私は普段、インフォアクシアという会社で、サイトの診断やガイドライン作成、セミナーや研修での講演、コンテンツ制作のサポート等、ウェブアクセシビリティに関するコンサルティング業務を行っています。
新しいJISができても、基本的に業務内容自体が変わるということはないと思います。もちろん、ガイドラインの変更に伴う微調整は出てきますが。例えば、等級という概念にどう対応していくかとか、どのレベルに合わせてチェックしていくかとか、これまで独自の診断方法だったのを基準に基づいたチェック方法に変えていくとか、そういうことですね。
2004年のJISは、アクセシビリティというものに多くの人が気づいた、気がつくきっかけになったことに大きな意味があったと思います。2010年のJISでは、前のJISにあったグレーゾーンが狭まり、一つひとつの達成基準を正しく理解することができるようになります。それによって、デザイナーやサイト運営者はもちろんのこと、ブラウザやスクリーンリーダー、ブログやCMS等の開発者、そしてユーザー自身も含めたウェブコンテンツに関わる全ての人々が、それぞれに意識を高め、みんなの力でアクセシビリティを進化させていく。それが当たり前になるような世界になってほしいですね。
ある大学の先生に言われたのですが、JISに対応したサイトのユーザーテストを行ったら、結果が全然ダメだったと。でも、そういうことだってありえるのです。そもそもJISやWCAGなどのガイドラインには必要最低限のことしか書かれていません。言い方を変えると、最低限満たすべき品質基準でしかないと言ってもいいでしょう。ガイドラインの達成基準を満たすことイコール、すべてのユーザーにとって使いやすい、分かりやすいコンテンツとは必ずしも言えないのです。最低限満たすべき基準をクリアした上で、その上で使い易い、わかりやすいというユーザビリティを考えていきましょう、と。つまり、JISの達成基準を満たすことは、Webというメディアを通じてコンテンツを提供するためのスタートラインに立つことなんだと捉えてほしいですね。
アクセシビリティと括られているものの中には、ガイドラインに書かれていないこともたくさんあります。そしてさらにその上の概念として、ユーザビリティなどがあります。ユーザーテストや研究・調査を地道に行い、それらをガイドラインにフィードバックして、ガイドライン自体をさらに骨太なものにしていく。アクセシビリティの専門家として、今後そういうことに取組んでいきたいと思っています。
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原本作成日: 2010年9月13日; 更新日: 2019年8月19日;