w
聴覚障害児が音楽を学ぶうえで、困難なことは何でしょうか。
山本カヨ子さん:音楽を作り出す要素には、「メロディ(旋律)」「ハーモニー(和音)」「リズム(律動)」の3つがあります。メロディは楽曲の「歌」にあたるもので、メロディを聞くと「あの曲かな」と思い浮かべることができます。ハーモニーは、2つ以上の音を鳴らしたときの音の響きのことで、音楽の明るさや暗さなどを表現できます。リズムは「拍」という単位に乗ってつくられる音の長さです。
この3要素のうち、聴覚特別支援学校の生徒にとって、メロディやハーモニーは聞き分けが難しいです。それぞれ聴力に差がありますが、人工内耳や補聴器で聞こえを補っても、聞き分けることは難しいことが多いです。
また、それ以前に、音楽を学習するうえで大切な拍の感覚もほとんどありません。健聴児の場合は、乳幼児でもリズミカルな音楽が流れてくると、自然と身体を動かしますよね。これは、耳にした音楽から無意識に拍やリズムを感じとっているからです。
ところが、聴覚障害児の場合、音としては聞こえていても、一定の時間的間隔をもって刻まれている拍や拍の流れを捉えることが難しい。そのため、拍の存在を教えて、リズムへと導くことが大事なのです。
聴覚障害児の音楽教育に詳しい、筑波大学附属聴覚特別支援学校小学部元教諭の山本カヨ子さん