「AIスーツケース」を社会実装する際、どのような課題があり、それを乗り越えるためにどのようなことにチャレンジしていますか。
高木:まだプロトタイプの段階ですが、屋内版の「AIスーツケース」は、あと一歩で来館者の方に定常的に使っていただけるレベルまで完成しています。一方で、屋外になるといろいろな課題があります。一つは、交通や歩行のインフラに関して、「AIスーツケース」は階段などの段差を苦手としています。ただ、「AIスーツケース」には、自動的に安全に目的地まで連れて行ってくれるという強みがありますので、視覚障害者の新たな移動の選択肢としてたくさんの方に利用いただければと思っています。そのために、まずは未来館のような場所で社会実装することを初期の目標としています。その後は、ロボットを導入・運用しやすいロボットフレンドリーな環境が実現された施設で利用していただく可能性もあると思います。
その他にも、「収益化」・「技術」・「インフラ」などの壁があります。
「収益化」について考えてみると、現状のままでは高額の販売価格にならざるを得ないため、個人で購入することは難しいと思います。そのため、最初はレンタルによる普及を考えています。しかし、レンタル料だけでビジネスとして成立させることは難しく、ビジネスとして持続させるには、公的な支援や寄付を視野に入れる必要があるかもしれません。
「技術」についてみると、人混みに対処しなければいけません。しかし、現在のロボットでは、大勢の人の流れに合わせて動くことが難しく、周りに多くの人がいると停止してしまいます。そのため、人混みでも移動できるようにロボットに搭載する様々な技術をアップデートする必要があります。
「インフラ」における主要な課題は、エレベーターや信号機です。エレベーターや信号機がAIスーツケースに直接通信を提供する仕組みがあれば、「AIスーツケース」はよりスムーズに誘導できるようになります。