研究内容

脳が身体を自由自在に動かすメカニズムの研究は、「心」の研究とは異なる、「スポーツをやる人」や「筋肉の興味がある人」の研究だと思っている方も多いかもしれません。しかし、目の前のコップに手を伸ばすのも、携帯電話やタブレットを触るのも、音のする方向に目を向けるのもすべて「運動」です。
つまり私たちの日常は、すべて体を動かすことで成り立っており、運動を通して世界とつながっているわけです。
 羽倉グループでは、ヒトの心が作り出される脳のメカニズムを身体や運動の研究を通して明らかにしたいと思っています。「身体」を軸に、ヒトの意思決定や認知に迫りたいと考えています。

以下が、現在、私たちのグループが興味を持って研究を推進しているテーマです。

1. 運動学習と運動記憶の読み出しの研究

「学習」や「記憶」というと、勉強で内容を記憶し、試験でそれを思い出す場面を考えるかもしれません。実はそのプロセスは、運動についても全く同じです。「新しいテクニックを練習する」、というのは「運動の記憶」を作ることです。「本番で実力を発揮する」というのは、適切な場面で正しく運動記憶を読み出すことです。
 私たちのグループでは、運動の学習や本番でうまく実力が発揮できない原因の解明に焦点を当て、運動学習と運動記憶を読み出す脳のメカニズムを明らかにする研究をしています。
この研究はスポーツ画面のみならず、効率的なリハビリプログラムの開発などについて、基礎的知見を提供します。

2. 認知・意思決定と身体運動

例えば私たちの脳を身体から切り離して試験管に入れたとき、果たして、環境の認知や意思決定の仕方は身体がある時と同じままでいられるのでしょうか?身体とまったく関係ないと思われてきた多くの知覚・認知機能が、実は脳が身体を効率的に操作するためのプロセスに影響を受けています。
  「身体」という私たちの運動をする上での制約が、どのように私たちの意思決定や認知機能(視覚、時間知覚、触覚など)に影響を及ぼしているのかについて研究を進めています。この研究は、「動」物である人にとって効率的な環境のデザイン設計のための基礎的知見を提供します。

3. 身体の知覚の研究

「体のどこを触られた?」は、皮膚からの感覚入力の処理によって分かります。「手の位置はどこ?」は関節角度等の入力情報から分かります。では、身体の大きさや形の情報はどうでしょう?脳になんの入力がなくても自分の体の大きさや形が分かるのはなぜでしょう?
「身体の記憶」がどのように作られるのか、についての研究をすすめています。この研究は、サイバー空間やロボットを操作するときなど、状況に合わせて自由自在に身体を拡張する手法を開発するための、基礎的知見を提供します。
  様々な触覚の種類(ザワザワ感、温度、痛み)が引き起こす「感覚内容」にも興味を持っています。

研究機器

運動学習の研究に用いるマニピュランダム(Designed by Hirashima@CiNet)

Copyright © Nobuhiro Hagura
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