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女優、忍足亜希子さん(ろう者)に聞く聴者とのコミュニケーション(2/5)

2. 演技をするのに苦労されたことはありますか?

はじめは、演じることで心理的なこと、特に悲しい、淋しいという気持ちを出すのに時間がかかりました。泣くシーンでは、正直いってその場で泣けるかなあとちょっと心配したこともありました。観る側から演じる側になってとまどうことはありましたが、お客様にいい作品を観ていただきたいと、責任をもって演じるようにがんばりました。

映画などの撮影現場では手話コーディネーターさんが付いてくれます。「アイ・ラヴ・ユー」の撮影現場などでは、スタートする時やカットする時の合図は、ろうの私にもわかるように「用意! スタート!」と手話コーディネーターが腕をあげて刀で切るような動作を工夫してくれました。

演技のときは、画面を観たときの位置を考えながら、そのキャラクターの特徴などに合った手話をします。モニターを見てチェックしてもらい、カメラが映す向きによって、手話がわかりにくいときには、右手で行う動作を左手に変えたりもしています。また、声のトーンの強弱を変えたりするように、手話も早くしたりゆっくりしたり、また強弱の表現を使い分けたりします。

テレビCMに出演したことがあるのですが、ある撮影では、決められたセリフを15秒という短い時間内で、手話で表現しなくてはいけなかったので、いつもより早くて大変でした。自分でも読み取れないくらいの早さだったんです。手話で伝えるのは、早くも遅くも可能ですが、こんな短い時間内で、伝えるのは技術がいるんだなと思いました。本当は、手話がハッキリわかる形で余韻があった方がいいんです。スタッフの方に手話のことをきちんと説明して、もっと時間に余裕をもって撮影してもらえたらよかったなあと思っています。

手話は手や指だけを使うのではなくて、顔の表情や身振り手振りも使って伝えています。人それぞれ声や話し方が違うように、手話にも人それぞれの個性が出ます。早口だったり、ゆっくり話す人がいるように、手話の動きも速い人や遅い人がいるんですよ。怒っているときには、思わず手話の動作が早くなったり、激しい動きになることもあります。手話には気持ちがストレートに表われます。

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