TEREXTEREX

テラヘルツ火星探査機(TEREX)プロジェクト

人類が火星で活躍する日は、すぐそこまで来ています。コロンブスが彼らにとっての新大陸を「発見」したのはわずか500年前のこと。 現在のように飛行機ですぐに海外に行ける時代を誰が想像できたでしょうか。米国のNASAや日本のJAXAなど政府や公的機関だけでなく、民間企業も火星に進出することが現実的になりつつあります。 そのためには、まず、火星がどんな場所かについて精密に知っておくことが不可欠です。
私たち情報通信研究機構テラヘルツチームでは、世界初の超小型テラヘルツ火星探査機の開発を行っています。 テラヘルツ波を利用して水分子や酸素分子などの存在量を精密に測定し、水資源や生命の可能性を探ります。 安くて軽くて小さくて、相乗りでの打ち上げが可能な探査機を、定期的に火星に送り込む体制をつくることを目指しています。
現在、2つの探査機を開発しています。 TEREX-1は、火星に着陸して観測を行うロボットです。TEREX-2は、火星軌道上を人工衛星として周回して観測を行います。

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TEREX-1
火星に着陸して観測

TEREX-1 は、とても小さな着陸型の探査機です。本体部分は、ちょうどドラム缶と同じサイズ。それに大人の腕を広げたぐらいの太陽電池の「羽根」がついています。手を広げた横綱・白鵬関(身長192cm、体重151kg)と、高さと横幅と胴体はほぼ同じ、重さはそれより軽いです。本体はなるべくシンプルにして、より多くの科学者が独自の機材を搭載して火星探査を進めることを期待しています。

TEREX-1 TEREX-1
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TEREX-1の要:着陸

世界中でこれまで数多くのプロジェクトが火星の探査を試みましたが、その約半分が失敗しています。 惑星探査で最も困難なもののひとつがEDL、惑星への進入(Entry)、降下(Down)、着陸(Landing)です。なかでも火星のEDLは「恐怖の7分間」と呼ばれています。

EDLを成功させるには、様々な問題をクリアする必要があります。まず、火星の薄い大気の中で、進入速度を99%以上も低下させる必要があります。宇宙船の速度を下げるときは空気抵抗を使いますが、空気が薄いと抵抗が少なく、ブレーキがききにくくなります。 着陸前には非常に熱くなるので、熱に対する耐性も備えておかなければなりません。着陸時の速度もなるべく低下させ、落下による衝撃を小さくする必要があります。

TEREX-1 TEREX-1

TEREX-1の着陸機材は、エアロシェルとエアバックだけです(図)*。どちらも、非常に軽く耐熱性のあるZYLON®という素材の薄いフィルムでできています。エアロシェルは、できるだけ軽い材質で、大きな面積を確保するように作られています。広い面積のおかげで、高層大気で大きく減速できるため、地表近くで多量の熱が発生することを抑えられます。エアバッグは、衝撃を受けたときに内部からガスを放出することで、より衝撃を吸収できるようになっています。
*現在着陸機材についてはその手法から検討を進めております。

TEREX-1 TEREX-1

TEREX-2
人工衛星として
火星軌道を周回しながら観測

TEREX-2 は、超小型の人工衛星です。重さはわずか100kg。地上から高さ約400kmにある周回軌道を、5時間20分で一周します。
TEREX-2で観測する対象は、酸素O2、オゾンO3、水H2O、過酸化水素H2O2の4種類の大気分子濃度と温度と風速、磁場です。生きるために必要な酸素や水などが、火星のどこにどのくらいあるのか、人類史上最高の精度で知ることができます。
観測方法は2種類あります。大気を真上から観測する方法(ナディア観測)と、真横から観測する方法(リム観測)です。太陽は、空の真上にあるときは白っぽく、地面に沈むときは赤っぽく見えます。それと同じように、空の真上から観測するのと、真横から観測するのでは、テラヘルツ波で「見える」ものも異なります。

TEREX-2 TEREX-2

これまでに知られている事実から、観測結果を予想したものが下の図です。 グラフにある山や谷の位置・大きさ・幅などによって、酸素や水などの化学物質が、どの高度で、どれくらい存在しているのかがわかります。 実際の観測結果がこのとおりなら、ひと安心。もし違っていたら、大発見!です。

TEREX-2の観測シミュレーションの一例 TEREX-2の観測シミュレーションの一例
図:TEREX-2の観測シミュレーションの一例 (R.Larsson et al., 2018の図4参考)
(a)火星大気をリム観測した際の各高度におけるシミュレーション.
(b)火星をナディア観測した際のシミュレーション

TEREX-2の要:観測精度

火星の気候は、サハラ砂漠よりも過酷です。空気中の水蒸気が少ないため、気温がとても変わりやすい状態にあります。局所的な砂嵐が発生し、大気が塵におおわれることもしばしばあります。また火星には四季があり、年間を通じての温度や気圧の変化も激しいことがわかっています。

私たちが火星の気候について知るには、観測を何度も行う必要があります。たとえ同じ季節に同じ場所で測定しても、そのときの太陽活動の様子や塵の発生具合によって、大きく異なる値が観測されるからです。

そして、観測の精度が非常に重要です。探査機の打ち上げ前に、コンピュータによるシミュレーションで、機器精度や大気循環モデルをもとに、どの程度の誤差を持って観測できるのかを検証しています。その結果、十分な精度が確保できることを確認しています。

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