トップページ 総務省実証実験について ウェブアクセシビリティセミナーの開催
平成14年1月17日にKDDIホールで開催したウェブアクセシビリティセミナーでの、各講師の講演概要およびパネルディスカッションの概要をまとめました。
講師: 株式会社ユーディット 代表取締役 関根千佳 氏
関根氏は、「情報の」ユニバーサルデザインに関する第一人者として、多方面でご活躍中です。
WWWにおいて、全ての人々に対してアクセシビリティを確保することが如何に大切であるかについてご講演いただきました。
(13時40分から14時35分)
2005年には、日本の成人人口の半分が50歳以上になる。有権者、納税者、消費者の約半数であるシニアへの配慮を欠いた町、ウェブ、情報を作っていくということは、いかに意味がないかを考えていただきたい。
60歳近くなると、人間はどこか勤続疲労が起きて、いわば軽度重複障害者になる。シニアの中で軽度重複障害をもっている人と、若い頃から障害を持つ人たちと、ニーズはかなり近い。我々IT業界は、シニア層をユーザとして認識してこなかったので、人口構成に照らしあわせると、シニアはIT利用率が低い。ただし、シニアは時間、お金、向学心のある層。彼らを顧客としてIT産業が取り込めるかどうかが必要な視点になっていくと思われる。
ユニバーサルデザインは、新しい駅や建物、ウェブサイトなどを作るときに、できれば最初から障害者や高齢者、妊産婦、外国人など、様々な人のニーズに応えて作ろうという考え方。アクセシビリティだけでなくユーザビリティも大事。IT産業のようにどんどん物事が変わる場合は、ユニバーサルデザインの考え方が必要になると思う。ユニバーサルデザインは、どこか遠くにいるかわいそうな障害者のためのものではなく、自分自身が、明日、もしかして少し目が弱くなったり、取引先が障害を持つ人だったりするときに、困らないために検討しなくてはならないものだ。
情報発信する場合、私達が作っているウェブサイトから、情報を受け取れない層を作らないこと。わかりにくい、アクセスができないサイトを提供することで、そこのサイトから逃げて他の企業に行ってしまう人がたくさんいることを忘れてはいけない。さらに、ウェブが使いにくいというトラブルがあれば、クレームや質問の処理はコスト増になる。また、携帯やPDAからネットを利用する人への情報提供を考えてもウェブアクセシビリティの確保は重要。
ウェブは顧客満足度の充実のために作るもの。作り手は健常者かもしれないが、見る側は高齢者や障害者かもしれない。お客様の先のお客様は誰かを考えた時に、ウェブアクセシビリティを無視したサイトづくりが、お客様の不利益を増やしている。
ウェブアクセシビリティについては、W3Cでガイドラインを作っている。アメリカではリハビリテーション法508条が改正され、障害者のアクセスが保障されている。国内でも、ガイドラインが出されたり、各省庁間で話し合いが進んでいる。
障害者のアクセス方法を知りたければ、ぜひ当事者に聞いてほしい。アクセシブルなウェブといったときに、テキストばかりのページや、かっこわるいページを作るのが目的ではない。誰が見ているかという意識を持ちながら作ることで、できあがりはずいぶん違う。
そのためには、日本語のページでは外国語の乱用はしない。画像にはオルト属性を必ずつけ、それは長すぎても短すぎてもいけない。リンク画像には必ずオルトをつける。ページの内容がきちんとわかるようにタイトルを入れる。WAIのガイドラインにない日本語の問題では、一単語内にスペースや改行を入れない。リンクの下線は消さない。画像をリンクさせたときは、リンクだということがわかるようなデザインをする。色の情報だけに依存しない。これらがアクセシビリティ確保の基本。
日本政府、自治体、IT産業界のメンバーは、日本がシニアの多い、そして障害を持つシニアが増えていく市場でビジネスをしていることを理解していただきたい。」。今後、シニアや障害者の雇用の場も増えるだろうし、各メーカーの中にアクセシブルのコーディネーターをつけてニーズを吸い上げる仕組みも大事になるだろう。障害をもつエンジニア育成のための高等教育における進学支援、ユニバーサルデザインのIT産業育成も必要になるだろう。技術が進むときにそれを誰が使うのかという視点がなかったら、技術の進歩は我々を幸福にしないと思う。皆さんの扱う技術、ITが誰かを少しでも幸福にするものであってほしいと思う。
発表者: 実証実験事務局 アライド・ブレインズ株式会社 内田 斉
総務省が取り組んでいる「高齢者、障害者等が利用しやすいホームページの普及に向けた支援システムの実証実験」について、支援システム(仮称:J-WAS)の概要やこれまでの取り組み成果について中間報告しました。
(14時35分から15時10分)
総務省では、平成12年度にウェブアクセシビリティ支援システムJ-WASを開発し、平成13年度からJ-WASを使った実証実験を行っている。J-WASには、点検修正機能、アクセス支援機能、アクセシビリティ体感機能の3つの機能があり、誰でもネット上で無料で使用できる、日本語に合わせて点検・修正できる、点検修正に4つのレベルを用意している、日本語でアドバイスを表示できる、という4つの特徴を持つ。
実証実験では、J-WASのインターネット公開、企業や自治体、各省庁の方を対象にしたアクセシビリティの基礎知識やJ-WASの使用法についての講習会、主要サイトのアクセシビリティ調査、実験協力地域での集中的なウェブの改善取組みなどを行っている。
今回の実証実験の成果の一つに、参加した企業・団体の意識が大きく変化したことがあげられる。特に、交流会に参加するなどして、ウェブ利用者から直接意見を聞いたり、利用状況を見た方からは、強いインパクトを受けたという意見をいただいた。また、実験を通じて、視覚障害者や高齢者のアクセシビリティについて新たな発見もあった。視覚障害者の方からは、ナビゲーションリンクが多すぎてなかなか本文にたどりつけない、データ表やプルダウンメニューでも、メニューが多いと使いにくいという意見があがった。また、高齢者の方については、いろいろなサイトを調べているうちに現在位置がわからなくなったり、ページの中のボタンを押すのに不安感を感じるという特性がわかった。
J-WASで自分のサイトを点検し、状況を理解するのが、アクセシビリティに取り組む第一歩だと思う。ただし、J-WASはあくまでも機械的な点検ツールであるため、サイト利用者、障害者、シニアの生の声を聞いて、皆さんの創意工夫で高いアクセシビリティを実現するのが望ましい。
実験参加者からは、人気サイト、生活情報サイト、有名な企業・団体のサイトを利用したいという声が多かった。来年度の実証実験には、これらのサイトを提供している方や、ウェブクリエーターの方にも、ぜひ参加していただきたい。
講師: 筑波大学付属盲学校 教諭 内田智也 氏
内田氏には、視覚障害者の立場からウェブアクセスの実状とその課題についてご講演いただきました。
視覚障害者がウェブを利用できるようになって、新聞の購読、データベースの利用、電子データの入手などができるようになった。電子データは音声や点字で確認できるものが多く、視覚障害者にとって非常に有効なものである。また、新製品情報の入手や、銀行やクレジットカードなどの個人情報を文字情報として確認できるようになったことは重要である。
以上のことからもウェブは大きな可能性を秘めていると言える。ただし、利用可能になったということは、必ずしも使いやすいということを意味しない。したがって、アクセスしやすいウェブの作成は極めて重要となる。
また、技術は進んでも、著作権の問題でウェブ上で公開できないものがあるという、法的な問題や、最近ウェブ上で増えているPDFファイルは、電子データではあるが、ほとんどのものがテキストとして読むことができないといった問題などについても指摘しておきたい。
視覚障害者は、5、6年前から音声ブラウザ、スクリーンリーダーなどを使ってウェブを利用しており、最近は基本的に音声ブラウザがメインに使われるようになっている。点字出力をメインにしているユーザも一部いるが、点字ディスプレイは補助的に利用されるようになってきている。
ウェブは視覚に訴えるデザインが多いのが現状である。情報提供側は、ウェブを誰が使っているのか、使った時にどう感じているのかを知るために、利用者の声を聞いたり、意見交換できる場所を作ることが必要である。
視覚障害者用ブラウザなど支援ソフトの技術が、日進月歩のウェブ技術になかなか追いつけていない。そのため、新しい機能が使われているページを利用できなくなるという虞が常に付きまとってくる。また、マウスが使えないので、別の特別な操作が必要となるなど、操作の難しさも出てくる。
そのような状況下で、視覚障害者も基本的な情報アクセスのスキルを身につけようとしているところである。しかし、大量の情報の中から自分に必要な情報をどう取り出すか、視覚的な情報を音や点字でいかに理解するかなどが大きな課題であり、情報教育を充実させることが重要である。
情報を提供する側は、情報を必要とする全てのユーザに同じ質の情報を提供するべきであり、一方、ユーザは情報を確実に取得し、利用することに目標がある。したがって、その手段は、それぞれの立場、状況に応じて考えればよいのではないだろうか。
視覚障害者にどんなものが使いやすいか聞くと、理想的な話が出ることがあるが、現在の技術でできること、できないことを明確にした上で、可能なことから実現させていく必要がある。また、今後のために、理想や、こうあるべきという事柄を考える必要もある。つまり、実用と研究レベルの事柄を分けて考える必要があるのである。
情報提供側に良いものを作るようにリクエストするだけでなく、視覚障害側のアクセスのスキルを向上させる教育に力を入れることも大切であり、そのためには政府の役割は極めて重要である。
ユーザとの議論や意見交換の時には、「単に読める」ことと「読めた結果、それらを正しく利用できる」ということは違うのだという視点も重要である。
情報提供側、情報を受ける側、その間を支援するソフト開発の3者がバランスよく取り組まなければ、なかなかアクセシブルな情報の確保は難しいのではないかと感じている。
少しでもまずは一歩、何かやっていただき、いろいろなユーザーがいることを知っていただきたい。
講師: ZSPC 大藤 幹 氏
大藤氏は第一線で活躍のクリエーター。W3C技術に精通されており、アクセシビリティの確保策について、技術面からご講演いただきました。
企業のホームページのレイアウトにテーブルを使わざるを得ない場合、アクセシブルにするにはどういう点に注意すればいいか知ることが重要だと思う。
W3Cのトップページは見事にアクセシブルなテーブルの使い方をしている。アクセシビリティガイドラインに、その注意点があるが、一つは読み上げの順序。音声ブラウザで聞く場合に、順番にセルの内容が一つずつ読み上げられていくが、セルが細かく区切られているとしたら、順番が重要になってくる。基本的に音声ブラウザでは、ソースに書かれている順に読み上げられる。それに注意しないと、セルが縦に細かく区切られていると、読み上げる順番が変わってしまい、内容がわからなくなることがある。そこで、あまりセルを細かくしないように、注意が必要だ。
もう一つ重要なのは、テーブルは使っていても、その中身が構造化されていること。セルの中で、見出しのタグをつけ、次はリスト、本文というように、構造的なタグ付けをすることによって、ナビゲーションが読み上げられてなかなか本文にいけないような場合でも、ホームページリーダーなどでは見出しだけを飛ばして読み進むことができる。
アクセシブルなホームページを作る場合、さまざまな環境で異なる表現を可能にすることが重要だ。アクセシビリティガイドライン1.0は14項目あるが、そのうち1から11番目が、様々な環境で、違った表現ができるように、ということを目的としている。主なものの一つは、代替テキストをつけること。画像の代わりになることを意識して、代替テキストをつけるといいと思う。
もう一つは構造的な意味を示すこと。構造を示すというのは、W3Cのアクセシビリティガイドラインの優先度2にあたる。優先度2では、正しいHTMLにしなければ、ダブルAクラスのアクセシビリティは確保できない。
アクセシブルなホームページを作る最大の問題は、きちんと構造を示したページでも、スタイルシートを使ったときにブラウザがきちんと表示してくれないことだ。
企業のホームページだから見た目は譲れないが、アクセシブルにしたいというときは、アクセシビリティガイドラインや仕様をまずは知っていただくことだ。W3Cのホームページで仕様として公開されているし、日本語訳もある。こういうねらいでホームページを作っているので、必ずしもアクセシビリティを優先できない、といったとき、その代わりにどういうものを入れておけばいいかを知っていれば、やるべきことの判断がつく。知らないのではなく、あえて狙ってこういうものを作っているのだ、と言えるように是非なっていただきたい。
講師: 日本電気株式会社 藤井浩美 氏
藤井氏には、民間企業でウェブ広報に携わる一人の担当者としての立場から、民間企業におけるウェブのあり方とアクセシビリティ確保への取り組みについてご講演いただきました。
アクセシブルウェブについて、2000年8月頃から社内プロジェクトチームを作り、検討を始めた。12月に社内に対して情報提供サイトを公開し、2001年4月に社内向けガイドラインを作成、公開した。
企業でアクセシブルウェブを展開する場合に一番大事な柱は、社内の啓蒙をどうするか。基本的スタンスは顧客満足。障害者、高齢者、モバイルアクセスの方、日本語を母国語としない方、子供など、一人でも多くNECのサイトに来ていただけるようにコンテンツを作ろうという観点でウェブアクセシビリティを考えている。
ガイドラインは社内公開のみ。NECのウェブの業務担当者向けで、W3Cのガイドラインよりも、かなり内容を絞り、具体的な解決案を例示している。柔軟性をもたせ、サイトごとに優先順位を決めていいことにしている。
啓蒙活動はeラーニングシステムを活用し、全社員を対象にウェブアクセシビリティの基本コンセプトを知ってもらう活動。このほか、管理者教育、サイト責任者、海外現地法人など、対象者別に社内啓蒙を行っている。
日本語のNECサイトでは、2000年7月のリニューアルの際には、一つのデザインでいろいろな環境からアクセスできることを目標にした。2001年10月のリニューアルでは、ユーザーの環境に合わせてHTML・CSSのテンプレートを切り替えるようにし、構造と見栄えの分離、テーブルの読み上げ順、隠しリンク、隠し文字、文章の構造化などの配慮をした。
リニューアルする場合に、理想的には、基本コンセプトを考える段階で、アクセシビリティの方針を決めるとよい。レイアウトの開発では、そのサイトが狙っているアクセシビリティが確保できるものを作る。テンプレートのコーディングでは、音声ブラウザへの配慮を組み込むことが必要だ。
海外向けのNECサイトでは、現存サイトのアクセシビリティを向上させた。全部のファイルを重要度で3段階に分類し、ガイドラインを基にチェックリストを作った。評価ツールの選定、スケジュールを決め、課題を出して解決していくという方法をとった。
これらの活動を通して、企業サイトにおけるアクセシビリティ考慮点をまとめた。サイトの実施前は、実施しやすいガイドライン、テンプレートを作ることが大事。作ったテンプレートにあらかじめアクセシビリティの配慮をソースレベルで盛り込んでおく。内部制作以外では業者にオリエンテーションをきちんとすること。制作段階では、画像にはALTテキストをつけて業者に渡す。レイアウト目的でテーブルを使用する場合は、読み上げ順を確認する。特殊な用語にも配慮し、正しく読み上げられない場合は説明を加える。公開までのプロセスでも、アクセシビリティ解決まで業者と話し合っていく姿勢が大切だ。また、ガイドラインを作りっぱなしにせず、制作者とのコミュニケーションからフィードバックしていくことが大事だ。
コーディネーター: 慶應義塾大学 名誉教授 林 喜男 氏
人間工学の権威として電気通信アクセス協議会の会長代理兼ウェブアクセシビリティ作業部会の部会長をお務めの、慶應義塾大学 林名誉教授にコーディネーター役をお願いし、内田智也氏、大藤氏、藤井氏のほか、関根氏、事務局の内田斉も参加して、パネルディスカッションを行いました。会場からも積極的な発言をいただきました。
内田斉: サイトのアクセシビリティを高めていくことによって、当の企業にとって、具体的にどのようなメリットが見込まれるのか。
関根氏: ウェブアクセシビリティの具体的メリットを数字に表すのは難しい。アクセシブルやユーザブルでないサイトを作っていると、お客さんがそこから逃げていくのを実感できるかどうか。日本の成人人口の50%が50代を超えるという人口構成を考えて、サイトを作っていただきたいと思う。
藤井氏: 社内には、一人でも多くの方にサイトを見ていただいて、ビジネスチャンスを得るためにウェブアクセシビリティが重要と説明している。最近強調しているのはモバイルアクセスの増加。モバイルからNECのサイトが見られることでメリットがあるのは自明。また、リニューアルの初期段階からアクセシビリティに考慮しながら進めることにより、実質的コストは通常のサイトリニューアルとほとんど変わらないという感触がある。
会場: 実証実験の、主要サイトのアクセシビリティ調査の結果は公開されるのか。
内田斉: J-WASを使った主要サイトのトップページ点検の結果については、みんなのウェブで公開したいと思っている。ただし、それらはJ-WASで機械的に点検した結果なので、プロバイダーや検索サイトのように1ページにテキストベースでかなりたくさんの情報が入っているページはバツマークがたくさんつくケースが多い。一方、代替テキストの入っていない画像などが中心のページは、音声ブラウザでは全く読み上げられないが、ページを構成している要素が少ないので、バツマークの数は少なくなる。したがって、J-WASの結果でページの善し悪しをランク付けすることは簡単にはできない。
会場: 関根さんの会社では、障害者の社員の方がどういった技能を身に付け、どのように仕事をされているのか伺いたい。
関根氏: 様々な障害をもつメンバーが、製品評価、翻訳、ホームページ作成などを行っているが、それぞれが独学や講習会に参加して、自分でいろいろなスキルを身に付けた人たちだ。障害の有無にかかわらず、それぞれの得意分野を持ち寄りながら、プロジェクトをこなしている。また地域の障害者がネット上で集まり、いろいろなノウハウを集めて、自分達のスキルアップにつなげる取組みも増えてきている。多様な人々が活躍できる環境整備が必要で、その支援策をしていただけると幸いだ。
会場: 1ページのテキストの量やリンクの数など、適切な情報量をどう考えるか。
内田智也氏: ブラウザのジャンプ機能等に慣れたら、意外に対応はできるが、リンクは、個数だけでなく、並び方にもよるので、何ともいえない。文章を読むだけであればたくさんあってもいいが、前に戻ったり進んだりすることを考えれば、2,3ページ程度が適当かと思う。
藤井氏: ページが非常に長くなると下の方のリンクが分かりにくくなる。少しスクロールすれば見える程度の長さと考えているが、構造化することが基本だろう。
内田斉: 1ページの大きさも重要。シニアを考えると、1ページを見るのにスクロールが必要で、かつ上の方の情報と下の方の情報が違う内容だと、問題だと思う。高齢になると、連想の仕方が若年層と違うので、スクロールした下のほうに情報があるということに気づかない人もいると思う。
会場: J-WASは3月まで公開が延長されたが、4月以降はどうなるのか。また、J-WASのダブルAやトリプルAレベルというのは、どういう考え方のものか。
内田斉: 実証実験は来年度までの2年間のプラン。J-WASは3月までは今と同じ状態で公開し、来年度の適当な時期に、今回の実験でいただいた意見や注文を取り入れて改善版を公開したい。また、来年度はJ-WASのCD-ROM版で、パソコン上で使っていただけるものを考えている。J-WASのAレベルまではアクセシビリティの入門で、ダブルA以降が本格的な意味でのアクセシビリティという感じだ。構造化が重要になるのがダブルAレベル以降。構造化はJ-WASでも自動点検しきれず、対話型でないと点検できない。また、修正も定型的な答えがあるわけではないので、作る側がいろいろ調べながらやらないと達成は難しい。
大藤氏: ツールを通すための作り方と実際にガイドラインにそったアクセシブルなものとは、少し違ってくると思う。文法に従ってJ-WASのチェック項目を意識しながらうまく作れば、トリプルAも比較的達成しやすいと思う。
内田斉: NECさんは、最初のリニューアルでは、ユニバーサルデザインということで一種類のページで誰でも使えるようにしたが、二度目のリニューアルでは利用者の環境や条件によってページの作り方を変えていくという方法をとられた。利用者別にページを分けるのはよくないという考え方もあるようだが、これについてどうお考えか。
藤井氏: リニューアルの時期によってブラウザなどの技術環境が違う。その時その時でNECにとって最善の方法を選択した結果だ。また、いろいろなパターンをやってみてノウハウをためることも必要だ。
内田智也氏: 情報提供するときに、すべての人に同じ情報、サービスを提供できることが重要であり、そのための方法は違ってもいいのではと思う。
関根氏: 必ずしも1つのものですべてをまかなうというのではなく、その人に合わせたものをその人が利用しやすい形で提供するのがよりユニバーサルデザインだと思う。利用者の環境に合わせた二度目のリニューアルの方が、本来UDが目指すものと言えるのではないか。データは一個でも、ユーザーに合わせて可変になるのが、最終的な姿かもしれない。
大藤氏: ユニバーサルデザインは「One fits for all」ではないということはよく耳にする。WAIのメーリングリストで先日話題になったことがある。昨年末アマゾンコムが視覚障害者向けのサイトをオープンしたが、視覚障害者向けサイトと一般向けサイトとでデータベースが別になっていたり、カスタマーサポートがうまく連動できていなかった。このように、Flashページとテキストページに分けてしまうと、全く同じ内容のものを2つ用意しなければならず、更新やチェックの手間が倍になる。できれば1つのサイトにした方が都合がいいと思う。