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人工衛星レーザ測距(SLR)技術
人工衛星レーザ測距(SLR)技術
宇宙測地技術の一つである人工衛星レーザ測距(Satellite Laser Ranging:SLR)は、宇宙光通信と同じくレーザを用いる技術ですが、人工衛星の精密軌道決定等を応用範囲にもつ技術として独自に発展してきました。
NICTではSLRと衛星光通信を融合した研究基盤をつくるため、これまで行われてきたようなSLRシステムの測距対象を測地衛星だけでなく、通信衛星やスペースデブリに対応するとともに、衛星光通信で用いられる波長帯レーザを用いたSLRや、パルス位置変調(Pulse Position Modulation:PPM)システムとナノワイヤー超電導単一光子(Superconducting Nanowire Single-Photon Detector:SSPD)を組み合わせたシステムの検討、試作等を実施してきました。
今後はこれまで培ってきた光測距技術を応用し、宇宙光通信の開発も進めていきます。
技術解説
人工衛星レーザ測距 (Satellite Laser Ranging:SLR)は、宇宙測地技術の一つであり、地球上の点と人工衛星の間の距離を計測する精度の優れた技術です。
極めて短い時間だけ光るレーザ光を地上の望遠鏡から発射し、人工衛星に搭載された逆反射鏡(レトロリフレクタ)により逆方向に反射され、地上へ戻ってきた光を大口径望遠鏡で捉えます。この往復時間を計ることにより、往復の距離を計測することができます。SLRでは光信号が行き来する絶対時間を測るため、地上局と衛星との位置関係を精密に知ることができます。
現在では、数十ピコ秒の精度でこの往復時間を測ることができます。これは、長さにすると1cm以下に相当します。つまり、数千~数万kmの 距離をなんとmmオーダーの精度で測る「ものさし」なのです。
世界中のレーザ測距局で得られた測距データを解析することにより、地球が回転する様子、汎地球規模でのプレート運動の様子、地球重心に準拠した局の位置など、地球・宇宙に関する様々な知識を得ることができます。
波長域の拡張
これまでSLRには、波長532nmの青緑色の可視光レーザ光が広く使われてきました。これを衛星〜地上間の光通信で用いられている波長1μmや1.5μmの近赤外レーザを用いることで、衛星光通信とSLRを同じ光通信地上局で行うことが可能になります。
ナノワイヤー超電導単一光子(Superconducting Nanowire Single-Photon Detector:SSPD)
対象となっている物体から戻ってくるわずかな光子を検出することで、レーザー光を反射するリフレクタを持たないスペースデブリや、距離の遠い深宇宙探査機の測距の実現につなげることが可能になります。
成果
- Daniel Kucharski, et al.,(H.Kunimori): Quanta Photogrammetry of Experimental Geodetic Satellite for remote detection of micrometeoroid and orbital debris impacts, Advances in Space Research, 2020.
- Matthew Wilkinson, et al.,(H.Kunimori): The Next Generation of Satellite Laser Ranging Systems, Journal of Geodesy, https://doi.org/10.1007/s00190-018-1196-1, p.1-21, 2018.
- Hiroo Kunimori, et al.: Communications and Raging Experiment using Laser Terminal on Satellite, 21st International Workshop on Laser Ranging 2018.
- Hirotomo Noda, et al.,(H.Kunimori): Laser link experiment with the Hayabusa2 laser altimeter for in-flight alignment measurement, Earth, Planets and Space(EPS)Journal, Vol.69, No.2, p.1-14, 2017.
- 國森裕生, 他: ボディポインティングによる小型衛星光通信ミッションにおけるSLRの結果と軌道・姿勢の評価, 日本航空宇宙学会北部支部2021年講演会, p1-5, 2021.
- 千秋博紀, 他,(國森裕生): 「はやぶさ2」レーザ高度計に搭載された測距以外の動作モードについて, 計測と制御, 2020.
- 國森裕生,他: RISESAT衛星への超小型光送信器(VSOTA)搭載と光通信実験のための地上局インタフェース, 第62回宇宙科学技術連合講演会 2018.
- 國森裕生, 他: 静止衛星による深宇宙用光通信と測距のための要素実験, 第61回宇宙科学技術連合講演会 2017.
- 國森裕生,他: 光通信地上局における超伝導ナノワイヤー単一光子検出器(SSPD)の性能と衛星受信試験, 電子情報通信学会SAT研究会, SAT2016-39(2018-08), p.37-42, 2016.
活動報告
- 2023年度活動報告(第3回日本SLR技術連絡会 2024年1月19日開催 資料)
- 2022年度活動報告(第2回日本SLR技術連絡会 2022年12月21日開催 資料)
- 2021年度活動報告(第1回日本SLR技術連絡会 2022年1月21日開催 資料)
- 2019年度活動報告(第8回 ILRS 技術連絡会 2020年11月24日開催 資料)
- 2018年度活動報告(第7回 ILRS 技術連絡会 2019年3月7日開催 資料)
- 2017年度活動報告(第6回 ILRS 技術連絡会 2018年3月13日開催 資料)
- 2016年度活動報告(第5回 ILRS 技術連絡会 2017年3月14日開催 資料)
- 波長1umレンジングシステム(第2回 極地研究集会 2016年3月11日開催 資料)
- 2015年度活動報告(第4回 ILRS 科学技術セミナー 2016年3月10日開催 資料)
- 2014年度活動報告(第3回 ILRS 科学技術セミナー 2015年3月17日開催 資料)
- 2013年度活動報告(第2回 ILRS 科学技術セミナー 2014年3月18日開催 資料)
- 2012年度活動報告(第1回 ILRS 科学技術セミナー 2013年3月14日開催 資料)
- 2011年度活動報告(測地実験衛星(EGS)第26回運用調整会議 2012年3月16日開催 資料)
- 2010年度活動報告(測地実験衛星(EGS)第25回運用調整会議 2011年3月08日開催 資料)
- 2009年度活動報告(測地実験衛星(EGS)第24回運用調整会議 2010年3月09日開催 資料)
小金井局で2009年度に取得した SLR の衛星毎のリターンパス - 2008年度活動報告(測地実験衛星(EGS)第23回運用調整会議 2009年2月20日開催 資料)
- 2007年度活動報告(測地実験衛星(EGS)第22回運用調整会議 2008年3月18日開催 資料)
- 2006年度活動報告(測地実験衛星(EGS)第21回運用調整会議 2007年3月23日開催 資料)
- ILRS Workshop Canberra 2006 報告
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