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松江市立意東小学校特別支援学級で実践する、ICT端末活用のオーダーメイド学習支援

3 ICT を使った支援が当たり前になれば障害に対する不安は減る

これまで、ICTを活用してどのような児童を指導してこられましたか?

井上:たくさんのケースがありますが、中でも忘れられないのが、「低学年の課題でも読解は困難」と言われていた小学6年生のAさんです。5年生までのAさんは、学習が成立しないだけでなく、日常的に手が付けられないほど暴れる児童だったそうです。いざ受け持ってみると、とても賢い子であることが分かりました。

とはいえ、読みや書きには顕著な困難を抱えていたため、紙から情報を習得することも、書いて評価をうけることも難しい状況でした。「わかっているのにできない自分」に誰よりもAさん自身が苦しみ、いらだっていたのだと思います。

そんなAさんの可能性を大きく広げてくれたのがICTでした。Aさんは、家庭で日常的にパソコンを使っていたこともあり、端末の操作はとても巧みでしたので、読み上げとキーボード入力をあっという間に学習場面で使いこなせるようになりました。「自分が学ぶための手立て」を得たAさんは、どんどん学力を伸ばし、「低学年の課題でも読解は困難」と言われた状況から1 年間で 6 年分の熟語が読めるようになりました。さらに、算数・理科・社会では、6 年生の学習内容に取り組み、業者テストで 8 割以上の点数が取れるほどの力をつけました。そして、「できる自分への見通し」「やりきる自分への自信」を得たAさんは、暴れたり跳びだしたりすることもなくなったのです。

Aさんの成長に周囲も驚いたのではないでしょうか。

井上:そうですね。AさんはICTという手立てを持つことで、自分の力をやっと示すことができたんだと思います。

ここで、メガネの話に戻りますが、近眼だと言われても不安にならないのは、「じゃあ眼鏡を買いに行けばいいね」と、解決への対処方法が分かっているからです。LD(学習障害)と診断されて不安になるのは、「それってどうしたらいいの?」と具体的な手立てが見えないからではないかと思います。

ICTには、学びにくさのある子の、努力だけでは補えない困難の背景をサポートする可能性があります。「じゃああなたに使いやすい機器を買いに行かなきゃね」と 、必要な子にはICT を使った支援が当たり前に選べるようになってほしいと願っています。

井上教諭はさまざまなアプリに目を通し、学習目的として開発されたものではなくても、役立つと思われるものがあれば学習に採用しているという

井上教諭はさまざまなアプリに目を通し、学習目的として開発されたものではなくても、役立つと思われるものがあれば学習に採用しているという

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