最初に、「見守り・交流アプリ」を開発した背景について教えてください。
栗田将行さん(以下、栗田):以前からICTを活用した情報源の一元管理や、色々なサービスにアクセスできる仕組みづくりの構想がありました。その中で、高齢者の孤独・孤立に対して地域の活動やサービスなど社会参加の機会等社会関係の処方(社会的処方)をICTでスムーズに実現できないか検討してきました。
社会には福祉に関する窓口がたくさんありますが、高齢者の方がどの窓口で何を相談できるのかを見極めることは難しいようです。そこで、高齢者の会食会参加や傾聴ボランティアの紹介などを総合的にコーディネートすることで、合理的に地域資源を支援に生かせると考えたのです。
ところが、新型コロナウィルスの感染が拡大し、計画を変更せざるを得なくなりました。そうした中、まずは着手できることからやってみようというところで、ICT活用のハブとなる「見守り・交流アプリ」を開発することになりました。
そのアプリについて教えてください。
栗田:このアプリは、一般的に使用されているビデオ会議アプリのZoomやTeamsのように、オンライン上で顔を見ながら同時に会話ができるサービスを提供するものです。複数の参加者が同時に顔を見ながら話ができる「みんなで通話」機能は、画面をワンタップするだけで、同時に最大5人繋がって会話できます。画面上に映る顔が小さくなり過ぎないように考慮した結果、上限を5人としました。電話と異なり、顔を見ながら会話できるので、支援者の皆さんから「相手の表情や顔色から体調を窺うこともできるのでとても良い」といった意見が寄せられています。
インターフェイス。利用頻度が高い「みんなで通話」は複数人と会話できる機能、「みんなで見る」は利用者が同時に写真や情報を見ることができる機能
民間企業が開発したZoomなどの既存アプリを利用せずに、独自でアプリを開発された理由は何でしょうか?
栗田:既存のアプリは、繋がるまでに数工程がかかります。例えば、LINEの場合はグループを組んだり、通話の相手を選んだりしなくてはいけません。アクションを1つ程度に留めないと高齢者の多くは使えないだろうと考え、独自開発に踏み切りました。高齢者の皆さんが不安がらずに、かつスムーズに使えることが最も重要だと判断した結果です。