各地の実験協力地域などで実証実験を開始するにあたり、まずは実験参加者の皆さんにウェブアクセシビリティとは何か、ウェブアクセシビリティ改善のポイントなどについての講習会を開催しました。このレポートは、その時に使った講習会資料です。
以下に、資料からテキスト部分を抜粋したものを掲載しています。
この資料は、4章だてです。各章には番号がついた項目で、トピックスが区切られています。2章は特にページ数が多いので、2-1と2-2の2つに分けて目次だてしています。
高齢者や障害者など、心身の機能に制約のある人でも、ホームページで提供されている情報に問題なくアクセスし、利用できること。
95年以降のインターネットの爆発的な普及に伴って、高齢者や障害者にも利用が広がってきました。しかし、高齢者や障害者が ホームページを利用するには、さまざまな障害があることが次第に明らかになってきたため、どのような環境や状況の人でも、 アクセスできるホームページ作りが大きな課題となってきました。
そこで、総務省(旧郵政省)では、平成11年に指針を発表し、またそれに引き続いて昨年度、ウェブアクセシビリティ支援システムを開発いたしました。今年度から2ヵ年を予定しているこの実証実験は、このウェブアクセシビリティ支援システムの実効性を検証すると共に、ウェブアクセシビリティをみなさんに広く知ってもらう目的でスタートしたものです。
ウェブアクセシビリティは、現在世界的な動きとなりつつあります。
アメリカでは、昨年改正されたリハビリテーション法508条で、ウェブのアクセシビリティが、連邦政府の調達基準として義務付けられました。施行はこの6月からでした。現在、米国の連邦政府関連のホームページはすべて、ウェブアクセシビリティが確保されています。また同様の調達基準を設定する動きが、州政府や地方政府にも波及しているようです。
また、国際規格のISOでも、ウェブアクセシビリティの規格化が進んでいます。
日本でも、政府の調達基準となるような、 2年後をメドにJISの規格化が進んでいると聞いています。
WWWで用いられる技術(HTML等)の標準化と推進を目的とする国際学術研究機関であるW3C(World Wide Web Consortium)は、ウェブアクセシビリティについて専門に研究しているWAIという下部組織をもっています。
このWAIが1999年5月に勧告したのが、WCAG1.0(Web Content Accessibility Guidelines 1.0)です。WCAG1.0はアクセシビリティレベルを3段階(「A」「AA」 「AAA」に整理し、14項目の満たすべき条件を提示しました。
これを受けて米国は、508条の2000年改正に伴って、連邦政府機関がウェブで提供する情報についても、一定レベル以上のアクセシビリティを満たすことを義務付けました。
自分の作成・公開しているホームページが、基準を満たしているかどうかを点検するソフトウェアには次のようなものがあります。
しかしながら、既存の点検ツールを日本で使用する上で、次のような問題が指摘されています。
さらに日本におけるアクセシビリティにおいては、特に日本語と関係した固有の問題が存在します。
アクセシビリティを総合的に支援する、3つの機能を提供。
したがってよく利用するサイト、自動変換したい項目を登録しておけば、音声などのアクセス可能な形に変換できるわけです。
総務省の実証実験事務局(実証実験担当:アライドブレインズ、システム開発担当:松下電器産業)が次のような団体に参加要請・呼びかけを行って、実証実験を実施します。
高齢者や障害者など、心身の機能に制約のある人でも、ホームページで提供されている情報に問題なくアクセスし、利用できること。 そのためには、ウェブ提供者が高齢者障害者の利用に配慮したホームページを制作することが必要です。
高齢者や障害者のホームページ利用の実態を理解することが第一歩。
障害者・高齢者のインターネット利用は、年々広がっています。画面で示したデータは、平成11年に郵政研究所が調査した高齢者・障害者のインターネット利用率です。この時点では、高齢者の利用率は、0.6%、障害者では全体でみて、7.8%となっていました。
この調査から2年以上がたちました。現在、実際にはもっと利用が進んでいると思われます。例えば、高齢者利用者団体、シニアネットは全国で70団体くらいが活動しており、年々拡大しています。今後は、さらに拡大が予想することは確実だと思われます。
ホームページは、私たちにとっても、とても便利なものです。しかし、特に障害者にとっては、それ以上に重要なものとなっています。
例えば、進行性のALSの患者さんの場合、人工呼吸器をつけており、外出することは困難です。しかし、インターネットを利用すれば、好きな野球チームの情報を得たり、ほしい新しいパソコンのカタログを検索したりすることができます。ホームページは、こうした外出が困難な障害者に対しては、社会と関わりをもつ接点として、重要な意味を持っているのです。
また、視覚障害者にとっては、ホームページによって入手できる情報が格段に広がりました。視覚障害者は、これまで、文章で表現された情報を得るには、大変な苦労をしてきました。
例えば、行政の広報誌の情報を得るにも、これまでは、音訳ボランティアが、音声で読み上げたカセットテープや、点訳版が制作ができるまで、待たなければなりませんでした。ちょっとした文字情報を得るのに、多くの時間と、人の手を借りる必要があったわけです。 しかし、ホームページが利用できるようになって、晴眼者とほぼ同じタイミングでニュースや情報を得ることができるだけでなく、自分自身の力で、自分のほしい情報を調べることができるようになりました。
したがってウェブ提供者が高齢者・障害者の利用に配慮したウェブコンテンツを制作することが大切です。
ウェブアクセシビリティの最も重要なコンセプトは『 情報伝達の保証 』です。
アクセしビリを確保するためには、以下の4つのポイントがあります。
中でも「1.情報表示の代替手段を用意すること」は、アクセシビリティが目指す、情報伝達の保証の基本的手段であり、もっとも重要度の高い内容です。以下でもう少し踏み込んで解説していきます。
alt属性は、画像などが表示できないブラウザなどでは、画像の替わりに表示されたり、読み上げたりする。通常のブラウザでも、画像を表示しない設定にすると、alt属性の効果がよくわかります。
代替テキスト(alt属性)があっても、内容が不適切で、アクセシビリティの向上につながっていないケースが非常に多く、適切な代替情報を提供することがポイントです。
代替テキスト(alt属性)は、画像の存在を示すためのものではありません。
よく見かける不適切な例としては、サイトのロゴなどに、「タイトル画像」などの文章が入れられているものです。しかし、この画像が伝えているのは、そのサイトのタイトル情報のはずです。ですから、ALT属性はそのように入力すべきです。
つまりALT属性は、画像の存在を示すためのものではありません。画像の情報が正しく伝達されることを保証するような、代替テキストでなければなりません
なんでも alt属性に入れればよい、というわけではありません。例えば空き缶のリサイクル過程を説明する画像の場合、ALTに必要とされる説明も長文になります。
このような場合は、ALT属性のほかに、説明テキストを用意し、画像で示されている空き缶のリサイクル過程を、本文中またはリンク先で説明すればよいのです。
ワンポイントで画像を使う場合や、特に意味をもたない場合は、 alt属性をスペースにしてもかまいません。
ただし意味のない画像(スペーサー)場合でも、alt属性は付けてください。 alt属性がないと、“image”などシステム側で自動的に付与する文字が表示されてしまい、内容がわかりにくくなるケースがあります。
記述例)<img src=“bass.jpg” alt=“?” title=“空白に調べたい用語を入力してください”>
実際にアクセシビリティ確保の作業を行うとなると、すべての画像にこのような代替テキストを入れる作業をしなければなりません。そうなると、漏れがあったりして大変です。
また、HTMLの文法の記述などは、チェックするのはなかなか難しいのが現実です。こうした課題を解決するのが、ウェブアクセシビリティ支援システムです。
ウェブアクセシビリティ支援システムは、HTMLの構造を解析して、アクセシビリティの問題点を指摘してくれるシステムです。こうしたウェブアクセシビリティ支援システムを積極的に活用し、効率的にアクセシビリティ確保の作業を行うことが大変有効なやり方になります。
J-WASでは、4つのアクセシビリティレベルを設定している。
最低限『レベルB』は、どんなサイトでも必要です。
J-WASを使ったアクセシビリティ実現は次のような流れになります。
まだ十分に使い勝手がよくありませんがご容赦ください。例えば以下のような問題点があります。
実験事務局では今後次のような流れで実証実験に取り組んでいきます。
実証実験地域での、今後の取り組み
以上の取り組みを受けて、平成14年にはJ-WASシステムの改修、平成14年度実証実験を行う予定です。
ご自身のホームページを、高齢者や障害者の立場に立って見直してみてください。
実証実験では、みなさまが改善に取り組まれた成果を、ホームページでご紹介します。