では、認知症予防の観点では、VRはどのような価値があるでしょうか。
藤井:認知症予防には、運動が有効だとされていますよね。VRレクリエーションは運動促進を直接的な目的にはしていませんが、自然と身体を動かすことにはつながると思います。というのも、介護施設の現場で働く方に話を聞くと、いつもぼんやりと座っているだけだったとある高齢者の方が、VRを見はじめると立ち上がったり、首を動かしたりして、積極的に身体を動かすようになったそうです。
人間は年を取ると、特に首をあまり動かさなくなるんです。そうすると首の筋肉が固まって首が回りにくくなります。そのため、VRを楽しみながら軽いストレッチができるという意味でも、健康維持につながる価値はあると考えています。
VRは、最先端ICTに分類されるテクノロジーです。これからICTはどのように発展していくと思われますか。
藤井:VR技術の枠にとどまらず、あらゆるICTデバイスが進化して、デバイス同士がシームレスに接続できるようになり、人と人をよりスムーズにつなげることが可能になっていくと思います。ICTにより不安なく、効率よく、コミュニケーションできるようになると、人が得られる情報量が増えていくことになります。
しかし、意識が扱える情報量というのは限られているんです。たとえば、テレビの解像度はますます良くなっていますが、見えている情報をより綺麗にしていくアプローチは頭打ちになってしまいます。すでに時代遅れだと思いますね。それよりは、無意識の部分にICTを通して情報を与えることで、いまよりも多くの情報を扱えるようになるのではないかと思っています。
脳科学や健康の見地を交えながらVRの効果を語る藤井氏