ウェアラブルデバイスを使用する、珍しいタイプの予防介護サービス「モフトレ」ですが、どのような経緯で開発されたのでしょうか。
実は最初に商品として世に出したのは「Moff Band(モフバンド)」という、音と動きを連動させて様々なゲームを楽しめるおもちゃだったんです。コンセプトは「子供から高齢者まで、身体を動かして元気になってもらいたい」というものでした。そのコンセプトはそのままに、より高齢者向けに展開したのが「モフトレ」です。
「Moff Band」のゲームの1つ。動きに合わせて楽器演奏が楽しめる。
当初から高齢者のニーズも想定されていたのですね。高齢者向けに製品を改良するきっかけは何だったのでしょうか。
以前、介護施設を見学させていただいた際に、入所者の皆様が身体機能改善のために運動をする時間、いわゆる個別機能訓練(リハビリテーション)の様子を見せてもらいました。みなさん一生懸命やっているんですが、思った以上に身体が動いてないんです。機能訓練指導員の動きを真似て大きく腕を上げているつもりでも、実際はほんの少ししか上がっていない。自分の身体の状態を客観的に見るのは難しいんです。機能訓練指導員の方も、入所者全員をゆっくり見ている余裕はありませんから、「やっているか、やっていないか」以上の診断をするのは厳しい状態です。これでは、せっかくのプログラムが勿体ないと感じました。
施設でのリハビリには3つの大きな課題があります。「時間が限られていること」、「数値データに基づいた論理的な指導が難しいこと」、そして「スタッフの業務負担が高いこと」です。これらの課題を解決するため、「簡単に・やりがいをもって・なるべく楽しんで」リハビリができること、を「モフトレ」で実現しようと考えました。
つまり、「準備になるべく時間がかからないこと」、「目に見える成果が表れること」、「高齢者が自ら進んで実践してくれるようなプログラムであること」が機能として必須だったわけです。
自分たちの技術で人が楽しく生きるサポートをしたい、と語る熹汲ウん。