たとえば、当校の生徒は「音」「振動」「光」にとても敏感に反応します。たとえば、画面にあるものが光ったとして、「冷たいのかな」「熱いのかな」と思って手を伸ばしてみる。これも大事な探索行動だと思います。手を伸ばす、顔を向ける、呼吸が変わるなど明らかな変化があり、わくわくしている様子が分かります。ICT端末の活用事例として、紙コップと段ボールで作ったスピーカーがあります。これは、iPhoneを差し込むことで、耳が敏感な子がイライラしてしまう音も、蓄音機風の心地良い音色になります。これは子供たちと一緒に工作で作ることができます。
また、タブレットやスマートフォン向けに「Pace Sync(ペース・シンク)」という、体に何も付けずに顔を映し出している状態で脈拍を測定できる無料アプリがあります。ご飯を食べるときに、これをタブレットで起動させて、本人の顔を映し出すとそちらに意識が向くので、食事に集中させることができます。また、誤嚥(ごえん)でむせてしまう前に脈拍が急上昇するので、食事の補助もしやすくなります。それまでは、誤嚥を防ぐために心拍数を測る機器を身体に付けようとすると嫌がったので、とても役立ちました。
他にも、生徒が関心を示したのが「BEAKER(ビーカー)」という“手のひらで科学実験ができるアプリ”をコンセプトに作られた無料アプリ。140種類以上の元素をタップして融合させると色が変化したり、爆発したりとビーカーを使った科学実験をスマホで再現できます。高校生も学校で行う実験の代替装置として活用しているようです。当校の生徒は、物質がどういうもので、どんな化学変化が起きているのかまでは理解できませんが、「目の前でキレイなものが光る」「液体が揺れている」などの様子に強い関心を示します。
池田教諭手作りの紙コップのスピーカー。
スマートフォンから流れる音楽が心地よく響く