NICT テニュアトラック研究員 箕嶋 渉
NICTの人 ICTで、未来をどうする?

テニュアトラック研究員

箕嶋 渉

  • 未来ICT研究所 神戸フロンティア研究センター
  • バイオICT研究室 研究員
  • 2022年度入構

[プロフィール]

2012年、関西学院大学理工学部情報科学科卒、2017年、関西学院大学大学院理工学研究科人間システム工学専攻で博士の学位を取得後、関西学院大学の博士研究員、産業技術総合研究所の特別研究員、大阪市立大学の特任助教を経て、2022年、NICT入構。有期研究員を経て、現職に至る。

※部署・役職はインタビュー当時のものとなります。

ICTで、未来をどうする?

脳をはじめとした生体機能の衰えを
ICTデバイスで補完できる未来を目指す

NICT テニュアトラック研究員 箕嶋 渉

人間は歳を取るにつれ、加齢や病気によって脳機能をはじめとした身体機能が衰える。その時のために、例えば自身の若い頃の脳の機能や保持している情報を保存し、利活用することを目的とした人工物と生体由来のバイオマテリアルから成るICTデバイスを作りたい。将来的には、昨今注目を集めている生成AIが我々の試行を補助するように、バイオマテリアル由来のAIが生体機能を補助することで加齢による衰えを補完できるような未来を目指す。

NICT テニュアトラック研究員 箕嶋 渉

研究分野の多様性に重きを置いた環境で、
研究所のミッションに沿っていれば自由度の高い研究が
できるのが魅力。

中高生の頃からプログラミングに親しんでいたので、大学では情報科学科に進みました。しかし、入学後に「人間システム工学科」という学科が新設され、神経細胞の活動データを使ってロボットを動かす生物学、機械工学、および情報科学を融合した神経工学という学問領域を扱う研究室ができました。研究室の先生に誘われて見学した生物実験にカルチャーショックを受け、すぐにその研究室で研究することを選択しました。学位取得後、研究員や大学教員として、神経細胞の機能をレーザー光で計測・制御する研究を行い、NICTに入構しました。研究成果を社会に還元する研究のやり方に興味があったことや、研究を含めた幅広い業務に携わることができるNICTを志望したのです。NICTは多様なバックグラウンドを持つ研究者で構成されており、新しい研究アイデアが生まれやすい環境だと感じます。資金面においても、他の組織ではなかなかできない規模の大きい研究を手がけることができ、中長期のミッションに合致するものなら、研究者自らが提案して進めることができる自由度の高さに驚きました。

NICT テニュアトラック研究員 箕嶋 渉

神経細胞間の電気活動を計測、制御し、
解析して可視化する。

脳の神経細胞同士のつながりをモデル化したものがAIですが、モデル化に利用されているのはごく一部の機能のみで実際の細胞機能とは違います。私の研究では、培養した実際の神経細胞を使って、細胞同士の情報のやり取りを電気活動として計測し、レーザー光で制御し、情報科学の手法を使って計測されたデータを解析します。神経細胞同士のつながりを可視化することで、新たなAI技術につながる機能モデルを作ろうと考えているのです。研究で重要なのは、高密度電極アレイという26,000個以上の電極を備えた半導体チップを使い、チップ上で細胞を培養することで、電気信号をやり取りする単一細胞の神経活動を計測することです。神経細胞がほかの神経細胞からの電気信号を受け取って応答する程度に成長しないと実験ができないため、長期間の培養プロセスは必須です。どういう細胞活動を観察するか、その目的と要件に応じた日数・条件で細胞を育てるのに、2週間から1カ月ほどかかります。電気活動を制御するための、レーザー光を導入した顕微鏡システムも自ら構築します。解析では、細胞から細胞へ信号が伝達する経路や細胞同士が情報をやり取りしている様子をマップ化する解析ソフトを自分で開発します。神経細胞同士がシナプスという部分を使って電気信号をやり取りするのですが、私が開発した解析ソフトを使うと、その情報のやり取りを可視化できます。生物学的な現象である培養細胞の活動を工学技術で制御し、さらに情報科学の技術を使って解析し可視化するという複数分野を融合した研究に面白さを感じています。

プロジェクトと私

心身の健康=良質な研究。

研究を継続するためには、考えることだけではなく、体力も重要です。デスクワークだけではいいアイデアも研究の方向性も浮かばないので、行き詰まった時は散歩やダンベルを使った筋トレなど、軽い運動をしてリフレッシュするようにしています。研究は、マラソンのように長期戦。良い研究を続けるために栄養摂取、睡眠、運動を大切にしています。心身の健康=良質な研究につながるので、アスリート同様、常に体調管理を心がけています。

プロジェクトと私
NICT テニュアトラック研究員 箕嶋 渉

生物に倣った省エネルギーな
コンピューティングの開発に向けて。

AIが囲碁のプロに勝利して話題になったことがありますが、囲碁専門のAIは囲碁しかできません。しかし、人間の機能がすごいのは、囲碁をしながら他のことを考えることができるし、おにぎり1個でも生命活動を維持できます。人間が摂取するカロリーの約2〜3割を脳が消費すると言われていますが、電力に換算すると約20ワットで、スマートフォンの急速充電程度の電力です。すなわち、脳は省エネルギーであると言えます。一方、AIの稼働には大量の電力を消費します。私たちのミッションの一つは、生物の情報処理のモデル化を通じて、生物に倣った省エネルギー情報通信社会の実現を目指すことです。そのミッションのために、基礎的な生物実験装置がこれだけ揃っている研究所は、世界的に見てもそう多くありません。恵まれた環境で研究ができるのは、研究者として幸せなことだと感じています。

NICT テニュアトラック研究員 箕嶋 渉
NICT テニュアトラック研究員 箕嶋 渉

※写真はイメージです

[もうひとつの顔]

家族の笑顔のために、料理を作る。

趣味らしい趣味はありませんが、子どもの頃から親の手伝いなどで料理に親しんできました。料理は、手順と手際が大切なところが実験と似ていると感じます。現在は家族がおいしいと食べてくれるのがいちばん。家族から好評なのは、ハンバーグです。家族がお気に入りの料理は、もっと磨き上げておいしくしていきたい。栄養バランスを考えながら、その日のメニューを組み立て、自分がこだわるというよりも、家族の笑顔のために作ります。

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