重度の障害がある方や神経難病の方へのコミュニケーション支援の方法は、大きく3つに分けられます。
非エイドコミュニケーション技法。これは、道具を使わないコミュニケーションの技法で、ジェスチャーや目や唇の動き、わずかな発声を読み取ります。ローテクコミュニケーション技法は、筆談や文字盤などの簡単な道具を使うコミュニケーション技法です。ハイテクコミュニケーション技法は、一般のマウスやキーボードを使うことができない人のための電子機器を使ったコミュニケーション技法です。ハイテクコミュニケーション技法がほかに勝るわけではなく、3つの技法を患者が持つ能力を活用してうまく使い分けていくことが大切です。
最初に会話補助装置としての電子機器が導入されたのが20年前。神経難病の患者の多くがコミュニケーション支援機器として使っている意思伝達装置「伝の心(でんのしん)」が登場して15年が経過しました。現在、コミュニケーションを支援する意思伝達の道具・機器には、「伝の心」のほか、「透明文字盤」、「オペレートナビ」、「レッツチャット」、「ボイスキャリーペチャラ」などがあります。
それほど時間が経過し、種類も増えているのですが、患者さんの中には、一番手軽にコミュニケーションがとりやすい「透明文字盤」でさえ使っておらず、家族や支援者とのコミュニケーションが取れていないこともあります。ICTコミュニケーション支援機器がそろっていても、日常的な介助で手いっぱいの家族やヘルパーなどが支援機器の使い方がわからずに活用されていないこともあります。
しかし、その一方で、患者さん自らが支援機器を使いこなして、インターネットで情報収集、情報発信し、社会と積極的にかかわっているケースもあります。患者のまわりに誰かしらICT機器の技術や知識を持つ人がいることが重要です。
コミュニケーションに関して、患者さんのまわりのどんな職種の人が担当するのかは決まっていません。それは逆に誰でもできるということなのですが、誰もやらないケースも出てきます。そんな現状を見てきて、ICTコミュニケーション技法の基礎知識を学んでもらい、普及させることが必要だと強く感じていました。