外国籍研究者の活躍

[座談会]

外国籍研究者の活躍

NICTには、多様な人材が活躍できる環境が整っています。そこには、言葉や人種、国籍、文化の壁はありません。実際、外国籍研究者も多数在籍し、それぞれが自分の研究テーマに打ち込み、グローバルに活動を展開しています。そこで、NICTに入構した3名の外国籍研究者たちに、NICT を選んだ理由やその魅力、異文化の中での研究活動についてオープンに語っていただきました。

テニュアトラック研究員 モック ロブ

テニュアトラック
研究員

モック ロブ

  • 未来ICT研究所
  • 脳情報工学研究室
  • 2025年入構
研究職 クーパー エリカ リンジー

研究職

クーパー エリカ リンジー

  • ユニバーサルコミュニケーション研究所
  • 先進的音声技術研究室
  • 2024年入構
研究職 コレフ ディミタル

研究職

コレフ ディミタル

  • ネットワーク研究所
  • 宇宙通信システム研究室
  • 2014年入構

※部署・役職はインタビュー当時の
ものとなります。

※部署・役職はインタビュー当時のものとなります。

NICTを選んだ理由を聞かせてください。

〈モック〉
前職はロンドン大学ロイヤルホロウェイ校の助教授でした。学生に授業を行いながら研究を続けていたため、もっと研究活動に専念したいと考えていたところ、同僚に教えてもらったのがNICTです。その同僚は、日本学術振興会(JSPS)特別研究員で来日したことがあり、NICTの存在を知っていたのです。NICTには教育業務がない上、日本政府からの予算補助のおかげで研究資金も十分にあると聞き、自分にとってはベストな研究環境ではないかと思い応募しました。
〈クーパー〉
私が研究しているのは音声合成の分野ですが、学生時代に日本の研究グループによる論文を数多く読み、日本が音声研究に適した環境だと感じていました。米国の大学で博士課程修了間際に国立情報学研究所(NII)のポスドク募集があり入所。任期が終了する頃、次のキャリアを模索する中で最終的にNICTを選びました。NICTには研究に注力できる環境が整っており、国立研究機関として社会に役立つ研究を行っているからです。加えて、パートナーは日本にルーツのあるドイツ人で、日本で暮らしていたため、私も日本で働くことに決めました。
〈コレフ〉
私の専攻分野は空間光通信リンクで、ブルガリアの大学院で修士課程を修了してから日本へ国費留学しました。当時、この分野で人気の研究室が早稲田大学にあったのです。卒業直前に、研究室の先輩でNICTに勤務していた方から、宇宙光通信分野の研究者を募集していることを教えてもらいました。私が研究していた内容とは少し異なるため新たな挑戦でしたが、専攻分野を追求していく上で多くのことを学べる絶好のチャンス。何より研究者として働き続けられることに魅力を感じ、NICTに入構しました。
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現在の仕事内容を教えてください。

〈モック〉
私が研究しているのは、人間の脳がどのようにして物事を認識し、理解していくのか。概念形成における神経メカニズムの解明です。知性の象徴である人間の脳が概念を学習する仕組みを理解することで、その原理を用いて、より効率的で優れた人工知能モデルを設計するのがねらいです。この分野は比較的新しい分野であり、日々変化しているため、新たな人工知能モデルや手法について常に学びながら、自分の研究にどう応用させていくか。試行錯誤も多いですね。
〈クーパー〉
私は合成音声の自動評価手法の開発に取り組んでいます。合成音声とは人工的に人間の声を生成する技術で、スマートスピーカーやカーナビなど様々な場面で活用されています。これまで合成音声の品質を評価するのは人間でしたが、評価する人によってばらつきがあり、時間もコストもかかるという課題がありました。そこで一貫性があり、かつ自動で行う評価手法の開発が求められ、共同研究者と共に取り組んできました。今後はより多様な合成手法に適用できる自動評価手法を確立したいと考えています。
〈コレフ〉
現在、主に担当しているのは宇宙光通信です。宇宙光通信とは、レーザー光を利用して衛星間や衛星と地上を通信する技術で、従来の電波を利用した通信よりも高速・大容量のデータを通信できるメリットがあります。ただ、大気の影響を受けるなど安定化には課題もあります。学生時代は水平方向の屋内光無線リンクを中心に研究していましたが、入構後は衛星リンクの研究に従事。国内外の大学や企業と連携しながら、地上から宇宙空間までシームレスにつなぐ光ネットワーク構築の研究開発を進めています。
外国籍研究者の活躍

研究の場として、NICTの魅力とは?

〈モック〉
教育や事務業務に時間を取られることなく、研究に専念できる環境が整っていることですね。これは研究者にとって非常に重要な点です。研究に集中できるからこそ、優れた成果を生み出すことができ、研究分野や社会に貢献することができますから。私の研究拠点であるCiNetや大阪大学には、才能あふれる研究者や学生が多数在籍し、彼らと交流することで新たな知識やアイデアを得ています。予算も十分にあり、実験もたくさんできる。研究を進めるにあたって恵まれた環境であると実感しています。
〈クーパー〉
同感です。それに、NICTの中長期目標に沿っていれば、研究テーマの自由度が高く、研究計画や日々の業務スケジュールを自ら設定できる点もうれしいところ。日々の業務は、実験の実施と結果分析、論文執筆、論文査読、データセット探索、次回実験の準備など多岐にわたります。時には、外部研究者とのオンライン会議や学術団体の活動に参加することも。ですから、裁量労働制や在宅勤務制度が導入されているのはありがたいですね。出勤日には音声合成グループの同僚たちと一緒に昼食をとるのですが、研究プロジェクトの進捗状況から趣味の話まで語り合えるのが楽しみになっています。
〈コレフ〉
私も柔軟な働き方ができる点が気に入っています。子どもが急に病気になった時は午後早めに帰って、翌日はその分働いたり、リモートワークにしたり。ワークライフバランスを保ちやすい環境だと思います。もちろん、研究環境が充実しているのも大きな魅力。以前、衛星レーザー通信の標準化業務を担当し、NASAとの共著書籍の編集に携わるという機会に恵まれました。研究者として達成感とやりがいを覚え、今でも忘れられません。また、国立研究機関の一員として様々な会議や展示会に参加できることもうれしく思っています。おかげで世界中に人脈を築くことができました。
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言語や文化の違いをどのように乗り越えてきましたか。

〈クーパー〉
2019年に来日した時は日本語が全く分からず、最初は語学学校に通いました。でも、コロナ禍で学校は閉鎖。以来、週に1時間、オンラインの日本語クラスを受講するほか、自主学習の時間も確保しています。日本語には漢字やひらがな、カタカナがあるので厄介なのですが、学習に費やした時間は必ず報われると実感しています。日本語が理解できるようになると、あらゆることが容易になりますから。
〈モック〉
私も大阪大学で週に一度、日本語のレッスンに参加して、日本語力の向上に努めています。あとは、日本のテレビ番組を観るようにしたり、アシスタントスタッフとおしゃべりしたり。日本語と英語を織り交ぜながら会話することで、日本語や日本の文化について学んでいます。
〈コレフ〉
私の場合、早稲田大学の博士課程で日本語を学び、NICTに入構する前から日本で4年間暮らしていたので、日常生活には不自由しませんでしたが、研究分野の新しい専門用語を習得するのにはやはり時間がかかりましたね。
〈クーパー〉
言葉は学習すれば次第に理解できるようになりますが、難しいのはコミュニケーションのとり方。文化的な違いといえばいいのでしょうか。日本人の言動には「言葉にしないけれど、その裏に意味がある」とか「察する」といったところがあり、慣れるのに苦労しました。米国では何事も相手に直接はっきりと言いますから(笑)。
〈モック〉
分かります、私も同じような経験があります。アシスタントスタッフに用事をお願いすると、急ぎのものでなくても、いつもすぐにやってくれるんです。でも、実は私の用事のせいで、彼ら自身の仕事が滞り、ものすごく忙しくなっている。それに気づいた時、なぜ「今は忙しいからできない」と断ってくれないんだろうと思いましたね。
〈クーパー〉
日本人ははっきりと「NO」とは言わず、代わりに「難しいかも」と言う。それは「NO」の意味ですから。日本語はムズカシイですね(苦笑)。
〈コレフ〉
言葉や文化の壁をなくすために、NICTでは外国籍研究者のためのサポートに力を入れています。私も入構当時は研究室のアシスタントスタッフには大変お世話になりました。アパート探しや賃貸契約など、自分一人では無理。アシスタントスタッフがいろいろサポートしてくれたから、住まいの問題を解決できました。
〈モック〉
確かに。私も渡航前からEメールでアシスタントスタッフとやり取りしながら、日本での暮らしの準備を進めました。銀行口座の開設も彼らのサポートがなければ、スムーズにできなかったでしょう。
〈クーパー〉
NICTには人的サポートはもちろん、日本での研究活動を行う上で必要な情報をまとめた英語のポータルサイトもあります。支援体制がきちんと確立されているからこそ、私たち外国籍研究者は研究活動に専念できるのだと思います。
外国籍研究者の活躍

今後の目標を聞かせてください。

〈モック〉
NICTには、民族、国籍、性別などの違いによらず、多様な学術的背景を持つ研究者やポスドク、学生がそろっています。そうした人たちと研究グループを構築し、より優れた人工知能モデルの設計を目指したいと考えています。ここでなら、世界トップレベルの研究ができると確信しています。プライベートでは、もっと日本語ができるようになって、日本の文化や暮らしを味わいたいと思っています。
〈クーパー〉
私もそう。NII時代は関東で暮らしていましたが、今は京都在住なので、京都弁も勉強しなくては(笑)。語尾やイントネーションが全然違いますよね。でも、日本の歴史や文化を理解するには絶好の場所なので、存分に楽しみたいです。仕事に関しては、進行中の研究プロジェクトに継続して取り組むと共に、新たなテーマへの展開も始めたいと考えています。永住権を取得し、日本での生活基盤が安定したので、これまでよりももっと研究に打ち込めそうです。
〈コレフ〉
私が研究している衛星通信の課題の一つはコストです。その理由として、光通信地上局の維持管理の問題が挙げられます。そのため、非地上ネットワーク開発の動向を踏まえながら、低コストでシンプルな通信システムの開発に取り組みたいと考えています。現行技術の改良にとどまらず、画期的な新ソリューションの考案を目指したいですね。プライベートでは、日本で暮らして15年。子どもも生まれ、二人とも小学生になりました。今後は子どもたちの将来も考えていきたいと思っています。
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NICTを目指す外国籍研究者の方へメッセージをお願いします。

〈クーパー〉
日本という国も、NICTという組織も安全で、政治的な問題など煩わしいことがなく、研究者にとっては働きやすく、働きがいのある場所だと思います。研究資金を獲得するスキームが整い、支援してくれるスタッフもそろっているので、研究を効率的に進めることができます。研究者としてのキャリアを構築していくには最高の環境なので、ぜひ活用してもらいたいですね。
〈モック〉
研究テーマがNICTの中長期目標に沿うものならば、ぜひチャレンジしてもらいたいと思います。研究の自由度においても、研究資金面においても、NICTを超える研究機関は世界でもそう多くはありません。個人的な意見になりますが、研究者は自由であればあるほど、すばらしい研究成果を上げられると思っています(笑)。この恵まれた環境のもと共に研究活動に取り組みましょう。
〈コレフ〉
そうですね。NICTは研究者に優れた研究環境を提供しています。その中で研究テーマを追求していけば、世界的な影響力と認知度を高めることができます。言葉や文化の違いに不安を覚えている人も少なくないと思いますが、ここには組織としてセーフティーネットがあり、私たち外国籍研究者の仲間もいます。お互いサポートし合うことで、より充実した日々を過ごせるはずです。みなさんのチャレンジを待っています。
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