20世紀、日本は健康な成人男性を基準にして行政施策や製品開発を行ってきました。まちづくりやものづくりも、女性、子ども、障害者、高齢者などの使い勝手は二の次、三の次だったといっても過言ではありません。しかし、21世紀、日本は超高齢国家になり、いままでの人口構成にも大きな変化が起こっています。2005年の今年、成人人口の50%が50代を超えます。20歳以上の人たちの半分が、50歳以上という時代なのです。
人間は誕生してから死ぬまで、さまざまに変化していきます。誰にも、加齢により、視覚にも、聴覚にも影響が出てきます。指先の巧緻性や記憶力も、若いころと同じというわけにはいかないことも増えてきます。しかし感性や知恵は、むしろ年齢や経験を重ねることにより、熟練の域に達することも多いのです。高齢者はわれわれの先輩であり、障害者は高齢者より早く障害をもった、われわれすべての大先輩といえるでしょう。
これからますます進む少子高齢社会で、シニアや子育て中の世代の意見を聞かずして、行政施策はありえなくなります。企業にとっても、最も可処分所得の高いシニア層や女性を無視した製品開発は成り立たないでしょう。労働人口の減少にともない、これまで欧米諸国に比べ非常に遅れていた感のある、女性や障害者、シニアの社会進出も進むはずです。
そうしたことに敏感に反応する自治体や企業も増えてきています。ユニバーサルデザイン先進県といわれる熊本県では、温泉雑誌にカラーの見開き広告をうって、「ユニバーサルデザインの熊本へどうぞいらしてください」と、移住や旅行を勧めています。ユニバーサルデザインの行動目標を県職員各人が設定し、年度末にはその達成度を報告するようになっているといいます。
また、熊本や三重などの自治体もですが、松下電器やTOTOなど、社員全体にユニバーサルデザイン研修を行う企業も増えてきています。UD車両(ユニバーサルデザイン車両)に関するトヨタなどのテレビコマーシャルも増え、市民の認知度も高まってきています。『日経デザイン』という雑誌の2004年7月の調査では、認知度は75%でした。また、ユニバーサルデザインを重要だと考える人も98%に上がっています。
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原本作成日: 2005年9月13日; 更新日: 2019年8月19日;