NICT 研究職 林 正道
NICTの人 ICTで、未来をどうする?

研究職

林 正道

  • 未来ICT研究所 脳情報通信融合研究センター(CiNet)
  • 脳情報通信融合研究室 主任研究員
  • 2019年入構

[プロフィール]

2006年から総合研究大学院大学生命科学研究科5年一貫制博士課程に進学し、2011年博士課程修了。その後、大阪大学大学院生命機能研究科、米国カリフォルニア大学バークレイ校などで研究員として活動。2019年にNICTの有期研究員として採用(CiNet)、2021年テニュアトラック研究員、2025年に主任研究員(パーマネント研究職)として採用。

※部署・役職はインタビュー当時のものとなります。

ICTで、未来をどうする?

主観性の脳内メカニズムを解明し、
ヒトの能力を拡張する

NICT 研究職 林 正道

主観的な知覚や認知に関わる脳内メカニズムを明らかにする研究の成果を、将来的にはウェアラブルデバイスによる外界情報の収集や生体情報の計測、感覚刺激や脳刺激の手法と組み合わせたい。それによりヒトの知覚や認知能力を向上させたり、自らの意思で制御したりできる技術を開発したい。さらには、ヒトがこれまで持ち合わせていなかった新たな感覚を獲得する技術を開発し、人間の能力を拡張したい。

NICT 研究職 林 正道

「共感覚」に興味を持ったことがきっかけで
脳の主観的な知覚の仕組みの解明を研究テーマに。

大学は工学部に在籍し、人工知能に興味を持ってヒトの脳を学び始めたのが、今の研究に至るきっかけになりました。脳に関する書籍を読む中で出合ったのが「共感覚」に関する本でした。共感覚とは、ある一つの刺激に対して通常の感覚だけでなく、異なる種類の感覚も自動的に受ける知覚です。例えば、特定の文字に色がついているように見えたり、音が聞こえた時に色が浮かんだりする人がいることを知り、ヒトの主観的な体験は脳のどんな仕組みから生まれているのかといった点に興味を持ち、大学院から主観的な知覚の研究をスタートさせました。その後、海外の研究機関を転々とし、大阪大学大学院生命機能研究科に研究員として在籍していた時、隣接していたのがCiNetでした。CiNetとは共同研究も行っており、こちらを訪問する機会も多かったのですが、MRIなど充実した設備を始めとして恵まれた研究環境に惹かれ、2019年に有期研究員として入構しました。研究内容は前職から一貫しており、主観的な知覚に関する脳内メカニズムの研究を行っています。

NICT 研究職 林 正道

主観的な知覚のメカニズムと
効率的な脳情報処理・表現のメカニズムを研究。

私の研究テーマは大きく分類すると、脳の「主観的な知覚のメカニズム」と「柔軟かつ効率的な脳情報処理・表現のメカニズム」の解明です。主観的な知覚のメカニズムを明らかにするにあたって、まず研究対象にしたのは、「時間感覚」を司るメカニズムです。私たちヒトは、楽しい時は時間が短く感じられ、苦しい時は長く感じるなど、時間の感じかたは状況によって大きく異なります。時間とひと口に言っても、ミリ秒から概日リズムまで幅広くありますが、私の研究では特に数百ミリ秒という短い時間を対象にして、その時間感覚が状況や慣れなどによってどう変わるのかを明らかにするための研究に取り組んできました。一方の脳の効率的な情報処理・表現のメカニズムに関する研究では、わずか1,400g程度のコンパクトな脳がいかにして膨大な情報を効率的に処理しているのかを明らかにするための研究を行っています。例えば、「数」の認識に関する研究では、ゼロから無限大までさまざまな大きさがある数の情報を、限られた脳の神経細胞でどのように効率的に表現しているのかといった研究も行っています。脳は外部からの刺激や経験に基づいて、神経細胞の機能を柔軟に変化させることが知られており、数の認識でもその仕組みが使われているという仮説を立てて、その変化をMRIにより可視化することに取り組んでいます。

プロジェクトと私

「時間」や「数」の情報処理に関わる
脳の神経メカニズムを解明。

心理物理実験や脳機能計測を通して、脳の主観的な知覚や認知に関わる神経基盤を明らかにする研究を展開しています。特に「時間」や「数」の情報処理に関わる神経メカニズムに注目し、それらの情報の脳内表現や知覚との関係について研究を進めてきました。さらに磁気刺激や電流刺激を脳に与えて知覚体験がどのように変化するのかを調べることで、脳と知覚の因果関係の解明にも取り組んでいます。今後は研究をさらに深化させるとともに、脳の情報を効率的に表現・処理するメカニズムや、脳における情報表現の様式がヒトの思考や言語にどのような制約を与えているのかについても研究を進めていきたいと考えています。

プロジェクトと私
NICT 研究職 林 正道

様々なバックボーンを持つ
協力研究員とともにチームで研究に挑む。

これらの研究は、興味関心を共有する人たちとチームを組んで取り組んでいます。私の研究チームには協力研究員の大学院生なども含め、9名のメンバーがいます。こうしたチーム制を導入しているのは、一人で研究を行うよりも様々なアプローチが可能になり、複数のプロジェクトを同時に推進することができるからです。個々のプロジェクトの成果が出るまでは時間を要するので、研究テーマである主観的知覚のメカニズムと効率的な脳情報処理メカニズムの解明に役立つプロジェクトならばそれらを並行して行った方が効率的です。しかもチームメンバーのバックボーンはバラエティーに富み、言語学、心理学、細胞生物学、物理学など専門領域は多岐にわたっています。そうしたメンバーが議論することで、自分一人では得られない気づきや研究へのアプローチが可能になります。共通するのは、メンバー全員がヒトの脳の知覚体験を生み出すメカニズムに興味を持っていること。そんな若い人たちとの交流が私にとっても大いに刺激になっています。

NICT 研究職 林 正道
NICT 研究職 林 正道

※写真はイメージです

[もうひとつの顔]

「夢中になれること」に
出合ってほしくて、
息子とおでかけ。

休日は2歳になった息子を連れて出かけることが多いですね。私は子どもの頃に宇宙少年団やサイエンスキャンプへの参加を通して、科学や研究に触れたことがきっかけで宇宙に興味を持ち、その後、研究者の道を歩むことになりました。息子はまだ小さくて科学に興味を持つには早いですが、博物館や水族館など興味を持ちそうな施設などに連れて行っています。たくさんの経験から「自分が夢中になれる何か」に出合ってほしいと思っています。

トップへ戻る▲