ICTで、未来をどうする?
無線通信システムで
製造現場の生産性を向上させ、
日本のものづくりを支える

現在の製造現場では、材料などを運搬する自動搬送システムが無線通信で制御されており、生産ラインの自動化が進んでいる。その一方で障害物による通信の不安定など課題も多い。そこで無線通信システムを安定化するためのプラットフォームを研究開発し、製造現場の生産性を向上させることでものづくり大国・日本の製造現場を支えたい。

研究技術職
大堀 文子
[プロフィール]
2010年会津大学大学院コンピュータ理工学研究科博士前期課程修了、民間企業に就職。2017年有期研究員としてNICTに出向。2020年大阪大学大学院博士後期課程入学と同時にNICTに入構。2024年博士後期課程修了。現在はパーマネント研究技術職として活躍。また、ネットワーク研究所ワイヤレスネットワーク研究センターワイヤレスシステム研究室も兼務。
※部署・役職はインタビュー当時のものとなります。

現在の製造現場では、材料などを運搬する自動搬送システムが無線通信で制御されており、生産ラインの自動化が進んでいる。その一方で障害物による通信の不安定など課題も多い。そこで無線通信システムを安定化するためのプラットフォームを研究開発し、製造現場の生産性を向上させることでものづくり大国・日本の製造現場を支えたい。

2010年に民間企業に就職し、研究機関の発注を受けて有線無線ネットワークのシミュレーションやアプリケーション開発など研究の支援を行っていました。その研究機関の一つにNICTがあり、製造現場向けの無線の研究開発の手伝いをしてくれないかというお話をいただきました。そこで、2017年に出向し、有期研究員として製造工場の無線通信技術の研究に従事していました。NICTで働き始めると他分野の研究者や海外の研究者とコミュニケーションを取る機会が多くなり、自分が取り組んでいる研究が無線通信技術全体においてどんな位置付けなのかを把握して議論をすることも多くなり、無線通信を体系的に学ぶ必要があると痛感。そこで働きながら博士後期課程に入学し、広く無線通信分野を学び直すと同時にNICTに転職しました。大学院での学位取得とNICTでの研究を同時に行うため忙しい毎日でしたが、職場の上司や同僚をはじめ、周りの方々の温かいサポートがあって無事に学位も取得できました。

私が研究しているのは製造現場の生産の向上に寄与できる無線通信技術の開発です。現在の製造現場ではすでに多くの無線通信システムが利用されています。レストランなどでオーダーした料理を客席に運ぶ配膳ロボットのように、工場では生産ラインに必要な材料などを運ぶロボットが導入され、その動きは無線通信で制御することで的確に所定の位置に希望のタイミングで移動させることができます。つまり、無線通信技術を活用することで、製造現場の省人化や効率化を図ることができ、その結果生産性の向上に寄与します。しかし、製造現場には金属の物体や壁などがあり、無線が切れる、データが送れないといった要因で生産ラインが停止してしまうなどのトラブルが起こっています。そこで私たちは多くの無線システムを管理するためのSRF(Smart Resource Flow)無線プラットフォームを開発し、多数の無線システムを協調制御し無線リソースを譲り合いさせることにより安定した無線通信を目指しています。また、無線システムのパラメータの自動調整、無線状態の測定・可視化機能を備えることで、無線の専門家がいなくても運用・管理ができ運用コストの削減にもつながります。現在は、製造現場でSRF無線プラットフォームの実証実験を行っており、工場への実装を目指しています。
無線通信技術を活用し、
製造現場の生産性向上に寄与する。
製造現場、医療、物流、インフラなどの幅広い分野で、無線通信技術を使って自動で物を運ぶ、あるいは動画像などのデータを送るといったことが行われています。NICTでは、こうした無線が活用され始めている産業分野を主軸として無線通信技術の研究開発に取り組んでいます。NICTはもちろん、国内外の研究者や日本を代表するメーカーの技術者の方々とコミュニケーションを図りながらプロジェクトを推進しています。無線通信は製造現場の生産性向上に不可欠な技術であり、さらに技術を進化させることで、ものづくり大国・日本の製造現場を支えていきたいと考えています。
Flexible Society Projectの皆さんと


私が取り組んでいるのは製造現場の無線通信技術の研究開発です。ただし、研究を補完するアプローチが必要で、研究の進行や成果を最大化するために、マネジメント的な考え方が求められる場面が多々あります。というのもこのプロジェクトには様々な立場のメンバーが参画して研究が行われているからです。国内外の共同研究者、製造現場で無線通信を導入する広い業種のメーカー、無線通信機器やセンサーなどを開発するメーカーなど、総勢70名程にも及ぶ技術者や研究者たちがNICTの協力研究員としてプロジェクトに関わっており、一緒に研究開発を行っているのです。所属や職種、年齢、国籍を問わず、様々な人とコミュニケーションを図りながら研究開発を進めるため、自分で持ちえなかった視点や発想を知る機会になり、研究として非常に刺激的です。その中で、NICTは、中立的な立場で製造現場の課題やその解決策の議論を進行したり、実際の現場で何が問題かを調査するための実証実験の現地調整や実施までを行ったり、と活動の推進役を担っています。日本を代表する製造業の技術者の方々と、日本の製造業を無線通信で支える研究に取り組めることに大きなやりがいを感じています。


※写真はイメージです
[もうひとつの顔]
電波と同じ「波」である音に
興味を持ち、
音楽や楽器を楽しむ。
周波数は電波や音など様々な現象に関連していています。仕事の無線通信もある範囲の周波数帯を使って信号を送る技術ですが、同じ周波数の現象の「音」にも興味を持ち、電子音楽を楽しんだり、キーボードやウクレレなどの楽器を弾いています。
