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現在位置: トップページ > トピック記事 > 高齢者・障害者の現状と課題 > 高齢者にICTの有用性を伝えるのは誰? 〜高齢者と情報通信における現状と課題〜

高齢者にICTの有用性を伝えるのは誰?
〜高齢者と情報通信における現状と課題〜(7/11)

7. ICTは高齢者のためにある!

離れて暮らす親の安否を気遣う親孝行な子供達がパソコンや携帯電話をプレゼントすることも珍しくない。しかし、もらっても使えないので使い方を教えて欲しい、とシニアネットの教室にやってくる。
「娘(孫)からのメールだけは読めるようになりたい。」と80の手習いにはりきる高齢者達は皆うれしそうである。

確かに電話の振り込め詐欺のように、高齢者がネットを使った新しい犯罪の被害にあうリスクはある。しかしそれでも、高齢者がネットを使えるメリットは数多く、寝たきり老人であっても、むしろ寝たきり老人こそネットを使えることによる恩恵は大きい。

高齢者のICT利用のメリットは次のように考えられる。

(1) 病気や介護などで移動や外出が困難な場合でも、自宅から情報が入手できる。

−2007年度からは介護サービス事業者の情報開示が義務付けられる。ネットを見ることができればサービスの選択や介護保険への理解を深めることができる。さまざまなウェブサイトからの専門知識、情報収集や同じ悩みを抱える人たちのコミュニティに参加することで、支えあえる仲間達と出会うことができる。

老親を在宅介護して14年になる東京世田谷区の大島眞理子さん(57歳)は携帯電話のウェブサイト「お悩み解決館」に参加し、見知らぬ人たちから励まされ、時には若い人たちの悩み相談に応じている。
「自分も誰かの役に立ててうれしいし、身近な人には相談しにくいことも匿名で書けるので、とても助かります」

米国のシニアネット会員の退役軍人(68歳)は、ベッドに寝たきりの生活がネットによって大きく変わったという。
「それまでは、テレビを見るか、食事くらいしかすることがなかった。ネットのおかげで世界中の人とコミュニケーションできるし、何でも勉強できる。時には若い人の勉強を手伝ってあげることもできる。自分は役立たずの老人だ、早く死んだほうがいいと思っていたけれど、今では、リハビリにがんばって、シニアネットの友人たちにひとめ会いに行きたいと思えるよ。」

(2) 離れて暮らしていても心の通う家族や友人たちと楽しいコミュニケーションができる。

−ブロードバンドの普及で海外勤務の子供や孫とビデオチャットを安い料金で楽しめる。

学校教師を定年後、JICAのシニアボランティアとしてスリランカやコロンビアで日本語教師をしておられた札幌市の長南誠一さん(77歳)は、IP電話のスカイプでかつてのボランティア活動で知り合った世界各地のお友達とのおしゃべりを楽しんでいる。「音質はいいし、ほとんどお金はかからないし、うれしいですねえ。」

(3) 新しい趣味や生きがいを発見できる。

―それまで音楽や美術に縁がなかった高齢者がパソコンを使って作曲したり、絵を描いたり、映像作品をつくるといった新たな生きがいを持てる。またそれを人に教えることでさらなる楽しさを発見できる。

下記の作品は高倉幸江さん(65歳)がワープロソフトのワードの描画機能(オートシェイプ)だけで描いた絵。高齢者むけのパソコン教室のボランティア講師である高倉さんが考案したパソコン講習は、指導する側にもなじみのあるソフトで初めてパソコンにさわる高齢者も楽しく、成果となる作品をつくれて大人気である。ホームページで作品や描き方を紹介したところNHKから取材が申し込まれ、放送後には大きな反響があったという。高倉さんには多くの人からメールが届き、同じように絵を描く仲間たちができ、新作や作画方法を紹介しあって楽しんでいる。

木目込み雛の絵
出典 Yume Pallet

仙台市の井桁章さん(78歳)は小学校の子供達にパソコン指導をした後、散歩をしていると登校中の児童から「あ、パソコンの名人先生だ。名人先生、おはようございます。」と声をかけられ、とてもうれしかったという。

(4) 加齢による障害をICTが補ってくれる。

高齢者には個人差はあるが、視聴覚障害や病気の後遺症で身体障害や失語症などさまざまな障害を持つ人が多い。老テク研究会の調査では、シニアネットのボランティアをしている元気な高齢者の中にも「電話の相手の声が聞き取りにくいことがある。」「テレビの字幕が良く見えない、出演者のセリフが聞き取れないことがある。」という人は60代から80代の100名の中で半数近い。

デジタル放送では人気番組の解説放送もあり、字幕放送も充実しつつある。パソコンでメールやチャットのできる人は難聴になっても双方向のコミュニケーションができる。

高齢者に特に切実なのは糖尿病の合併症による網膜症や緑内障による中途失明である。パソコンや携帯電話の音声読み上げ機能を使ったコミュニケーションができる障害者がさまざまな社会参加を実現しているように、高齢者が使いこなせればそのメリットは計り知れない。

障害を抱える当事者も、周囲の家族や友人たちにとっても代替コミュニケーション手段があるということは日常生活の大きな助けになる。障害のある人は「障害を持つこともつらいけれど、障害を持ったことで、友人との交流が失われてしまうことはもっとつらい。」という。

耳が聞こえなくても、文字で見えるように、文字が読めなくても、耳で聞こえるように、声が出なくなっても、思いを伝えることを補ってくれる技術がパソコンや携帯電話にはある。

長寿社会となり、老後の暮らしは長期傾向にある。使いこなせればICTは高齢者にこそ最も恩恵を与えてくれる、いわば分身のような道具なのだ。

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