一般作品でいう「日本語字幕」と聴覚障がい者向けの「日本語字幕」で、どこがどう違うのかと不思議に思われるかもしれませんが、よく言われる"1行に12文字" "1画面に2行"というような字幕制限などの条件はほとんど同じです。
特徴的な部分といえば、出演者がスクリーンに背を向け演技をしている場合、話者(話している人)がわかる工夫を施す必要があるという点です。また、スクリーンの外の部分からの音声や効果音を表示する必要もあります。
※写真3 話者がわかる工夫(映画「明日への遺言」より)
たとえば、窓の外で雨が降り出したことを表す場合、「ザーザーザー」ではなく、「雨の音」と表記します。
健常者や中途失聴者(成長してから聴覚を失った方)であれば、経験から理解できる擬音も、生まれたときから聴覚を失っている人では理解することが難しいからです。
視覚障がい者向けの「音声ガイド」においても、同じような工夫が必要となります。
先天性全盲の方の場合、「おばあちゃんの姿がどんどん小さくなっていく。」という音声ガイドでは”近づけばモノは大きく、離れれば小さくなる”という遠近法の感覚を経験していないため、出演者が遠ざかっていく場面であることが伝わりません。
そのため、このような場合は「おばあちゃんの姿が遠ざかり、どんどん小さくなっていく。」と言葉を補足する必要があるのです。
当社の場合、視覚障がい者向けの「音声ガイド」や聴覚障がい者向けの「日本語字幕」を作成するにあたっては、実際に障がい者・映画関係者の方々に協力していただき、モニター試写を繰り返しながら進めています。
しかし、「音声ガイド」だけでは説明しきれない情報も少なくありません。
そこで考えたのが「触図(しょくず)」です。
まだ実験的な試みなのですが、映画で登場する地形や建物のレイアウトといった情報を 図面として触れてイメージ補完できるようにと、視覚障がい者向けに作成したものです。
※写真4 「触図(しょくず)」(映画「西の魔女が死んだ」向け)
映画の場面を想像する上での助けになったとの声だけでなく、健常者がパンフレットを楽しむかのように、映画の思い出を残せると、視覚障がいのあるお客さまには非常に好評でした。
※写真5
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原本作成日: 2010年4月12日; 更新日: 2019年8月23日;