In+イオン光周波数標準の研究開発

イオン光周波数標準器は、電場で捕捉されたイオンの光周波数領域の量子遷移を利用して、高精度な周波数の基準を実現します。 本グループでは、インジウムイオン(In+)を用いた光周波数標準器の実現を目指し、その狭線幅遷移(時計遷移)の周波数計測に取り組んでいます。

イオンの捕捉にはイオントラップと呼ばれる技術が用いられ、単一原子のゼロ電場の位置での捕捉が可能であり、イオンの運動や他のイオンとの 衝突等の影響を避けた、理想的な状態で周波数計測を行うことができます。また、同じ光周波数標準器である中性原子の光格子型周波数標準器と 比較しても一般に装置が小さく、小型・可搬型の装置開発が期待されています。

本グループが研究しているInは、アルカリ土類型の電子配置を持っていて、イオントラップ中の電場による周波数のシフトに鈍感なため、より 確度の高い計測が可能です。また紫外光遷移を利用した汎用的な手法で量子状態の検出が可能であり、アルミニウムイオン(Al)などの他の アルカリ土類型イオンよりもシステムが簡易となります。これらの性質からより短時間での周波数計測が可能な次世代の周波数標準である「複数イオン周波数標準」 の有力な候補ともなっています。



--参考文献--

K. Hayasaka, “Synthesis of two-species ion chains for a new optical frequency standard with an indium ion” Appl. Phys. B 107 965 (2012).


K. Wakui, K. Hayasaka, T. Ido, ‘Generation of vacuum ultraviolet radiation by intracavity high-harmonic generation toward state detection of single trapped ions’, Appl. Phys. B, 117 957-967 (2014).