ICTで、未来をどうする?
社会を豊かにするシードを
たくさん創り出す

新しく開発されたシステムや製品の挙動などを検証するテストベッドは、テスト専用の模倣環境を作ることだが、実世界とサイバー空間をつなぐデジタルツインにもつながるので、今後は従来のテストだけでなく新しいことにも挑戦していきたい。そして、社会を豊かで幸せにするシードをたくさん創り出す存在になりたい。

テニュアトラック研究員
山下 泰輝
[プロフィール]
2022年3月、東海大学大学院総合理工学研究科博士課程修了。2022年4月、電磁波研究所電磁波先進研究センターデジタル光学基盤研究室の有期研究員として入構。2025年4月、同テニュアトラック研究員に採用。
※部署・役職はインタビュー当時のものとなります。

新しく開発されたシステムや製品の挙動などを検証するテストベッドは、テスト専用の模倣環境を作ることだが、実世界とサイバー空間をつなぐデジタルツインにもつながるので、今後は従来のテストだけでなく新しいことにも挑戦していきたい。そして、社会を豊かで幸せにするシードをたくさん創り出す存在になりたい。

大学時代に所属していた研究室がNICTと連携をしており、協力研究員として電磁波総合応用研究室(現デジタル光学基盤研究室)にて、ホログラフィック光学素子(HOE)の空間光通信への適用プロジェクトの事前検討に関わったことが最初の接点です。その後、博士課程中にインターン先だったドイツ企業や日本企業からもオファーをいただきました。しかし、博士課程修了のタイミングでデジタル光学基盤研究室が有期研究員の公募を行っていたので、自分自身のキャリアをスタートさせるに当たって、NICTの役割の一つであるアカデミアと産業の間をつなぐ重要な仕事に携われるという点に魅力を感じて応募しました。現在は、テニュアトラック研究員として、大学の研究室からのテーマであるホログラフィック光学素子の空間光通信への適用について研究しています。2022年の入構時は有期研究員でしたが、2025年からは個人として取り組む研究計画を立案し、研究のための費用も支援してくれるテニュアトラック研究員に応募して採用されました。

私の研究テーマであるホログラフィック光学素子の研究は、元々研究室で取り組んでいたテーマなのですが、研究室では受信用技術が対象でした。しかし、現在、私が取り組んでいるのは送信用技術も含んだ研究となります。このホログラフィック光学素子は、光の回折現象を利用するホログラムの技術を応用して作ったもので、レンズなどの一般的な光学素子一つでは実現不可能な複雑な光学機能を、単一の光学素子に統合することもできます。そのため、空間光通信の装置を小型で使いやすいモノにするためのキーデバイスとなります。現在、空間光通信は、主に宇宙空間にある衛星間で活用されています。一方、大気中や海中では大気や水の影響を受けて揺らぎが生まれる現象が起こり、それを補正するための複雑な装置が必要です。大型の通信装置には補正装置を搭載できますが、小さなドローンやスマートフォンなどには搭載することができないため、現在のところ大気中や水中での空間光通信は普及していません。ところがホログラフィック光学素子なら補正装置を大幅に小型化できるため、空間光通信機器のコンパクト化に寄与することになり、空間光通信の特徴である大容量の無線通信を、様々な場面で活用できるようになります。
ホログラフィック光学素子を使った
空間光通信の実現を目指す。
ホログラフィック光学素子を活用し、空間光通信の装置を小型で使いやすいものにするための研究に取り組んでいます。これまで空間光通信は、大気の揺らぎの影響を受けてしまい、その補正装置を搭載しなければならないため大型の通信機器でしか行われませんでした。しかし、ホログラフィック光学素子を使えば大幅に補正装置が小型化できるため、将来的にはスマートフォンでの使用も不可能ではありません。そんな空間光通信のあり方を大きく変える技術研究に取り組んでいます。


ホログラフィック光学素子の研究は、NICT、大学、企業などが長年研究開発を積み重ねてきた実績ある技術です。一方で、空間光通信は大気の揺らぎの影響など、解決すべき課題も山積しており、様々なアプローチで研究が行われている最中です。そうした課題を解決するには、時には発想や技術的な方針をドラスティックに変える必要があります。大きな変化を伴う研究開発はリスクが伴うため、短いスパンでのビジネス化が求められる企業では手を出しにくいケースがあると思います。また、大学では学術を追求するため、最初から具体的なシステムの設計を前提とした研究がしづらいという側面もあります。空間光通信という具体的なシステムの要求に、これまで使われてこなかったホログラフィック光学素子を用いた斬新な光学系の技術で応えるという点では、ちょうど産業と学術の間にある研究開発の隙間を埋めるようなテーマです。だからこそNICTで実施することに意義があると感じていますし、成果を上げることで社会貢献を果たしたいと考えています。


※写真はイメージです
[もうひとつの顔]
友人とロードバイクに乗って
ツーリングを楽しむ。
休みの日は、アウトドアなら友人とロードバイクに乗って東京郊外の丘陵地やサーキット場に出かけています。インドアでは趣味のITインフラのことを考えたり、隣接分野の勉強をしたりして研究者としての知識を深めています。
