平成13年度「高齢者・障害者等が利用しやすいホームページの普及に向けた支援システムの実証実験」に参加した仙台地域の参加メンバーにより、一年間検討を行ってきた成果として、この「ウェブアクセシビリティ確保に向けての目標」をまとめることにしました。
高齢者や障害者にとっても、ウェブは重要な情報源になっています。ウェブで情報を発信していくにあたり、私たちには「高齢者や障害者など、心身の機能に制約のある人でもウェブで提供されている情報に問題なくアクセスし利用できること」を保証するため、アクセシビリティに配慮したコンテンツ作成を行っていくことが求められます。
私たちが実証実験仙台地域での交流会に参加し、そこで検討を行ってきた成果として、ウェブアクセシビリティを確保するために最低限必要と思われる重要なポイントを、以下のようにまとめるに至りました。今後私たちは、ここに記された内容を遵守しながらホームページ(ウェブコンテンツ)の制作にあたりたいと思います。
[1のチェックポイント] [1の解説]
[2のチェックポイント] [2の解説]
[3のチェックポイント] [3の解説]
[4のチェックポイント] [4の解説]
WWW(ワールドワイドウェブ、以下ではウェブと略称します)は、高齢者や障害がある人たちにとっても重要な情報源になっています。例えば全盲の人はウェブによって、その量や入手のタイミングも健常者と変わりなく必要な情報にアクセスすることが可能となりました。
では、全盲の人はどのようにウェブにアクセスしているか知っていますか?
もちろん彼らは、HTMLで表現されたコンテンツを見ることで、そこに記されている情報を把握しているわけではありません。ウェブのコンテンツに書かれているテキスト情報を、音声で読み上げてくれるソフトウェア(音声ブラウザといいます)を使い、耳で聞いて理解しています。
したがって、「場所は以下の地図を見てください。」といって地図の画像ファイルを掲載しても、全盲の方には必要な情報を伝えることができません。画像を音声で読み上げるような技術が無いから当然です。
そこで、ウェブコンテンツを作る際には、必要な情報を画像だけで伝えようとしてはいけません。画像には必ず代替テキストを付けるといった配慮が必要となります。これは、全盲で音声ブラウザを利用しているウェブアクセスユーザへの配慮としての一例です。
ウェブで情報を発信するということは、情報を伝えたい、あるいは伝えなければならないという要求なり必要性があるはずです。
したがってウェブで情報を発信する人は、どのような人達がいて、どのような手段で自分の発信している情報にアクセスしているかをよく知り、すべてのウェブアクセス者に対して必要な情報を必ず伝えられるようにウェブコンテンツを作る必要があります(情報伝達の保証)。
まずは以下のウェブサイト等で、どのようなウェブアクセスユーザがいるのかを理解しましょう。
すべてのウェブアクセスユーザに必要な情報を必ず伝えられるよう、以下のチェックポイントを遵守してコンテンツを作ります。
音声ブラウザやテキストブラウザを使っているユーザは、画像情報を認識できません。alt属性で指定される代替テキストがないと、そこに何が表示されているのかがわかりません。意味のない画像であれば必要ないのですが、その場合は明示的に省略して下さい。ただ画像があることだけしか分からないのでは、とても不安な気持ちになります。
聴覚障害者は、オーディオファイルなど音声情報の内容が理解できません。また画像同様に、視覚障害者には映像情報の内容が理解できません。
日本人の1割以上の人が、ある色とある色の組み合わせが判別できない、または判別しにくいという、何らかの色覚障害を持っていると言われています。また、高齢になるにつれ色の識別が困難になることがあります。こうした人達にとっては、地の色と文字の色のコントラストが低いと文字が読みづらいため、内容の理解が困難になります。区別し易い色の組合せを使うように心がけます。ただし、コントラストをはっきりさせるために派手な色遣いをしたり模様の入った背景画像を使ったりしますと目が疲れますので、また注意が必要です。
フレームに対応していないブラウザでは、内容を正しく表示できません。また音声ブラウザでは、フレーム内ページごとを独立したページとして扱うため、フレーム間を行き来するのが難しくなります。NOFRAMES要素を使っての対応も可能ですが、完全に同期させることが実際は困難ですので、最初から使わないようにします。
テキストブラウザや音声ブラウザを使っている場合、あるいは色覚に障害のあるウェブアクセスユーザは、色の違いを認識できません。そうした場合に、例えば「時刻表の赤字は特急です」といった色によってしか区別できないような表現をされると、内容をまったく理解することができません。
PDFはたいへん便利なデータフォーマットです。決して使って悪いわけではありません。ただし、音声ブラウザには対応していませんし(英語版では対応も進みつつあります)、PDFリーダーをすべての人が使っているわけでもありません。
ページの中に文字コードが指定されていない場合に、ブラウザは文字コードを自動判別しますが、常に正しく機能するとは限りません。もし文字化けが発生すると、その制御方法を知らないユーザはページの内容をまったく理解できなくなりますので、文字コードは必ず明示します。また、自然言語(日本語や英語などの文書で使用している言語のこと)をlang属性を用いて明示することにより、音声ブラウザや点字ブラウザは、たとえば同じ綴りをする別の言語の単語でもより正確に変換することが可能となります。
(例)Shift_JISの場合は<meta http-equiv="Content-Type" content="text/html; charset=Shift_JIS">のようにします。
(例)日本語なら<html lang="ja">とします。
(例)英単語が出てきた場合に<span lang="en">sunflower</span>とします。
音声ブラウザでは、テーブルはセル(脚注)ごとに、行の左から右に向かって一行ずつ読み上げます。もしレイアウトにテーブルを使っている場合、最も重要な情報に行き着くまでにたいへんな寄り道をしなければならないことがあります。また、適切なタグ付けがなされていない見出し項目数の多いテーブルは、読み上げられているうちに見出し項目間の関連づけが理解できなくなってしまうため、内容を把握することが非常に困難です。
文書の体裁を整えるために、氏名という漢字が「氏 名」のようにスペースを入れて記載されていたり、br要素を使って強制改行されていることがあります。しかしこれを音声ブラウザなどで読み上げると、文字が離れていたり改行されているために一つの単語や文節と認識されず「し」「な」等と一文字ずつ読み上げられ、意味が通じなくなります。したがって、文書の体裁を整えるために、単語内や文章の途中にスペースや強制改行を置いてはいけません。
テキストブラウザや音声ブラウザでは、操作の効率性を高めるために、ページ内のハイパーリンクが設定された部分だけを抽出して一覧表示してくれる機能があります。これは目次としての役割を果たすため、このようなブラウザを使っている視覚障害者にとっては、たいへん便利な機能です。また音声ブラウザを使っている場合には、一度ページ全体を読み終えたのち、再度ハイパーリンク部分だけを飛ばし読みしながら次に進むページを探すという使われ方がされます。
しかし、例えば「ここではAの要件が、こちらではBの要件が確認できます。」といったコンテンツでは("ここ"と"こちら"がハイパーリンクの場合)、リンク先一覧として「ここ」「こちら」しか示されないため、それぞれのリンク先の区別がつきません。
リンクを示すテキストだけを読んでも、そのリンクの行き先がわかるようにコンテンツを作成します。ただし、あまり長い記述は適しません。
ウェブでは内容の更新が容易に行えるため、情報発信者側にとってはとても便利な情報伝達手段と言えます。ただし紙媒体とは違い、ユーザはウェブページ全体にレイアウトされた情報をディスプレイという限られた表示範囲を移動させながら見たり読んだりしなければなりませんし、複数のページを同時に広げて見比べたりすることがほとんどできないため、内容の全体像を把握するには難しい媒体と言えます。これはディスプレイにHTMLを表示させるブラウザでのことですが、音声ブラウザや点字ディスプレイを使っている場合には、もともと一度に把握できる情報が限られますので、なおさらです。
さらに、記憶が衰えがちな高齢者や知的障害のある方、子供達、あるいは音声ブラウザや点字ディスプレイを使っているユーザにとっては、数多くのページが相互に複雑にリンクしあって構成されるウェブサイトの仕組みが原因となって、自分の今いる位置を見失いがちです。そのため、目的の情報に辿り着くことが困難であったり、以前訪ねた場所(ページ)に戻ってくることもままならない状況が発生します。
こうした原因により、ユーザはたびたび目的の情報を探し出すまでに多大な労力と時間を費やさなければならない状況に陥り、場合によっては目的の情報に到達する前にその探し出そうとする行為を止めてしまいます。
そうすると、情報発信者側は情報を発信するという目的なり必然性を果たすことができないばかりか、そのユーザは二度と自サイトを訪れてくれないかもしれません。これは、サービスの低下だけでなく、ひいては信頼の失墜にもつながります。
その情報を発信する意義と目的をよく考え、ユーザが求める情報を容易にかつ的確に把握できるよう、ウェブサイト内のページの構成やページ内のレイアウト、コンテンツの配置やその内容、段落のまとまりや見出しの付け方などにも注意して、分かり易いコンテンツづくりを目指しましょう。
ウェブでの情報発信の場合には、あくまでアクセスユーザに主体的に情報を見つけ出してもらわなければなりません。アクセスユーザが目的の情報を容易に探し出せるよう、ユーザの立場からコンテンツの分類構成を考え、サイトを構築しまた内容を記述する必要があります。
音声ブラウザでは、現在自分がいるページを知りたいときや、以前に見たページの履歴を確認するときに、ページのタイトルを頼りにします。複数のページに同じようなタイトルがついていたり、タイトルが適切でないときには、自分がどのページにいるのかがわからなくなります。
サイトマップや目次など、サイト全体の構成についての情報があれば、目的の情報にたどり着きやすくなります。またナビゲーションバー(脚注)などにより、いま自分がサイト内のどこにいるのかが明示されることで、複雑に相互にリンクされたサイトの中でも、比較的容易にページ間の関係が把握でき、次に進みたいページを見極めることができます。
ただし、サイト内で一貫したルール(形や表示される場所など)でその仕組みが提供されないと、ユーザが使用する際に戸惑う原因となります。
ページによって同じ言葉が違う目的で使われていると、ユーザが混乱します。また、ページによって同じ概念を違う言葉で呼ぶことも、ユーザの混乱につながります。たとえば、ホームページへ戻るためのリンクボタンに「トップ」「TOP」「ホームページ」「HOME」のような様々な画像やリンクテキストを混在して使ってはいけません。
いろいろな情報が混ざり合って記述されている文章や、非常にたくさんの文字がいっぱい詰め込まれたコンテンツは、たいへん読みにくく、ユーザがその情報を理解するのが容易ではありません。(マークアップについては脚注を参照してください。)
1ページ内の情報量が多すぎると、長いあいだ集中力の持続が必要で、ユーザがその情報を理解するのが容易ではありません。また、肢体不自由などの理由により画面をスクロール(脚注)するという操作が難しいユーザもいます。
情報の内容によっては、図やグラフ等で示した方が視覚的に分かりやすいということがあります。ただし、音声ブラウザやテキストブラウザを利用しているユーザもいますので、必ず同等の役割を果たすテキストをつけるなど、情報を伝える代替手段を提供するようにします。
インターネット上の情報量は非常に膨大で、その中から必要な情報を見つけだすことがたいへんな作業となる場合があります。コンテンツがアクセスユーザにとって分かり易く、明瞭かつ簡潔で、正しい文章で書かれていることで、情報がより伝わりやすくなります。
(例)アイデンティティ、インセンティブ、サプリメント、ネチケット、
ポータルサイト、ポートフォリオ、コラボレーション、etc
(例)「alt属性が記述されると、よりアクセシビリティが確保されます。」
→「alt属性を記述すると、よりアクセシビリティが確保できます。」
例えばコンテンツの更新を繰り返しているうちに、他のページにある関連情報の更新をし忘れて、ページ毎に内容が違ってしまうことがあり得ます。そうすると、読者(アクセスユーザ)に正しく情報を伝えることができません。
ウェブコンテンツは、一般的にHTML(Hyper Text Markup Language)という言語で記述されています。これはもともと文書交換を目的とした共通のフォーマットとして開発された言語ですので、基本的にはどのブラウザでも内容把握には問題ないレベルで同じように表示されるはずです。しかし各メーカーが、各社のブラウザを用いた場合のウェブページの表現力を向上させるために、独自要素(タグ)を次々に追加したため、本来の共通性は失われ、ブラウザに依存するコンテンツが溢れ出してしまいました。つまり、特定のブラウザでなければ、内容がきちんと伝わらない状況が発生してしまっています。
そこで、HTMLの標準仕様の策定に取り組む国際研究団体のW3C(World Wide Web Consortium)では、HTML4.0以降、HTMLから表示方法やレイアウトなど表現に関する部分を排除し、表示方法についてはスタイルシートを使用して制御する方針を打ち出しています。
このように、ウェブの世界でも様々な仕様が存在してしまっているため、たとえHTMLで書かれたコンテンツでも、ユーザーエージェントによってはきちんと内容を表示できなかったり、操作できない状況が発生します。こうした問題の発生を最小限に抑えるため、ウェブに関する世界標準として私たちはW3Cのテクノロジー(HTMLやCSSなどの仕様)とガイドラインにしたがってコンテンツ作成するようにします。
ただし、W3Cのガイドラインに完全にしたがったからといって、現時点ではさまざまなユーザエージェントを使用する全てのユーザに不便を強いることはない、とは決して言い切れないということを忘れてはなりません。
各ブラウザが独自に採用している要素タグを使用すると、他のブラウザではきちんと表示されないことがあります。また、本来の目的以外に要素タグを使用すると、ユーザエージェントによっては適切に変換されず内容が正しく伝わらない場合があります。
理想的なHTML4.01の文書を作成したい場合に使用。
非推奨の要素や属性も使うことができますが、フレームは使用することができません。
Transitional DTDに加えてフレーム関連の要素を使うことができます。
音声ブラウザなどでは、DOCTYPEからそこで使用されているDTDを判断し、それにあわせて変換する機能を有しているものがあります。また、必要なメタ情報(脚注)などをきちんと記載しておくことで、ユーザエージェントによってはユーザを補助する機能が有効に作動するようになります。さらにはサーチエンジンが適切に情報を収集できるため、ユーザが目的の情報を見つけ出しやすくなります。
特に文字コードが指定されていないと、文字化けが発生し、対処方法を知らないユーザには、全く内容が伝わらなくなってしまいます。
表示方法(レイアウト)の制御は、内容の構造を示すマークアップ(脚注)から分離しスタイルシートにより実現することで、どのようなブラウザでもより正確にコンテンツの内容を伝達・変換することが可能となります。また、ユーザ側が個々の特性に応じて独自のスタイルシートを適用することができるため、最も自分に適した表示条件で閲覧することが可能となります。
フォントサイズ(文字サイズ)を絶対単位で指定にしていると、ユーザが自由に変更することができません。デザインが崩れることを嫌いフォントサイズを固定にする場合がありますが、ユーザによって見やすい字の大きさは様々ですし、使っているOSやブラウザ、ディスプレイの解像度などによっても見え方は違ってきます。同様の課題から、その他の属性値でも表示サイズや位置を指定する場合には、相対的な指定を行います。
(例)スタイルシートを用いて見出し(h2)サイズをパーセント指定する例
h2 { font-size: 150% }
機種依存文字は文字化けの発生原因になりますので、使用しないようにします。
ASCIIアート(文字や記号で表した絵)や顔文字は、そもそもはテキスト情報であるため、そのままでは音声ブラウザや点字ディスプレイを使っている場合に全く本来の内容と異なった内容として伝わってしまいます。
新しいウィンドウが開くことで、それを閉じるという行為が必ず必要となりますが、操作が不自由な人にとってはたいへんな負担となります。またメモリが少ないPC環境では、フリーズ(脚注)の原因ともなります。
さらに、新しいウィンドウが開いたことを目で確認できない人や、目で確認できても新しく開いたウィンドウと今まで見ていたウィンドウの区別がつきにくいため、ユーザが両者を取り違えて認識してしまうことがあり、なぜ突然ブラウザの戻るボタンが使えなくなったのか分からず混乱するといった問題が生じます。
画面上のアイコンや文字が点滅したりスクロール(脚注)するなどの動きがあると、認識や視覚に障害がある場合に、その動きに対応できない可能性があります。特にフリッカー(ちらつき)やフラッシュするディスプレイ(脚注)は光過敏性のてんかん発作を引き起こしかねません。
操作が不自由な環境にある場合、自動的に再生されるオーディオや映像を停止させることが困難です。また音が聞こえないユーザにとっては、自分が知らないうちに音が流れ出し、まわりに迷惑をかけてしまうこともあり得ます。またBGMは、音声ブラウザを使っている場合に読み上げの声とBGMの音が重なり、内容を理解するのが困難になります。
細い回線でアクセスしている場合には、ファイル容量が大きいと表示されるまでに時間がかかり、ユーザは必要な情報になかなか到達できません。またユーザに対して、そのかかった時間に応じた通信費の負担を強いていることを認識する必要があります。
先にウェブの標準仕様としてW3Cテクノロジーとガイドラインに沿ってコンテンツを作成することとしましたが、一般に使われているブラウザでは、未だにW3Cテクノロジーがきちんと反映されないことが多いのが現実です。そのため、きちんとしたHTMLでコンテンツが作成されていたとしても、ブラウザごとに表示が大きく異なってしまい、デザイン云々以前の問題として、きちんとした表示がなされない問題が発生することがあります。
また逆に、ブラウザによってはW3Cの仕様にあわない間違ったタグ付けがなされていても、見栄え上は問題なく表示されてしまうことがあります。そのため見た目は変わりなくても、コンテンツ制作者の意図するところとは別の挙動を示すコンテンツになってしまっていたりすることがあります。なお、視覚的ブラウザでは問題なく表示されていたとしても、音声ブラウザなど他のブラウザでは、内容がきちんと伝わる形で再現されるとは限りません。
さらに、アクセシビリティにいくら配慮してコンテンツを作成したとしても、HTMLのソースはたいへん複雑ですので、全ての対処必要項目に対して確実に対応することは、たいへん困難です。
こうした問題の発生を避けるためには、自動的に問題箇所を発見・指摘してくれるツールを使って、作成したコンテンツを機械的にチェックすることが効果的です。こうした便利なツールが、インターネット上ではいくつも無償で公開されています。
構文チェックのツールには以下のようなものがあります。
アクセシビリティをチェックできるツールには以下のようなものがあります。
以下のようなブラウザで確認します。