「視覚障害者と共に歩む会ハーモニー」(「NPOハーモニー・アイ」)が、今年の5月に「Webアクセシビリティシンポジウム」という会を開きました。そのシンポジウムで、視覚障害のある佐々木さんがある体験を話してくれました。それは次のような内容でした。
『私は、温泉や飲み屋の選択にホームページを使っています。昨年7月、ネット検索で探した「ビア・スパークしもづま」に行きました。「温泉、日帰り、安価食事」といったキーワードを入力して検索サイトを渡り歩き、ここぞと思う三件をリストアップして、最終的には電話で確認し、決めました。延べ15時間程度かけました。音声で施設の場所、価格、温泉質、食事メニュー、付帯設備などを聞いていくので、どうしても時間はかかります。
この「ピア・スパークしもづま」は、視覚のある頃は知らなかった温泉施設であり、視覚を失っても自力で希望のところを探し出して行けたことに無上の喜びを感じていることを分かっていただきたいです。(一部内容を変えず削除、要約してあります)』
この言葉には、時間がかかったけれど自力で探し出して温泉を見つけたことへの喜びがあふれています。また、このシンポジウムでは主婦の成田さんも次のように発言しています。
『私は中途失明で十年程前から視力低下をきたし、今はほとんど見えない状態です。主婦なので一番困ったのは毎日の買い物です。スーパーに行って店員さんに尋ねても、「あそこですよ」と言って、立ち去ってしまう。「あっち」とか、「こっち」とか言われても対応できずに苦労しました。その後、テープを聴いて注文する買い物システムがあると知りました。長時間、商品案内のテープを聴き、その中から買いたい物を選んで、別のテープに吹き込み、発注するシステムです。視覚障害者でも可能という利点はあっても、かなり面倒でした。その後、インターネット注文を開始しました。すると、1番から999番までの商品が音声で紹介されて出てきました。見える方なら、見ながら注文を出すところなのでしょう。音声ながら、私はそれと同じような気分になり感激しました。今は、このシステムを利用して日々の買い物をしております。(一部内容を変えず削除、要約してあります)』
成田さんも、画像は見えないけれどそれでも、自分で選択できる、自ら選び取って行動することの喜びを語っています。
確かにホームページの活用にはまだまだ多くの課題が残されています。しかし、それを補って余るほどの大きな恩恵を視覚障害のある人たちが受けていることがわかります。インターネットが利用できるようになって、彼らの情報のチャンネルは爆発的に太くなったのです。視覚障害のある人の情報は、ブロードバンドの普及とともに、まさにブロード(広く)になったのです。
「視覚障害者と共に歩む会ハーモニー」主催「Web アクセシビリティシンポジウム」の様子
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原本作成日: 2005年10月31日; 更新日: 2019年8月6日;