全ての自動翻訳機が抱える問題として、誤認識があります。つまりアナウンスの内容をただちに自動認識・翻訳して流すといった場合に「間違った翻訳をするかもしれない」ということです。このような不安があれば、例えば正確を要する交通機関では、なかなか使いづらくなってしまいます。そこで「おもてなしガイド」には、情報を正しくするための独自の技術が組み込まれています。
ほとんどの場合、鉄道会社や商業施設ごとにアナウンスの台本・マニュアルがあります。「おもてなしガイド」では、アナウンスされた内容を認識して、その内容と台本・マニュアル内容の突合せをおこなったり、アナウンスが行われているシチュエーションを分析するなどして、さまざまな補正をかけて正しいアナウンスの内容を導き出します。
東京のJR山手線で説明してみましょう。まず山手線の駅は決まっています。例えば、「大崎駅」を「大阪駅」という誤認識をしたとします。そうすると、「大阪駅」は山手線にありませんので、「大崎駅」と情報を正していきます。さらに位置情報やダイヤの情報なども考慮して、修正作業を複数回行って実用に耐えるレベルの正確な情報を提供していくのです。だからこそ、交通機関でも商業施設でも安心して使っていただくことができます。
さらに、マニュアルにはない事態にどう対処するかも大切です。例えば、先日、東海道線の線路上にテーブルが投げ込まれて電車が止まったという事件がありました。その際に例えば、「現在、線路上に机が投げ込まれたため、停止しています。復旧の見込みはありません。」と日本語でアナウンスが流れたとしましょう。当然ではありますが、聴覚障がい者や外国人には何が起きているかがわかりません。そんな時に、利用者が一番欲しい情報、つまり、電車が動き出すのは5分後なのか、1時間後なのか、または復旧の見込みがないのか等をアナウンスから認識して必要な情報だけを文字情報として提供します。時間・復旧に関する部分はマニュアルに存在しています。ですから、この部分はきちんとマニュアル通り情報を出していきます。一方、マニュアルにない情報は省いていきます。ここでは「線路上に机が投げ込まれた」という情報が省かれます。結果的に「おもてなしガイド」には「トラブルのため停止しています。復旧の見込みはありません。」とだけ文字で表示されることになります。つまり、実用レベルの情報に補正した上で、絶対に必要な情報を確実に文字にして利用者に提供するのです。この仕組みは国際特許などを含めて今押さえているところで、これから世の中に対して役立っていくものになっていくと考えています。
その他にも、周辺案内など、聴覚障がい者や外国人の方に必要であろうという情報を、アナウンス情報に補足して文字と一緒に提供することも可能です。このように普通の自動翻訳機ではできないところ、人がサポートできないことを、「おもてなしガイド」だからこそできるサポートとしてプラスしています。聴覚障がい者の方に情報を提供する際には、バイブレーション機能でスマートフォン等の端末が震えて情報が入ったことを知らせることもできます。「おもてなしガイド」は、経済産業省の「Innovative technologies 2015」に採択されました。これは、日本の優れたコンテンツ技術を発掘し、評価するというものですが、こうした技術や機能開発の成果かもしれませんね。