前回取材を受けた時からの大きな変化としては、1つにウェブアクセシビリティに関するガイドラインの変更が挙げられます。2008年12月に、WCAG 2.0がW3C勧告になりました。そして、今回改正するJIS X 8341-3は、このWCAG 2.0をそのまま取り入れるような形になっています。2004年に出た最初のJIS X 8341-3が、普及啓蒙を目的とした指針のようなものであったのに対し、今回の改正版JIS X 8341-3はより実践的、具体的な内容になっています。達成基準も明確で、実際にコンテンツの試験をしたり、検証したりすることができるようになります。JIS X 8341-3:2004にはあいまいな表現が多かったため、人によって異なった解釈が生じるという問題が指摘されていましたが、今回の改正では、いわゆるこの“グレーゾーン”の部分が、かなり狭まったと言えると思います。
もう1つは、リッチ・インターネット・アプリケーション(RIA)の台頭です。昔でいえばFlashを使ったインタラクティブなものや、最近ではAjaxに代表されるような新技術、FlexやSilverlightなどのリッチなウェブアプリケーションが、かなりたくさん世の中に出てくるようになってきました。スクリーンリーダーや、マウスを使わないキーボード操作では、そういったものを利用できないという問題が指摘されてきていたのですが、W3Cがアクセシブル・リッチ・インターネット・アプリケーション(WAI-ARIA)という仕様の策定に着手するなど、状況が変わってきました。日本国内ではまだそれほど話題になっていませんが、海外の方では主要なブラウザやスクリーンリーダーが既にWAI-ARIAへの対応を始めています。
そして、ブログやCMSの普及も挙げられると思います。ブログ生成ツールは一般化され、ユーザーはタグ等を意識せずにボタン1つでブログを更新できるようになりました。また、企業や自治体のサイトでも、CMSによるコンテンツ生成が普通に行われています。手軽になった反面、それらのソフトやシステムがきちんと作られていないと、アクセシブルではないコンテンツがどんどん生成されてしまうという側面もあるので、注意が必要です。
あとは、この3つに比べるとまだまだ先の話になると思いますが、HTMLの仕様自体も新しくなろうとしています。HTML5と呼ばれているもので、海外の方では昨年くらいから活発な議論が交わされるようになってきました。結局それは、HTMLもXHTMLも集約したものになるらしいのですが、いつ正式に新しいHTMLの仕様として認められるのか、アクセシビリティについてどこまで担保した仕様になっていくのかということは、今後も動向を見守っていかなければならないと思っています。
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原本作成日: 2010年9月13日; 更新日: 2019年8月19日;