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テラヘルツ・
リモートセンシング

私たち情報通信研究機構(NICT)のテラヘルツチームの主な研究対象は、テラヘルツ・リモートセンシングです。 電磁波の一種であるテラヘルツ波を使って、遠くは火星や木星、近くは目の前にある空気まで、いろいろなものを観測しています。 ここでは、テラヘルツ波とは何か、テラヘルツ波でどうやって観測をするのか、これまでの電磁波とは何が違うのか、 そして、どんな役に立つのかをご紹介します。

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テラヘルツ波
とは

テラヘルツ波は、電磁波の中で、電波と光(可視光線)の間にある領域です。明確な定義はまだありませんが、周波数でいうとおよそ0.3~30テラヘルツ(THz)、波長でいうと1~0.01ミリメートル(mm)の電磁波を指します。従来、電波はエレクトロニクス(電子工学)、光はフォトニクス(光工学)で扱われ、その境界領域にあたるテラヘルツ波は、従来は利用が難しいとされてきました。しかし近年の技術進歩により、高解像度の透過センシングや、大容量無線通信など、その周波数特性を生かした新しい使い方が次々と生まれています。

テラヘルツ波とは テラヘルツ波とは

可視光線や赤外線は、広帯域の観測が可能、鮮明な画像が得られる、といった特徴があります。いっぽう電波は、感度が良い、周波数分解能が高い、遠くまで届く、といった特徴があります。中間に属するテラヘルツ波を使うと、両者のメリットをほどよく生かした設計ができます。

リモートセンシング:
電磁波で観る

リモートセンシングは、電磁波などを活用し、人間の手や目の届かないところを「観る」技術です。人間は赤から紫の間にある電磁波(可視光線)を、眼の角膜や水晶体といったレンズを通して、網膜にあるセンサーで受け取り、その信号を脳で処理することによって物を観ています。それと同じように、赤外線や紫外線、あるいはテラヘルツ波やマイクロ波など、それぞれの周波数に応じた集光器やセンサーを使うことで、それぞれの周波数の世界を観ることができます。

周波数が異なると、見える世界は全く異なります。たとえば、人間の皮膚は、可視光線を使うと不透明に見えますが、X線を使うと透明になります。あるいは車などで使われるUVカットガラスは、可視光線を使うと透明に見えますが、紫外線を使うと不透明に見えます。透明かどうかも、観るのに使う周波数によって異なるのです。

あらゆる物質は、熱を帯びると、それぞれ固有の周波数の電磁波を放射します。また、外部から電磁波を受けると、やはり固有の周波数の電磁波を吸収し、それ以外を反射します。観測対象の発する電磁波を観測したり、あるいは、電磁波を当てて反射を観測したりすることによって、それがどんな物質でできているかを知ることができます。テラヘルツ領域では、分子間振動等に由来する吸収ピークを観測することができるため、比較的質量の軽い分子や、大気中の短寿命ラジカル物質(※)やイオンを検出できます。

※ラジカル物質:化学的に不安定なため
非常に短時間だけ存在する物質。

テラヘルツ・
リモートセンシングで
何がわかるか

テラヘルツ波は、惑星探査にとても適しています。人類が宇宙で活動していくためには、人体にとって必須である水や酸素をどのようにして確保できるかは重要な問題です。水に対して、全ての電磁波の中で最も敏感で検出感度が高いのはテラヘルツ波です。テラヘルツ波は、惑星の大気や地表にある水、酸素、二酸化炭素などの分子を、多種類同時に検出できます。

また、テラヘルツ波を使うことで、観測機器が小さくできます。観測精度は、アンテナの大きさに比例し、波長に反比例します。テラヘルツ波はマイクロ波やミリ波よりも波長が短いため、同じ観測精度を実現するアンテナを小さく作ることができます。宇宙ステーションや探査機の中のスペースはとても貴重です。機器が超小型であれば、ちょっとした隙間でも相乗りさせてもらうことができ、探査の機会が一気に増加します。

テラヘルツ波は、地球でも役に立ちます。温室効果ガスといわれる二酸化炭素CO2やメタンCH4、各種の大気汚染物質、オゾン層を形成するオゾンO3などは、すべて質量が軽く、テラヘルツ波による観測に適した物質です。地上からの観測では、観測地点が限られており、天候にも左右されます。人工衛星に超小型の探査機を搭載して、宇宙から観測することで、地球上の大気について、従来とは比較にならないほど精密なデータを得ることができます。

図:TEREX-1の観測シミュレーション. 水や酸素分子, その他微量成分の同時観測を狙う 図:TEREX-1の観測シミュレーション. 水や酸素分子, その他微量成分の同時観測を狙う
図2:TEREX-1の観測シミュレーション.
水や酸素分子, その他微量成分の同時観測を狙う

プロジェクトを支える技術

テラヘルツ波は高周波数の電波で、光と電波の両者の性質が混在しています。その性質を利用して、例えば、高空間解像度(光の特徴)かつ物質を透過(電波の特徴)するセンシング、超小型軽量なセンサ(高周波数の特徴)などを実現してきました。 このサイトでは、主にリモートセンシングによる惑星探査をご紹介しています。他にも、高速無線通信、非破壊検査、セキュリティ、医療などの領域での活用が期待されています。このページでは、その一端をご紹介します。

高速無線通信

テラヘルツ波の応用で、最も身近で、最も注目されているのは高速無線通信でしょう。 携帯電話や無線LANなど、電磁波を使った通信は生活に欠かせないものとなりました。通信速度が高速になるにしたがって、高い周波数の電磁波が必要になります。現行の携帯電話の4Gで使っている最も高い周波数帯は3.6GHzです。5Gでは28GHz帯も使うようになります。この調子で10年で10倍ずつ増えたとして、10年後もし300GHzを使うことになれば、それはテラヘルツ領域です。Beyond 5G は2030年頃のスタートが想定されており、今は世界中で様々なアイデアが提案されているところです。

無線通信ではチャネルモデリングという電波の伝搬モデルを持っていることが重要です。テラヘルツの電波は波長が極めて短いので、伝搬状況は物体や人の移動によって微妙に変化し、チャネルモデリングが複雑になります。私たちNICTの前身は電波研究所だったのもあり、この分野には強く、ミリ波までのチャネルモデルを持っています。 無線通信がいくら速くても、有線での送受信が速く正確でないと意味がありません。毎秒100ギガビットを超える送受信を実現する最先端光ファイバ通信技術と組み合わせることで、テラヘルツ無線信号送受信基盤技術を開発しています。

基盤技術:
テラヘルツ帯高感度ミキサ

電磁波を利用するには、電磁波を高精度に受信する技術(検出技術)と、特定の周波数の電磁波を発生させる技術(発信技術)が不可欠です。テラヘルツ帯、とくに1THzを超える周波数では、これらの基盤技術の開発がまだ十分ではありません。

私たちは、テラヘルツ波が広く利用される時代を見越して、テラヘルツ波の基盤技術についての研究開発を進めています。テラヘルツ帯に対応する高感度スペクトル検出器(Hot Electron Bolometer Mixer, HEBM)を、研究室連携によってデバイスから作製して開発しました。これを用いて、2THzを超える高周波での通信実験を行っています。また、テラヘルツ波量子カスケードレーザ(THzQCL: THz Quantum Cascade Laser)からのTHz波検出を行い、その信号を用いてTHz-QCLの位相ロックも実証しています。

テラヘルツ波
大気減衰率 提供サービス

テラヘルツ波は大気中における減衰が大きく、その減衰率は周波数に大きく依存します。そこで、標準的な条件下での、各周波数におけるテラヘルツ波減衰率を簡単に計算できるWebサービスを無償提供しています。テラヘルツ通信やテラヘルツ製品開発などにおいて、「テラヘルツ波が届く距離」を事前に見積もることができます。

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