫外LED小型ハンディ照射機の開発に成功
~ワット級深紫外LEDハンディ機によって広範囲のウイルスを迅速に不活性化~
国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT、理事長: 徳田 英幸)未来ICT研究所の井上 振一郎室長らの研究グループは、8 W を超えるワット級の深紫外LEDハンディ照射機の開発に世界で初めて成功しました。発光波長265 nm帯の高強度深紫外LEDをマルチチップ実装しバッテリーで駆動させることで、どこにでも持ち運べる小型ハンディ機を実現しました。
今回開発した深紫外LEDハンディ照射機を用いて、豚コロナウイルス(PEDV)に対する定量的な照射効果を評価した結果、広範囲(直径100 cm内)のウイルスを極めて短い照射時間(30秒以下)で99.99 %以上不活性化できることを明らかにしました。
本成果は、ワット級高出力動作の深紫外LEDハンディ照射機により、広範囲のウイルスに対し、短時間の照射で極めて高いウイルス不活性化率を達成した世界初の実証例となります。病院や公共・商業施設、交通機関など幅広い場面での実用性・汎用性の高い殺菌応用が期待されるほか、これまで液体消毒薬剤の散布が難しかった場所の迅速な殺菌・消毒など、新型コロナウイルスの感染拡大防止や公衆衛生の向上に革新をもたらす技術として期待されます。
2022年10月24日
凸版印刷とNICT、世界初、米国政府機関選定の耐量子計算機暗号をICカードシステムに実装する技術を確立
保健医療用の長期セキュアデータ保管・交換システムで有効性を確認
凸版印刷株式会社(本社: 東京都文京区、代表取締役社長: 麿 秀晴、以下 凸版印刷)と国立研究開発法人情報通信研究機構(理事長: 徳田 英幸、以下 NICT)は、量子コンピュータでも解読が困難な耐量子計算機暗号(Post-quantum cryptography 以下PQC)を搭載したICカード「PQC CARDR」を世界で初めて開発し、NICTが運用するテストベッド「保健医療用の長期セキュアデータ保管・交換システム」における医療従事者のICカード認証と電子カルテデータへのアクセス制御に適用し、その有効性の検証に成功しました。
今回開発した「PQC CARDR」には、米国政府機関の国立標準技術研究所(以下 NIST)が2022年7月に標準技術候補として選定した次世代の電子署名方式「CRYSTALS-Dilithium(クリスタル・ダイリチアム)」を採用しました。「PQC CARDR」の開発では、PQCに関する先端技術を有するISARA Corporation(本社: カナダ・オンタリオ州、CEO: アツシ・ヤマダ、以下 ISARA)とも連携しています。
2022年10月4日
量子セキュアクラウドシステムを使って次世代レーザー設計の最適化の処理・高秘匿伝送・分散保管を実現
~次世代アクセラレータと連携した量子セキュアクラウドによりスマート製造分野における適用可能性を確認~
日本電気株式会社(以下 NEC)、国立研究開発法人情報通信研究機構(以下NICT)、国立大学法人京都大学、慶應義塾大学は、量子暗号技術と秘密分散技術を融合した量子セキュアクラウドシステムを適用した検証試験で、スマート製造分野での設計情報の最適化の処理・高秘匿伝送・分散保管に成功しました。
本検証試験では、量子計算技術を利用した次世代アクセラレータによって最適化された次世代レーザー(フォトニック結晶レーザー)の高度設計情報を、今回初めてインターネット回線を用いて離れた拠点間で安全に伝送できることを確認しました。
本検証試験の成功により、将来のスマート製造の核となると期待されるフォトニック結晶レーザーの重要な設計情報である最適設計パラメータを量子計算によって導く際に、量子セキュアクラウドシステムの適用可能性が実証できたと言え、今後、半導体産業や自動車産業など様々な製造分野への適用が期待されます。
なお、本検証試験は、内閣府が主導する戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)「光・量子を活用したSociety 5.0実現化技術」(管理法人:国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構)の一環として実施しました。
2022年9月16日
量子コンピュータに向けたハイエンドな国産超伝導ナノワイア単一光子検出器システムのフィールド実証に成功
大阪大学量子情報・量子生命研究センター、浜松ホトニクス株式会社(代表取締役社長: 晝馬 明)、国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT、理事長: 徳田 英幸)は共同で、最大12チャンネルの超伝導ナノワイア単一光子検出器(SNSPD)システムを試作、フィールド実証を行い、国産化への道筋をつけました。2050年の実現に向けた内閣府のムーンショット型研究開発事業目標6のゴールである誤り耐性型汎用量子コンピュータの実現へは、様々な方式の量子コンピュータが検討されていますが、量子コンピュータを実現するための重要な要素技術として、超高効率かつ超低暗計数が期待できるハイエンドなSNSPDシステムの実現が鍵となっています。このシステム内には、1つ1つの光子を検出する超伝導ナノワイア単一光子検出素子が多数に実装され、多チャンネルの光子検出システムとなります。今回は、NICTによって開発された超伝導ナノワイア単一光子検出素子を浜松ホトニクス株式会社で開発した超低温のSNSPDシステムに実装し、11個のSNSPDの動作を大阪大学において開発した量子もつれ光子対光源を利用して確認し、すべてのチャンネルが動作していることがフィールド(実際の使用環境)で実証されたものです。今後は、さらなる高性能化と多チャンネル化を進めて、量子コンピュータはもとより、量子ネットワークや量子センシングなどの量子2.0技術全般に貢献します。
本研究成果は、第83回応用物理学会秋季学術講演会にて、9月20日(火)9時15分(日本時間)に公開されます。(本講演会では発表内容に関する査読は一般には行われておりません。)
2022年9月1日
量子コンピュータに最適な量子演算シーケンスをシステマティックに見つける手法を開発
国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT、理事長: 徳田 英幸)は、慶應義塾大学(塾長: 伊藤 公平)、東京理科大学(学長: 石川 正俊)、東京大学(総長: 藤井 輝夫)と共同で、量子コンピュータに最適な量子演算シーケンスをシステマティックに見つける手法の開発に初めて成功しました。 量子コンピュータがタスクを実行するためには、量子演算シーケンスを書く必要がありますが、今まではコンピュータの操作者が既存の方法(レシピ)に基づいて独自のやり方で、最適だと思われる量子演算シーケンスを書いていました。今回開発したのは、最適制御理論(GRAPEアルゴリズム)を応用し、考えられる全ての量子演算シーケンスの中から、理論的に最適なものを特定するシステマティックな手法です。 この手法は、数十量子ビットを含む中規模の量子コンピュータの有用なツールになると期待され、近い将来、量子コンピュータのパフォーマンスの向上や環境負荷低減への貢献が期待されます。 本成果は、2022年8月23日(火)に、米国の科学雑誌「Physical Review A」に掲載されました。
掲載誌: Physical Review A
DOI: 10.1103/PhysRevA.106.022426
URL: https://journals.aps.org/pra/abstract/10.1103/PhysRevA.106.022426
掲載論文名:Numerical analysis of quantum circuits for state preparation and unitary operator synthesis
著者:Sahel Ashhab, Naoki Yamamoto, Fumiki Yoshihara, and Kouichi Semba
2022年5月30日
可視光で動作する高効率な有機電気光学ポリマー光変調器を開発
国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT、理事長: 徳田 英幸)未来ICT研究所は、可視光用の高効率な有機電気光学ポリマー(以下、EOポリマー)光変調器を開発しました。従来のEOポリマー光変調器は、近赤外光(波長1,550 nmなど)で動作できますが、可視光(波長380 nm?780 nm)では吸収損失が大きいため、光変調器として利用することができませんでした。NICTでは、可視光での吸収損失が小さく、光変調に必要な電気光学係数を持つEOポリマーを開発し、これを用いて微細加工技術を駆使して光変調器を作製し、波長640 nmの可視光(赤色)での動作実証に成功しました。実証した可視光用EOポリマー光変調器は、従来の近赤外光用EOポリマー光変調器よりも小型・低電圧で駆動でき、高効率です。 今回開発した可視光用EOポリマー光変調器は、立体ディスプレイやスマートグラスなど、次世代表示デバイスへの応用が期待されます。 なお、本成果は、2022年5月19日(木)に、科学雑誌「Optics Express」に掲載されました。
掲載誌:Optics Express
DOI: 10.1364/OE.4562711
URL: https://doi.org/10.1364/OE.456271
掲載論文名:Superiorly low half-wave voltage electro-optic polymer modulator for visible photonics
著者:Shun Kamada, Rieko Ueda, Chiyumi Yamada, Kouichi Tanaka, Toshiki Yamada, Akira Otomo
2022年3月18日
高出力深紫外LED(265nm帯)によりエアロゾル中の新型コロナウイルスの高速不活性化に成功
東京大学医科学研究所ウイルス感染部門の河岡義裕特任教授ならびに国立研究開発法人情報通信研究機構の井上振一郎室長らの研究グループは、小型・高出力、発光波長265nm帯の深紫外発光ダイオード(DUV-LED)を用いることで液体中ならびにエアロゾル中の新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)を迅速に不活性化できることを実証しました。
なお、本成果は2022年3月17日に米国科学雑誌「mSphere」のオンライン速報版で公開されました。
掲載誌:mSphere(3月17日オンライン版)
DOI: 10.1128/msphere.00941-21
URL: https://doi.org/10.1128/msphere.00941-21
掲載論文名:A 265-Nanometer High-Power Deep-UV Light-Emitting Diode Rapidly Inactivates SARS-CoV-2 Aerosols
著者: Hiroshi Ueki, Mutsumi Ito, Yuri Furusawa, Seiya Yamayoshi, Shin-ichiro Inoue*, and Yoshihiro Kawaoka*
2022年3月15日
走化性を持つバクテリアを用いた新たな化学情報識別技術を開発
~大腸菌の化学物質センシング能力と機械学習を活用~
国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT、理事長: 徳田 英幸)未来ICT研究所バイオICT研究室の田中裕人主任研究員、小嶋寛明室長らの研究グループは、法政大学 川岸郁朗教授、曽和義幸教授、東京大学 岡田真人教授らと共同で、走化性を持つバクテリアを用いた化学情報識別技術を開発しました。 単細胞のバクテリアも、化学物質をセンシングする能力を持っています。その中でも注目すべきものが、周囲の環境中に存在する多様な化学物質に応答して動きを変化させる走化性と呼ばれる性質です。研究グループでは、走化性を持つバクテリアのうち、多くの知見が蓄積されている大腸菌を光学顕微鏡システムで観察して走化性の変化を自動で高精度に数値化する方法を開発し、数値化したデータを機械学習によって解析することで、大腸菌の振る舞いから周囲の化学情報を味見するように識別することに成功しました。 将来的には、私たちを取り囲む様々な化学物質を識別し、それらが生き物や人に及ぼす影響を定量的に評価するケミカルバイオセンサーの開発につなげることが期待できます。 本成果は、2022年2月22日(火)(日本時間)に、英国科学雑誌「Scientific Reports」に掲載されました。
掲載誌: Scientific Reports
DOI: 10.1038/s41598-022-06732-4
URL: https://doi.org/10.1038/s41598-022-06732-4
掲載論文名: Bayesian-based decipherment of in-depth information in bacterial chemical sensing beyond pleasant/unpleasant responses
著者: Hiroto Tanaka, Yasuaki Kazuta, Yasushi Naruse, Yukihiro Tominari, Hiroaki Umehara, Yoshiyuki Sowa, Takashi Sagawa, Kazuhiro Oiwa, Masato Okada, Ikuro Kawagishi, Hiroaki Kojima
2022年3月11日
米国総合科学誌Scienceに論文掲載
DNAナノチューブのレール上をプログラムどおりに自走するナノマシンを開発
~ナノメートルサイズの「荷物」を自動的に仕分ける分子輸送システムを実現~
国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT、理事長: 徳田 英幸)未来ICT研究所の指宿 良太 研究員と古田 健也 主任研究員らの研究グループは、兵庫県立大学と共同で、DNAナノチューブのレール上をプログラムどおりに動くナノマシンを開発し、新たな分子輸送システムを実現しました。 開発したのは天然の生物分子モーターをベースにしたナノマシンで、DNAナノチューブのレール上の「DNA塩基配列で書かれた命令」を読み取り、この命令どおりにレールに沿って自走します。さらに、異なる命令を読み取る複数のナノマシンを開発し、レールに「右に進め」「左に進め」などの命令を埋め込むことで、ナノメートルサイズの「荷物(分子)」をプログラムされたとおりに仕分ける分子輸送システムを実現しました。 今回、天然のレールよりも大幅に制御しやすいDNAナノチューブ上を自走するナノマシンを創出できたことで、生物を模倣した情報処理システムの研究にブレークスルーをもたらす可能性があります。 なお、本成果は、米国総合科学誌「Science」 2022年3月11日号に発表されました。
掲載誌: Science 2022年3月11日号
DOI: 10.1126/science.abj5170
URL: https://doi.org/10.1126/science.abj5170
掲載論文名: Programmable molecular transport achieved by engineering protein motors to move on DNA nanotubes
著者: 指宿良太、森下達矢、古田茜、中山慎太郎、吉雄麻喜、小嶋寛明、大岩和弘、古田健也
2022年1月14日
大容量金融取引データの量子暗号による高秘匿通信・低遅延伝送の検証実験に成功
野村ホールディングス株式会社(代表執行役社長 グループCEO:奥田 健太郎、以下 野村HD)、野村證券株式会社(代表取締役社長:奥田 健太郎、以下 野村證券)、国立研究開発法人情報通信研究機構(理事長:徳田 英幸、以下 NICT)、株式会社東芝(代表執行役社長 CEO:綱川 智、以下 東芝)、日本電気株式会社(代表取締役 執行役員社長 兼 CEO:森田 隆之、以下 NEC)は、今後の量子暗号技術の社会実装に向けて、高速大容量かつ低遅延なデータ伝送が厳格に求められる株式取引業務をユースケースとした量子暗号技術の有効性と実用性に関する共同検証を2020年12月に開始し、実際の株式トレーディング業務において標準的に採用されているメッセージ伝送フォーマット(FIXフォーマット)に準拠したデータを大量に高秘匿伝送する際の、低遅延性及び大容量データ伝送に対する耐性について国内初の検証を行いました。その結果、今回の想定ユースケースにおいては、①量子暗号通信を適用しても従来のシステムと比較して遜色のない通信速度が維持できること、②大量の株式発注が発生しても暗号鍵を枯渇させることなく高秘匿・高速暗号通信が実現できることの2点を確認することができました。この検証の成功により、今後、金融以外の分野も含めた量子暗号技術の社会実装の加速が期待されます。
なお、本共同検証は、内閣府が主導する戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)「光・量子を活用したSociety 5.0実現化技術」(管理法人:国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構)の一環として実施しました。
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2021年9月20日
シリコン基板を用いた窒化物超伝導量子ビットの開発に成功
~超伝導量子ビットの大規模集積化に向けた新しい材料プラットフォームを提案~
国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT、理事長: 徳田 英幸)は、国立研究開発法人産業技術総合研究所(理事長: 石村 和彦)、国立大学法人東海国立大学機構名古屋大学(総長: 松尾 清一)と共同で、超伝導材料にアルミニウムを使用しない超伝導量子ビットとして、シリコン基板上のエピタキシャル成長を用いた窒化物超伝導量子ビットの開発に世界で初めて成功しました。この量子ビットは、超伝導体として超伝導転移温度が16 K(-257 ℃)の窒化ニオブ(NbN)を電極材料とし、ジョセフソン接合の絶縁層に窒化アルミニウム(AlN)を使用しエピタキシャル成長させた全窒化物の素子であり、ノイズ源である非晶質の酸化物を一切含まない新しい超伝導材料から成る新型量子ビットです。今回、この新材料量子ビットをシリコン基板上に実現することで、平均値としてのエネルギー緩和時間(T1)が16マイクロ秒と位相緩和時間(T2)が22マイクロ秒のコヒーレンス時間が得られました。これは、従来の酸化マグネシウム基板上の窒化物超伝導量子ビットの場合と比べてT1は約32倍、T2は約44倍に相当します。
超伝導体として窒化ニオブを使うことで、より安定に動作する超伝導量子回路の構築が可能となり、量子演算の基本素子として、量子コンピュータや量子ノードの開発への貢献が期待されます。今後、回路構造や作製プロセスの最適化に取り組み、更なるコヒーレンス時間の延伸、大規模集積化の実現に向けて研究開発を進めていく予定です。
なお、本成果は、2021年9月20日(月)18:00(日本時間)に、世界的に権威のあるNature Research出版社の専門誌「Communications Materials」に掲載されました。
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2021年8月26日
量子暗号通信技術と秘密分散技術を活用しゲノム解析データの分散保管の実証に成功
~ゲノム研究・ゲノム医療分野における安全なデータ管理に貢献~
株式会社東芝(以下、東芝)、東北大学東北メディカル・メガバンク機構(以下、ToMMo)、東北大学病院、国立研究開発法人情報通信研究機構(以下、NICT)は、量子暗号通信技術と秘密分散技術を組み合わせたデータ分散保管技術を開発し、大規模ゲノム解析データ(*1)を複数拠点に分散して安全にバックアップ保管する実証実験に世界で初めて(*2)成功しました。本技術により、長期にわたり機密漏洩やデータ改ざんを防ぐバックアップデータ保管が可能となり、ゲノム研究・ゲノム医療分野における安全なデータ管理への貢献が期待できます。
本研究は、内閣府総合科学技術・イノベーション会議の戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)「光・量子を活用した Society 5.0 実現化技術」(管理法人:量子科学技術研究開発機構)により実施されました。東芝、ToMMo・東北大学病院、およびNICTは、本成果の技術と実証内容の詳細を、8月23日?27日に開催される国際会議QCrypt 2021(11th International Conference on Quantum Cryptography)で発表します。
本成果は、2021年8月2日(月)に、スイスの国際学術誌「Frontiers in Neuroscience」に掲載されました。
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2021年8月19日
香りでスピード感が変わることを発見表
~レモンは遅い、バニラは速い~
国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT、理事長: 徳田 英幸) 未来ICT研究所 脳情報通信融合研究センター(CiNet)の對馬淑亮主任研究員らは、心理物理実験とfMRI実験によって、香りで映像のスピード感が変わる新しいクロスモーダル現象を発見しました。今回発見したのは、ヒトはレモンの香りが伴う時は、映像が遅く、バニラの香りが伴う時は、映像が速く見えるという現象です。また、香りで感情や記憶といった高次の脳機能ではなく、低次の感覚(映像のスピード感)が変わることを発見したことは世界で初めての成果です。
本成果は、視覚と嗅覚の新たなクロスモーダル現象の発見として学術的意義があるだけでなく、クロスモーダル現象を活かしたVRやエンターテインメントなどへの様々な産業応用も期待されます。
本成果は、2021年8月2日(月)に、スイスの国際学術誌「Frontiers in Neuroscience」に掲載されました。
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2021年8月5日
パブロフ条件反射の正体を発見
~司令ニューロンが操られることによって条件反射は起こる~
国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT、理事長: 徳田 英幸)の吉原 基二郎 上席研究員と櫻井 晃 主任研究員らのグループは、未来ICT研究所神戸フロンティア研究センターにおいて、パブロフの条件反射の脳内での仕組みを解明しました。以前当グループによって発見されたショウジョウバエ脳内の摂食行動を引き起こす司令ニューロン(Nature, 2013)が、元々はつながっていなかった刺激に操られるようになって、条件反射が起こっていました。また、確立した条件反射の実験系により、細胞同士が記憶のためにつながる過程のリアルタイム観察が初めて可能になりました。つながり形成の仕組みを脳の記憶の基礎過程として知ることにより、脳の記憶の仕組みをまねた新しい知的情報処理のデザインを得ることが期待できます。
本成果は、2021年8月5日(木)0時(日本時間)に、米国科学雑誌「Current Biology」に掲載されました。
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2021年7月20日
簡易アンケートでCM視聴者の脳反応の個人差を予測
~視聴者に与える好感度を予測し、効果的なマーケティングの実現へ~
芝浦工業大学(東京都港区/学長 山田純)工学部情報工学科の新熊亮一教授、国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT、東京都小金井市/理事長 徳田英幸)脳情報通信融合研究センター(CiNet)の西田知史主任研究員、西本伸志特別招へい研究員らの研究グループは株式会社NTTデータと共同で、簡単なアンケートの回答からCMを視聴中に脳が反応するパターンの個人差(類似度)を予測することに成功しました。この成果は工学分野でトップクラスのジャーナルの「IEEE Transactions on Systems, Man, and Cybernetics: Systems」 に、7月16日に掲載されました。
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2021年5月13日
日々の感謝を記録することが学習モチベーションを向上させる
~2週間の「感謝日記」の効果は、3か月後でも維持される~
国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT、理事長:徳田 英幸)と立命館大学(学長:仲谷 善雄)は共同で、日常生活の中で起こる様々な出来事や、その対象となる人々に感謝したことを記録することにより、学習モチベーションが向上することを、クラウドシステムを使って実験的に明らかにしました。
今回、NICT未来ICT研究所脳情報通信融合研究センター(CiNet)のNorberto Eiji Nawa主任研究員と、立命館大学グローバル教養学部の山岸典子教授は、クラウドシステムを独自に開発し、日々感謝した事項を記録する(「感謝日記」)とともに、学習モチベーションを含む心理的変化を長期間にわたり計測することを実現しました。その結果、2週間にわたって、日々感謝を記録することが、学習モチベーションの向上に影響を与えること、さらに、その効果が3か月後まで維持されることを明らかにしました。本成果は、教育現場における、「感謝日記」に基づく学習モチベーション向上プログラムの開発などに役立つと期待されます。
本研究成果はBMC Psychologyに日本時間5月13日(木)21時に掲載されます。
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2021年4月1日
Beyond 5G/6G及び量子ネットワークに関するホワイトペーパーの公表
国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT、理事長: 徳田 英幸)は、Beyond 5G/6G及び量子ネットワークに関して、国内外の研究機関などと連携し、研究開発を加速するため、Beyond 5G/6G及び量子ネットワークの技術が進展することにより実現することが想定される社会像・ユースケースや、それを実現するために必要な要素技術・研究開発ロードマップなどをまとめたホワイトペーパーを作成しましたので公表します。 ・・・read more
2021年3月1日
脳の短期記憶のスイッチメカニズムを発見
~カルシウム結合タンパク質シナプトタグミン7が脳の記憶の初期段階の大きさを決める~
国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT、理事長: 徳田 英幸) 未来ICT研究所の吉原 基二郎 総括研究員のグループは、脳の短期記憶の増減のスイッチメカニズムを発見しました。
本実験では、マサチューセッツ工科大学(MIT)において作成されたシナプトタグミン7という分子の突然変異体を利用し、シナプトタグミン7の欠損及び発現調節の実験から、記憶の始まりを担う短期シナプス可塑性であるシナプス促通がシナプトタグミン7の発現量に応じて連続的に増大したり減少したりすることを発見しました。今まで、短期シナプス可塑性の分子機能はほとんど理解されていなかったので、その分子メカニズムが明確に示されたのは今回初めてのことです。
なお、本成果は、2021年2月18日(木)に、英国科学雑誌「Scientific Reports」に掲載されました。
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2021年2月4日
Beyond 5Gに資する低環境負荷な物質・デバイス商用化技術の創出
~Society 5.0 for SDGsに資するキーテクノロジー ~
次世代無線通信システム(Beyond 5G)は、来るべき社会、持続可能性を担保しつつ、必要な人に必要なモノ・サービスが必要なだけ届く快適な社会(Society 5.0 for SDGs、一般社団法人 日本経済団体連合会(経団連)提唱)の基盤インフラとなるものです。
本研究グループは、グラフェンを用いた低環境負荷かつ超高速なデバイスの革新的な製造法を創出しました。本法は世界最高水準品質を保ちつつコストを1/100以下にすることを可能にし、さらに、グラフェン・デバイスが従来抱えていた弱点を克服することでBeyond 5Gに不可欠なTHz帯で動作するデバイスの商用化を可能にするものです。
本研究は、東北大学電気通信研究所の吹留博一准教授らの研究グループと信越化学工業、高エネルギー加速器研究機構物質構造科学研究所、高輝度光科学研究センター、情報通信研究機構(NICT)との産官学連携共同研究の成果です。
本研究成果は、2月4日にMDPIの科学誌「Nanomaterials」に掲載されます(オープン・アクセス)。・・・read more
2020年12月21日
金融分野のサイバーセキュリティ強化に向けた量子暗号技術活用の共同検証を開始
~株式取引に代表される大容量・低遅延通信への耐性を検証~
野村ホールディングス株式会社(代表執行役社長 グループCEO 奥田 健太郎、以下 野村HD)、野村證券株式会社(代表取締役社長 森田 敏夫、以下 野村證券)、国立研究開発法人情報通信研究機構(理事長 徳田 英幸、以下 NICT)、株式会社東芝(代表執行役社長 CEO 車谷 暢昭、以下 東芝)、日本電気株式会社(代表取締役 執行役員社長 兼 CEO 新野 隆、以下 NEC)は、金融分野におけるデータ通信・保管のセキュリティ強化に向けて、量子暗号技術の有効性と実用性に関する国内初の共同検証を12月より開始します。 なお、本共同検証は、内閣府が主導する戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)「光・量子を活用したSociety 5.0実現化技術」(管理法人:国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構)の一環として実施します。・・・read more
2020年12月16日
極限環境で利用可能な無線通信向け酸化ガリウムトランジスタを開発
~優れた高周波デバイス特性を有し、世界最高の最大発振周波数27 GHzを達成~
国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT、理事長: 徳田 英幸)は、未来ICT研究所 グリーンICTデバイス先端開発センターにおいて、優れた高周波デバイス特性を有する無線通信向けの酸化ガリウムトランジスタを開発し、世界最高の最大発振周波数27 GHzを達成しました。
これまで、酸化ガリウムトランジスタは、パワーデバイス用途が知られており、無線通信用途の研究はほとんど行われていませんでした。しかし、酸化ガリウムトランジスタは、材料特性上、高温、放射線、腐食などに対して高い耐性を持つことから、従来の半導体デバイスでは著しい性能劣化のために継続的な使用が難しかった極限環境下での無線通信機器への応用が期待されます。・・・read more
2020年10月28日
100年単位の超長期情報保管にも耐えるストレージシステムを開発
~物理乱数を用いた秘密分散で高度に安全な保護機能を提供~
株式会社ZenmuTech(代表取締役:岡積 正夫)と株式会社ワイ・デー・ケー(YDK、代表取締役:坂本 洋子)、国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT、理事長:徳田 英幸)は、100年単位の超長期情報保管にも耐える「データを無意味化して格納するストレージシステム」のプロトタイプを開発しました。 世代をまたいで影響を受けるような医療情報や、変更することができない生体情報などの個人情報の保存には、超長期にわたってこれまでよりも高いセキュリティが求められます。今回開発したシステムを、PCやサーバおよび複合機などのストレージとして利用することで、来たる量子コンピュータの時代にも暗号解読の脅威から解放されるデータ保管(ストレージシステム)ソリューションを実現できます。・・・read more
2020年10月22日
量子暗号を用いて電子カルテを秘匿し、 伝送・秘密分散バックアップを行う実証実験に成功
~複数の医療機関間の安全かつリアルタイムでの相互参照を実現~
日本電気株式会社(以下 NEC)、国立研究開発法人情報通信研究機構、株式会社ZenmuTechは、医療分野への量子暗号の適用に向け、NECが提供する電子カルテシステムのユーザである東京都内の医療機関の協力のもと、SS-MIX標準化ストレージに対応した電子カルテのサンプルデータを量子暗号で伝送そのものを秘匿し、広域ネットワーク経由で秘密分散技術を用いてバックアップを行うシステムの実証実験に成功しました。また、本システムを活用することで、高知県・高知市病院企業団立高知医療センターとの電子カルテのサンプルデータの相互参照にも成功しました。・・・read more
2020年10月19日
凸版印刷、NICT、QunaSys、ISARAの4者が連携
量子セキュアクラウド技術の確立に向けて始動
~量子コンピューティング技術と量子暗号技術で安全なデータ流通/保管/利活用を実現~
凸版印刷株式会社(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:麿 秀晴、以下 凸版印刷)、国立研究開発法人情報通信研究機構(理事長:徳田 英幸、以下 NICT)、株式会社QunaSys(本社:東京都文京区、代表:楊 天任、以下 QunaSys)及びISARA Corporation(本社:オンタリオ州・カナダ、CEO:Scott Totzke、以下 ISARA)は、高度な情報処理と安全なデータ流通/保管/利活用を可能とする量子セキュアクラウド技術の確立に向け4者連携を開始します。・・・read more
2020年9月1日
未開拓のテラヘルツ領域を拓く、高感度・広IF帯域ヘテロダイン受信機を開発
~磁性材料を用いたNICT独自の超伝導素子構造によって実現~
国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT、理事長: 徳田 英幸)は、磁性材料を用いた独自の超伝導ホットエレクトロンボロメータミキサ(HEBM)を開発し、2 THz帯ヘテロダイン受信機の低雑音化と広IF帯域化を実現しました。これは、本技術が、従来困難であったHEBMの極微細化を可能にしたことにより、実現したものです。今回作製した2 THz帯HEBMは、量子雑音限界の6倍程度である約570 K(DSB)の低雑音性能と、従来構造のHEBMと比べ約3 GHz拡大した約6.9 GHzの広IF帯域特性を達成しました。・・・read more
2020年3月12日
がん細胞が血管網に似た構造を造る仕組みを解明
~がん増殖の鍵となる細胞間の“力”の発見~
大阪大学データビリティフロンティア機構の中野賢特任准教授(常勤)の研究グループは、大阪大学大学院生命機能研究科平岡泰教授の研究グループおよび国立研究開発法人情報通信研究機構原口徳子主任研究員の研究グループとの共同研究で、がん細胞の集団が自己集合して血管網に似たネットワーク構造を形成することを、試験管内で再現することに成功しました。・・・read more
2020年3月11日
細胞骨格の変形と細胞内物質輸送速度の関係性を解明
~神経疾患の病理解明に新たな道筋~
北海道大学大学院理学研究院のナスリン サエダ・ルバイヤ博士研究員、角五彰准教授、佐田和己教授、情報・システム研究機構国立遺伝学研究所の鳥澤嵩征助教、国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)の大岩和弘主管研究員らの研究グループは、細胞骨格「微小管」に力学ストレスを加えられる装置を新たに開発しました。その装置を用い微小管に力学ストレスを加え変形させると、細胞活動の維持に必須となっている物質輸送速度などが変化することを見出しました。・・・read more
2020年1月28日
衣服越しに心拍を非接触計測できる技術を開発
~テラヘルツ波の走査から検波までの機能を導波路構造上で集積実装~
慶應義塾大学理工学部物理情報工学科の門内靖明専任講師のグループは、国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)の笠松章史上席研究員、渡邊一世主任研究員と共同で、テラヘルツ波をプローブとする小型・高分解能のレーダを開発し、それを用いて人の胸部表面に現れる心拍の動きを衣服越しに非接触計測できることを実証しました。・・・read more
2020年1月23日
モータータンパク質は種類により協働性が異なることを発見
~分子を自在に並べる技術により生体分子モーターの協働性を計測~
京都大学大学院工学研究科 マイクロエンジニアリング専攻の横川隆司 教授、金子泰洸ポール 同教務補佐員らの研究グループは、国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)未来ICT研究所の大岩和弘主管研究員、古田健也同主任研究員と共同し、モータータンパク質(以下、モーター)であるキネシン分子を自在に配置する手法を開発しました。・・・read more
2019年12月12日
秘密分散と秘匿通信技術を用いた電子カルテ保管・交換システムを開発
~南海トラフ地震等の災害想定実験において、医療データを迅速に復元~
国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT、理事長: 徳田 英幸)と高知県・高知市病院企業団立高知医療センター(病院長: 島田 安博)及び連携協力機関から成るチームは、秘密分散技術と秘匿通信技術を組み合わせることにより、電子カルテデータのセキュアなバックアップと医療機関間での相互参照、災害時の迅速なデータ復元を可能とするシステムを開発しました。・・・read more
2019年12月10日
生命の遺伝情報継承に重要な相同染色体対合を促進する仕組みを発見
~染色体異常に起因するダウン症や流産など将来における原因解明へ期待~
国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT、理事長: 徳田 英幸)と国立大学法人大阪大学(大阪大学、総長: 西尾 章治郎)は共同で、分裂酵母において、遺伝情報を組み換える際に行われる相同染色体の対合という、生命の存続、継承や進化に極めて重要な意味を持つ生命現象を確実かつ安全に行う仕組みを新たに発見しました。・・・read more
2019年10月29日
生体認証データの高秘匿・高可用性な伝送・保管を量子暗号を用いて実現
~ナショナルチームのスポーツ選手用電子カルテなどへの応用~
国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT、理事長: 徳田 英幸)と日本電気株式会社(NEC、代表取締役 執行役員社長 兼 CEO: 新野 隆)は共同で、顔認証システムでの特徴データの伝送と、特徴点などの認証用参照データの保存を、量子暗号と(k,n)閾値秘密分散(以下、秘密分散)を用いて構築し、認証時の高い秘匿性・可用性を持ったシステムを開発し、実証に成功しました。・・・read more
2019年7月2日
国際標準化機関ITU-Tで初の量子鍵配送ネットワークに係る勧告が成立
~秘匿性の高い量子暗号通信サービスの実用化と普及を加速~
NICT、日本電気株式会社(NEC、代表取締役 執行役員社長 兼CEO: 新野 隆)、株式会社東芝(東芝、代表執行役社長: 綱川 智)が開発してきた量子鍵配送ネットワーク技術の成果を盛り込んだ国際標準勧告が、2019年6月28日ジュネーブにて開催されたITU-T SG13会合にて、Y.3800(量子鍵配送をサポートするネットワークのフレームワーク)勧告として承認されました。・・・read more
2019年6月11日
受精卵の中で人工細胞核構造の構築に世界で初めて成功
~細胞核が形成される仕組みの一端を明らかに~
近畿大学生物理工学部(和歌山県紀の川市)、NICT、大阪大学(大阪府吹田市)の研究グループは、生命の基本設計図である「DNA」に着目して、DNAを結合させた微小ビーズ(DNAビーズ)をマウス受精卵の細胞質内に導入することでどのような生命現象が起こるかを観察し、人工的に細胞核構造を造り出すことに世界で初めて成功しました。・・・read more
2019年6月7日
定説を覆す発見! 分裂酵母が独特の核膜孔複合体アウターリング構造を持つことを解明
~真核生物の進化の解明につながる発見~
大阪大学大学院生命機能研究科の淺川東彦准教授、平岡泰教授の研究グループは、NICT未来ICT研究所の原口徳子主任研究員の研究グループおよび大阪大学大学院理学研究科の小布施力史教授の研究グループとの共同研究で、分裂酵母の核膜孔複合体のアウターリング構造が、他の生き物で従来知られている構造とは全く異なっていることを世界で初めて明らかにしました。・・・read more
2019年3月11日
タンパク質がゴルジ体内を輸送される仕組みが明らかに
~成熟する槽内に形成されるゾーンを移動しながら輸送される~
理化学研究所(理研)光量子工学研究センター生細胞超解像イメージング研究チームの黒川量雄専任研究員、和賀美保テクニカルスタッフII、須田恭之客員研究員、中野明彦チームリーダー(光量子工学研究センター副センター長)、NICTの小坂田裕子技術員、信藤(糀谷)知子技術員(研究当時)、原口徳子主任研究員の共同研究チームは、細胞の中でタンパク質がゴルジ体内を輸送される仕組みを明らかにしました。・・・read more
2019年2月19日
毎秒80ギガビットのデータ伝送を可能にするシリコンCMOS集積回路を用いた300ギガヘルツ帯ワンチップトランシーバの開発に成功
国立大学法人広島大学、NICT、パナソニック株式会社は共同で、シリコンCMOS集積回路により300ギガヘルツ帯を用いて毎秒80ギガビットのデータ伝送を可能にするワンチップトランシーバの開発に世界で初めて成功しました。従来に比べデータ伝送速度を大幅に向上させるとともに、実用化に必須の「ワンチップ化」を達成したことで、300ギガヘルツ帯無線通信の実用化がより近付きました。・・・read more
2019年1月11日
ショウジョウバエの脳の性別を決める分子の仕組みを解明
~オス化の暗号分子の一部を切り取るとメス化の暗号分子に早変わりする~
NICT 未来ICT研究所は、ショウジョウバエの神経細胞にオスの特徴を作り出す“オス化の暗号タンパク質”を発見しました。さらに、このタンパク質の末端が切断されると、オスではなくメスの特徴を作る働きに切り替わることを明らかにしました。・・・read more
2018年12月12日
世界初、イオン注入ドーピングを用いた縦型酸化ガリウム(Ga2O3)トランジスタ開発に成功
~汎用性の高いデバイスプロセスを採用、低コストGa2O3パワーデバイス量産への道筋~
NICT 未来ICT研究所 グリーンICTデバイス先端開発センター 東脇 正高 センター長らは、国立大学法人東京農工大学(学長: 大野 弘幸) 大学院工学研究院応用化学部門 熊谷 義直 教授、村上 尚 准教授らとの共同研究により、イオン注入ドーピング技術を用いた縦型酸化ガリウム(Ga2O3) トランジスタの開発に成功しました。・・・read more
2018年10月23日
超伝導検出器を使った全固体ワンチップの中性子高速イメージング装置を開発
・空間分解能は22マイクロメーターを達成
・既存の中性子検出器と動作原理が全く異なる装置
・より高精度な非破壊検査に役立つ可能性
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2018年10月19日
トポロジカル絶縁体中のスピン電流の光制御実証に成功
大阪府立大学(学長:辻 洋)の大学院理学系研究科 竹野広晃(博士後期課程3年)、溝口幸司教授、およびNICTの齋藤伸吾主任研究員らの研究グループは、トポロジカル絶縁体薄膜に、電場や磁場をかけずに、光を照射するだけで、スピン電流(スピン偏極した光電流)を生成させることに成功しました。さらに、照射する光の偏光を操作することで、スピン電流の方向が制御可能であることを実証しました。・・・read more
2018年5月24日
世界初!冷却原子量子メモリを光ファイバー通信で動作
~長距離量子ネットワークの新技術~
大阪大学大学院基礎工学研究科の山本俊准教授および生田力三助教らの研究グループは、大阪大学 井元信之名誉教授、NTT物性科学基礎研究所 向井哲哉主任研究員、NICT未来ICT研究所 三木茂人主任研究員、東京大学大学院工学系研究科 小芦雅斗教授らと共に、量子メモリとなる冷却原子と光ファイバーネットワークにアクセス可能な通信波長帯光子の量子ネットワークの実証に世界で初めて成功しました。・・・read more
2018年5月23日
世界初!トラップイオンを使った長距離光子配送を達成
~長距離量子情報通信に新しい可能性~
大阪大学大学院基礎工学研究科の山本俊准教授および生田力三助教らの研究グループは、大阪大学 井元信之名誉教授、NICT量子ICT先端開発センター 早坂和弘研究マネージャーおよび英サセックス大学のマティアス・ケラー教授らと共にトラップされた単一イオンからの光子を光ファイバーで長距離に送信することに世界で初めて成功しました。・・・read more
2018年5月22日
超解像顕微鏡のための高精度色収差補正ソフトウェアを開発・無償公開
NICTは、未来ICT研究所において、超解像顕微鏡のための高精度色収差補正ソフトウェアを開発しました。大阪大学、オックスフォード大学と共同で開発した本技術により、生命科学に用いる高度な蛍光顕微鏡における色収差補正精度を従来から約10倍向上させ、3次元で約15 nm(nmは1 mmの百万分の1)の精度を達成しました。・・・read more
2018年5月8日
光子との相互作用を使った超伝導人工原子の自在なエネルギー制御が可能に
~共振回路中のマイクロ波光子との相互作業による巨大なエネルギーの変化~
NICT未来ICT研究所の吉原文樹主任研究員・仙場浩一上席研究員らの研究グループは、日本電信電話株式会社(NTT、代表取締役社長: 鵜浦 博夫)、カタール環境エネルギー研究所(QEERI、常任理事: Dr. Marc Vermeersch)、東京医科歯科大学(学長: 吉澤 靖之)、早稲田大学(総長: 鎌田 薫)と共同して、光子と相互作用した人工原子の極めて大きなエネルギー変化(光シフト)の生成と観測に世界で初めて成功しました。・・・read more
2017年11月15日
窒化ニオブを用いた磁性ジョセフソン素子を世界で初めて実現
~超伝導量子コンピュータの新たな基本素子として期待~
NICTの山下太郎主任研究員らの研究グループは、今回、世界で初めて、窒化ニオブを用いた窒化物超伝導体による新奇な磁性ジョセフソン素子の開発に成功しました。・・・read more
2017年7月11日
超小型衛星による量子通信の実証実験に世界で初めて成功
NICTは、超小型衛星(SOCRATES)を使い、東京都小金井市にあるNICT光地上局との間で、光子一個一個のレベルで情報をやり取りする量子通信の実証実験に成功しました。・・・read more
2017年4月4日
150mW 超(発光波長265nm)世界最高出力の深紫外LED の開発に成功
~殺菌、医療から環境、ICT 分野まで従来技術の革新に期待~
NICT 未来ICT研究所において、深紫外光ICTデバイス先端開発センター 井上 振一郎 センター長らの研究グループは、光出力150mWを超える世界最高出力の深紫外LED(発光ダイオード)の開発に成功しました。・・・read more
2017年3月22日
ドローンによる動画データの完全秘匿中継技術を開発
NICTの佐々木雅英 主管研究員を中心とする量子ICT先端開発センターのメンバーは、株式会社プロドローン(プロドローン、代表取締役: 河野 雅一)と共同で、撮影ドローンが写した動画データを、中継ドローンを介して、電波が直接届かない場所であるカバレッジホールまで完全秘匿化したまま、無線局免許不要の市販Wi-Fi機器を用いて伝送する技術を開発しました。・・・read more
2017年2月6日
シリコンCMOS集積回路を用いた300GHz帯単一チャンネルの伝送速度が毎秒105ギガビットのテラヘルツ送信機の開発に成功
国立大学法人広島大学、NICT、パナソニック株式会社は共同で、シリコンCMOS集積回路により、300GHz帯単一チャネルで毎秒105ギガビットという、光ファイバに匹敵する※1性能のテラヘルツ送信機の開発に世界で初めて成功しました。・・・read more
2016年11月17日
量子メモリへの書込・読出に光通信で成功!
大阪大学大学院基礎工学研究科 井元信之教授、NTT物性科学基礎研究所 向井哲哉主任研究員、情報通信研究機構(NICT)未来ICT研究所 三木茂人主任研究員および東京大学大学院工学系研究科 小芦雅斗教授の研究グループは、量子情報処理に必要な量子メモリへの書込・読出を光通信技術を利用して実現することに世界で初めて成功しました。・・・read more
2016年11月15日
自然界にある分子モジュールから人工的な分子モーターの創出に初めて成功
未来ICT研究所の古田 健也 主任研究員らの研究グループは、世界で初めて、人為的な設計によって新たな生物分子モーターを創り出すことに成功しました。・・・read more
2016年10月24日
超伝導ナノワイヤ単一光子検出器の波長特性を自在に設計する新手法を開発
NICTは、超伝導ナノワイヤ単一光子検出器(SSPD)の波長特性を自在に設計可能な新しい光学構造設計手法の開発に成功しました。・・・read more
2016年10月11日
光子と人工原子から成る安定な分子状態を発見
~光と物質を操る量子技術に新たな可能性を拓く~
NICTは、日本電信電話株式会社(NTT、代表取締役社長: 鵜浦 博夫)、カタール環境エネルギー研究所(QEERI、常任理事: Dr. Marwan Khraisheh)と共同で、超伝導人工原子とマイクロ波光子の相互作用の強さを系統的に変え分光実験を行った結果、人工原子に光子がまとわり付いた分子のような新しい最低エネルギー状態(基底状態)が存在することを発見しました。・・・read more
2016年7月27日
微小管-タンパク質モータ相互作用によるネットワーク構築とその数理モデル化に成功
NICT 未来ICT研究所の大岩 和弘主管研究員、鳥澤 嵩征研究員及び明治大学理工学部の石原 秀至准教授、谷口 大相研究員の研究グループは、微小管とタンパク質モータ・キネシンが自己組織的に形成するネットワークの振る舞いを定量的に明らかにして、その数理モデル化に成功しました。・・・read more
2016年7月6日
外来遺伝子(DNA)の生細胞への効率的な導入方法の開発に成功
NICT 未来ICT研究所は、国立大学法人大阪大学(大阪大学、総長: 西尾 章治郎)大学院生命機能研究科 小川 英知特任准教授、平岡 泰教授らと共同で、外来DNAを生きた細胞に効率よく導入するために、 p62と呼ばれるタンパク質の量を減少させることで、DNAの導入効率を上昇させることに成功しました。・・・read more
2016年7月1日
将来にわたり情報漏えいの危険のない分散ストレージシステムの実証に成功
NICT 量子ICT先端開発センター及びセキュリティ基盤研究室は、国立大学法人東京工業大学(東工大、学長: 三島 良直)工学院 情報通信系の尾形 わかは教授と共同で、分散ストレージシステムにおいて認証・伝送・保存の過程をすべて情報理論的安全性で担保されるシステムの実証実験に世界で初めて成功しました。・・・read more
2016年6月15日
高周波圧電共振器の課題を解消する回路技術を開発
東京工業大学 科学技術創成研究院 未来産業技術研究所の伊藤浩之准教授、益一哉教授らはNICTと共同で、高周波圧電共振器を位相同期回路(PLL)に用いるための新しいアルゴリズムと回路技術を開発した。従来のPLLに比べ、低雑音かつ優れた性能指数(FoM)で動作することを確認した。・・・read more
2016年5月26日
毎秒数十ギガビットの伝送速度を有する300GHz 帯を用いたテラヘルツ無線用小型送受信機を世界で初めて開発し、高速データ伝送実験に成功
日本電信電話株式会社(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:鵜浦博夫、以下NTT)、富士通株式会社(本社:東京都港区、代表取締役社長:田中達也、以下 富士通)、NICTは、共同で、周波数帯域を広く確保できることから高速無線への適用が期待されている、300GHz 帯を用いたテラヘルツ無線用小型送受信機を世界で初めて開発し、直交偏波を用いた多重伝送により毎秒40ギガビットのデータ伝送ができることを確認しました。・・・read more
2016年4月19日
世界初!異なる光周波数の二光子の干渉を実現
大阪大学大学院基礎工学研究科 井元信之教授、東京大学大学院工学系研究科 小芦雅斗教授およびNICT 未来ICT研究所 三木茂人主任研究員のグループは、広帯域光周波数多重化を利用した大規模量子情報処理の基礎技術である周波数領域のスプリッターを実現し、これを異なる光周波数(異波長)の二光子に適用したHong-Ou-Mandel干渉(HOM)を世界で初めて観測しました。これは、従来の空間光回路の集積化に加え光周波数多重化も実現する新しい道筋となります。・・・read more
2016年4月12日
秋田県仙北市において小型無人航空機ドローンによる図書の自動配送実験に成功
NICTは、株式会社プロドローン(プロドローン、代表取締役: 河野 雅一)と共同で、小型無人飛行機ドローンを使って学校図書室の本を別の学校へ配送する図書配送システムの実証実験に成功しました。・・・read more