ICTで、未来をどうする?
量子の技術で、
未来にインパクトを与えていく

拡張現実(AR)や現実空間にあるものをデジタル空間上に再現するデジタルツイン、XR(クロスリアリティ)といった近未来的な将来像をイメージすると、そこでは、必然的にセンサやデバイスの数は増えているはずです。街中に無数にあるデバイスを処理する司令塔としては、量子コンピュータが適しており、裏側で膨大なトラフィックを処理しているというのが、現在想像しうる理想型と考えています。

テニュアトラック研究員
世永 公輝
[プロフィール]
2014年、東北大学大学院理学研究室物理学専攻、2017年、産総研・東北⼤数理先端材料モデリングオープンイノベーションラボラトリ(MathAM-OIL)のポスドクを経て、2019年より東北大学大学院情報科学研究科特任助教に就任。2020年からは企業で研究員を兼務。2021年10月、NICT入構、2022年4月より、テニュアトラック研究員として現在に至る。
※部署・役職はインタビュー当時のものとなります。

拡張現実(AR)や現実空間にあるものをデジタル空間上に再現するデジタルツイン、XR(クロスリアリティ)といった近未来的な将来像をイメージすると、そこでは、必然的にセンサやデバイスの数は増えているはずです。街中に無数にあるデバイスを処理する司令塔としては、量子コンピュータが適しており、裏側で膨大なトラフィックを処理しているというのが、現在想像しうる理想型と考えています。

東北大学の特任助教とベンチャー企業の研究員を兼務していた時、NICTと東北大のマッチング事業で共同研究を行う機会があり、NICTの研究者と一緒に取り組みました。当時、無線通信に量子アニーリングや量子コンピュータを使う研究の必要性を感じ、この領域を追求していけば、イニシアチブが取れるという感触を持っていました。しかし、研究に専念できる環境になく、ジレンマを感じていました。そこで、アカデミックのポストを探していた時に、その研究者からNICTが研究者を募集しているという情報を得ました。 NICTなら「結果が社会にどう役立つのか?」という視点を重視し、社会実装を意識しつつ、基礎から応用まで一貫した研究が行える。そのバランスの取れた環境に魅力を感じ、面談を経て入構しました。

現在は、量子コンピュータの応用研究・量子シミュレーションを用いた量子機械学習を専門領域としています。量子技術、特に量子コンピュータは、現在のコンピュータでは解けない、もしくは時間がかかる問題を解決する手段として期待されているハードウェアの一つです。ただし、何でもできるわけではなく、特定の課題に対しては有効でも、別の課題は苦手という側面があります。無線通信に応用する場合、様々な計算に対応できる汎用性の高いゲート方式の量子コンピュータよりも、無線通信の問題に特化したアニーリング方式の量子コンピュータの方が有効といわれています。通信の最適化やセキュリティの強化、低遅延化といった課題に対して革新的な進化をもたらすことが期待されているのです。まだ発展途上にあり、今後、私たちにどの程度の価値をもたらすのかは明らかではありませんが、量子技術だけに固執せず、従来のデジタルコンピューティング技術も併用しながら、開発技術の早期社会実装を目指しています。
世界初、量子コンピュータを利用した
屋外多数同時接続実験に成功。
2024年に行ったこの実験は、アニーリング方式の量子コンピュータ(量子アニーリングマシン)と従来型のデジタルコンピュータを併用する新たな演算方式(量子とデジタルのハイブリットによるアルゴリズム)を開発し、次世代移動通信システムにおける新たな無線通信信号処理として活用する屋外での実証に成功したものです。NICTに入ってから一つの目標として掲げてきた実験で、それを達成し、成果を出せたことは、社会に広めるための第一歩として手応えは大きかったと思います。シミュレーションや理論にとどまらず、実験による実証を行うことの重要性を改めて認識し、私にとって転機になった実験です。


今は、様々な論文を参照しつつ、解きたい問題のアイデアをまとめ、それを具体的に解くための手順や計算方法であるアルゴリズムを考えています。コンピュータが実行できるようプログラミングし、テストを行う日々です。うまくいかなければ、アルゴリズムやプログラムを見直し、トライ&エラーを繰り返す。無線通信は重要な社会インフラであり、現状のままでは、限界が来るのは目に見えています。6Gまでは保つかもしれませんが、7Gで求められるような新しいアプリケーション、例えば拡張現実(AR)や、現実世界と仮想世界の融合したXR(クロスリアリティ)を活用するとなれば、さらに高い処理能力が求められます。その一つの解として期待されているのが量子です。実装までには時間がかかるかもしれませんが、将来の布石として、その可能性を追求していきたいと考えています。現在は無線通信に軸足を置いていますが、一方で、量子機械学習という今までにない知能的システムを創ることも、次のテーマです。今後は機械学習の知識も必要で、表面的には知っていても、専門家と対峙した時にしっかり語れるかというとまだ自信がありません。そこに飛び込む以上、自分としては深い知識も知っておきたい。なので、今まで以上に時間をかけて論文をサーベイしつつ、「広く浅く」から「広く深く」を目指し、ゼネラリストでスペシャリストであるための努力を続けていきたいと思います。


※写真はイメージです
[もうひとつの顔]
読書で、デジタルデトックス。
実は以前、読書はそれほど好きではありませんでした。就寝前にパソコンを見ているのはよくないと思い、デジタルデトックスの一環として、寝る前に読書をするようにしています。妻が読書好きで、東野圭吾などの小説を読んでいたので、自分も読み始めたら、楽しいと思えるようになり、徐々に読む本を増やしているところです。
